魔法少女というジャンルの確立 第6話:あなたの最初の「憧れ」(終)
作者のかつをです。
第十六章の最終話です。
魔法少女アニメが女の子たちに与え続けてきたもの。
それは単なる娯楽を超えた、自己肯定感と未来への希望だったのではないでしょうか。
その壮大なバトンリレーを描きながら、この章を締めくくりました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2025年、東京。
物語の冒頭に登場した、日曜朝のリビング。
テレビアニメの放送が終わり、女の子は母親の方を向いて言った。
「私ね、大きくなったらプリキュアになって、みんなを守るの!」
母親は微笑んで、娘の頭を撫でる。
「そうね。きっとなれるわよ」
母親は知っている。娘が本当に変身してビームを撃つわけではないことを。
しかし、同時に知っている。
その「誰かを守りたい」「強くなりたい」という願いそのものが、娘を大人へと成長させる一番の魔法であることを。
サリーちゃんが蒔いた種は、アッコちゃん、メグちゃん、モモやマミといった数々のヒロインたちによって育てられ、セーラームーンやプリキュアという大樹へと成長した。
魔法少女アニメというジャンルは、半世紀以上の時をかけて、女の子たちに語りかけ続けてきた。
「あなたは、何にだってなれる」
「優しさは、弱さじゃない」
「自分の足で立ち、仲間と手を取り合えば、運命だって変えられる」
かつて「アニメは男の子のもの」と言われた時代に、手探りで「女の子のための物語」を作ろうとした東映動画の開拓者たち。
彼らの挑戦は、日本の女性たちの精神史に、見えないけれど確かな一本の線を引いた。
歴史は、遠い資料館の中にあるのではない。
あなたが子供の頃、鏡の前で唱えたあの呪文の中に。
おもちゃのステッキを振り回して感じた、あの万能感の中に。
そして今、社会の中で自分の役割を果たそうと奮闘する、あなた自身の心の中に、それは確かに息づいているのだ。
かつて、ブラウン管の向こう側から、名もなきクリエイターたちが送った「プリンセスたちの魔法」。
それは、女の子たちを「守られるお姫様」から、「自ら戦い、未来を切り拓くプリンセス」へと変える、勇気の魔法だった。
女の子は、おもちゃのステッキを高く掲げた。
窓から差し込む朝日が、プラスチックの宝石をキラキラと輝かせる。
その輝きは、彼女がこれから歩む未来を、明るく照らしているようだった。
魔法は、解けない。
私たちが夢を見る限り、その力は永遠に続いていく。
(第十六章:プリンセスたちの魔法 ~魔法少女というジャンルの確立~ 了)
第十六章「プリンセスたちの魔法」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
魔法少女というジャンルは、日本独自のものでありながら、今や世界中の子供たち(そしてかつての子供たち)に愛されています。「Moon Prism Power, Make Up!」という言葉が世界共通語になったように、彼女たちの魔法は国境を超えました。
さて、第四部「熱狂編」は、この章で一区切りとなります。
次なる物語は、戦いの舞台を「テレビ」から「ビデオ」という新しいメディア、そして世界へと移します。
次回から、第五部が始まります。
**第十七章:ビデオがアニメを救った日 ~OVA、表現の自由区~**
テレビでは放送できない。映画にするにはマニアックすぎる。
そんな企画を実現するために生まれた「オリジナル・ビデオ・アニメ(OVA)」という発明。
それはクリエイターたちの実験場であり、より過激で濃厚なアニメ文化の幕開けでした。
引き続き、この壮大な旅にお付き合いいただけると嬉しいです。
ブックマークや評価で応援していただけると、第十七章の執筆も頑張れます!
それでは、また新たな物語でお会いしましょう。
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