表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国産アニメ創世記~絵を動かした開拓者たち~  作者: かつを
第5部:産業編 ~未来への布石~
103/126

ビデオがアニメを救った日 第3話:ダロスの衝撃

作者のかつをです。

第十七章の第3話をお届けします。

 

世界初のOVA『ダロス』。

今見てもその硬派な内容は色褪せません。

テレビ放送という縛りから解放された時、アニメがどれほどのポテンシャルを発揮するのか。それを証明した記念碑的な作品です。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

1983年12月。

東京のレコード店や家電量販店のビデオコーナーに、見慣れないパッケージの商品が並んだ。

タイトルは『ダロス』。

パッケージには「世界初のオリジナル・ビデオ・アニメーション」という文字が誇らしげに躍っていた。

 

監督を務めたのは、当時『うる星やつら』で斬新な演出を見せ、アニメファンの間で注目を集め始めていた若き鬼才、押井守。

そして彼の師匠でもあるベテラン、鳥海永行。

 

彼らが作り上げたその作品は、当時のテレビアニメの常識を遥かに超えていた。

 

物語の舞台は、資源採掘のために開拓された月面都市。

そこで繰り広げられるのは、過酷な労働環境に耐えかねた月面開拓民と、地球政府軍との血で血を洗うゲリラ戦だった。

 

正義の味方はいない。

改造された作業用機械が兵器として暴れまわり、治安警察の犬が容赦なく市民を弾圧する。

画面全体を覆う、乾いた埃っぽい空気感。

リアルな銃器の描写、重厚な人間ドラマ。

そして、解決されないまま終わるビターなラスト。

 

それは、日曜の朝に子供たちが観るような代物では断じてなかった。

実写映画のようなリアリズムと、ハードなSF設定。

 

「なんだこれは……」

 

ビデオデッキにテープを押し込み、再生ボタンを押したアニメファンたちは息を呑んだ。

テレビでは絶対に放送できない。

しかし、これこそが自分たちが観たかった「大人のためのアニメ」だ。

 

『ダロス』は商業的にも成功を収めた。

一本数千円から一万円もする高価なビデオテープが、飛ぶように売れたのだ。

 

この成功は、業界に激震を走らせた。

「テレビの放送枠がなくても、アニメは作れる」

「ファンは、本当に面白いものなら高くても買う」

 

その事実は、これまで「テレビ局」と「玩具メーカー」に首根っこを掴まれていたアニメ制作会社にとって、まさに福音だった。

 

制作会社は、自らの企画力で勝負ができるようになった。

クリエイターは、視聴率やスポンサーの意向を気にせず、自分の作りたいものを作れるようになった。

 

『ダロス』が開けた風穴から、堰を切ったように新しい企画が溢れ出した。

SF、ファンタジー、ホラー、美少女。

あらゆるジャンルの「テレビではやれない企画」が、OVAという形を得て世に放たれることになったのだ。

 

それは、アニメーションという表現媒体が、子供向けのおもちゃ箱から飛び出し、無制限の荒野へと足を踏み出した歴史的な瞬間だった。

押井守という異能の作家が放った一撃は、アニメの未来を決定的に変えてしまったのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

『ダロス』の成功を皮切りに、OVA市場は急速に拡大していきます。それは同時に、押井守監督のような作家性の強いクリエイターが活躍できる土壌が整ったことも意味していました。

 

さて、自由を手に入れたクリエイターたち。

彼らの実験はさらに加速し、アニメ表現の極北へと向かいます。

 

次回、「表現の自由区」。

OVAだからこそ可能だった、過激で濃厚な世界へご案内します。

 

ブックマークや評価、お待ちしております!

ーーーーーーーーーーーーーー

もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ