うさんちゅ
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朝、目が覚めると……設定した時間より一時間前に起きていた。寝起きだというのに、昨日の高揚感がまだ少し残っている。
ハクトがどうしているのか気になった私は、ログインすることにした。
ログインすると、ベッドの上で昨日――相棒になったばかりの白い兎が寝ていた。少しその様子を眺めていると……。またお腹を空かせるのではないか。そう思った。
だが、ハンバーガーしか作ることができない……。私は味付けを変えることにした。
ハンバーガーをお皿にのせ、ラップをかける。喉も乾いているだろうから取っ手付きコップも必要だ。それらをテーブルの上に置き、置き手紙を書くことにした。
『ハクトおはよー またハンバーガーだけど味付けは違うよん♪ 君にはこの違いに気づけるかな?』
まだハクトは起きない。私の中で《チャンス!》のカットインが入る。
――採寸しよう。
珀斗兄はアバターを一度も採寸させてくれなかった。いつだって――『俺はアロハシャツと生き、アロハシャツと死ぬ』と、採寸を断り続けていた。
ハクトは採寸の途中……起きることなく、無事に採寸は完了した。
「よしっ! 戻ってハクトの服でも作ろっと」
私はログアウトした。
アバターの服を作るならパソコンの画面を見ながら作るのが、結局のところ一番楽だ。
「確か……。珀斗兄の作ったアロハシャツ専門店は海沿いの町だったか。あそこは年中、夏なんだよな」
私は新しく自分用の服も一緒に作ることにした。
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「完成――――!」
パソコンの画面には、『うさんちゅ』と胸元にグラデーションブルーでプリントしたお揃いの白いTシャツと、お揃いの麦わら帽子が並ぶ。
また私…………舞い上がってるな。一旦、アバターの服はエプロンドレスに戻して置こう……。
冷静になった私はそう思うと、画面を見ながら服装を変更した。