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唱説 男鹿岳

作者: 箕宝郷

1.反比(はんぴ)の愛情

 陸奥(むつ)の国 会津郡(あいづぐん) 黒滝股村(くろたきまたむら)風賀(ふーが)という男がいた。風賀は黒滝股村の名主の娘である。花音(かのん)という女性に恋をしていた。風賀は身分の違いから恋する花音とは距離を置いていた。貧しい風賀が、花音に近づと不幸になると考えていた。風賀は花音の幸せを願っていた。それが風雅にとっての愛情であった。

 名主の家に税を納める時、花音に話しかけ話しているひと時を大切に過ごしていた。花音の幸せを考え、風雅はそれ以上の事はしなかった。大寒(だいかん)の頃に花音の縁談を知った。風雅は村の人たちと喜んだ。しかし、心の底から喜べなかった。その時、風雅は恋愛に対する考えと、花音に対する思いに乖離があることを初めて知った。花音の結婚の儀式の準備を行っている時、乖離は大きくなるばかりであった。



2.婚姻

 会津の雪粒は秋になれると米粒に変わる。       めでたいや

 辛かった出来事も時が経てばいつか自分を守る盾になる めでたいや

 獅子よ舞え、花音の喜びを忠実に表現せよ

 獅子よ舞え、祝福する村人を大きく表現せよ

 獅子よ舞え、嫁入りの不安を小さく表現せよ

 左様ならば、伯父ヶ岳の山を越え下野国 安蘇郡(あそぐん) 熊鷹山村(くまたかむら)の地へ向

 かえよ。そこで新たな幸せが花音を迎えるだろう。


3.雪無き思い

 失う恐怖、変化する恐怖、加害の恐怖。

 3つの恐怖に立ち向かう勇気が無かった。

 私は花音の幸せを求めていた。

 なぜだろう?花音は嫁入りし、幸せになってるはずなのに、納得できない。

 花音は宇賀岳を超えて安蘇郡(あそぐん)にいる新郎の元へ無事についたと木簡(もっかん)が届いた。

 花音を失っても、風雅にはまだ、変化する恐怖と、冷める恐怖が、日陰に残る雪のように残っていた。

 「残雪は 失う恐怖を 慰める」

 

4.最後の句

 村人たちは次々に風雅に娘たちを紹介した。しかし風雅は全て断った。

 純白な思いが春の暖かさによって色がついてしまったら最後、自分を見失う気がした。

 納得のいかない幸せは自分の心を壊すに過ぎないと感じた。

 たとえ花音に春が訪れたとしても、冬と変わらない姿の男鹿岳のように風雅の思いは変わらない。

 「春来ても 思い変わらず 男鹿白し」

 木簡に風雅は返事を書いた。忘れ雪が降った日の夜、姥沢峠に木簡を置いた。


5.白冷(はくれい)雪霊(せつれい)

 一年が経ち、花音に長男が生まれ故郷の黒滝股村を忘れかけた頃、安蘇にも冬がやってきた。

 安蘇の雪の無い冬に花音は驚いていた。如月半に雪が降った。

 久しぶりの雪景色に花音は故郷を懐かしんだ。

 突然、男が現れ「いま幸せか?」と花音に問いかけてきた。

 花音は恐怖のあまり何も答えなかった。玄関前で何かを唱えていた。

 雪が止むと男は消えた。

 男の姿に見覚えあったがはっきりと思い出すことができなかった。

 この日以降、年に数回降る雪の日に必ず現れた。

 花音は白冷の雪霊(はくれい せつれい )と呼んだ。

 白冷の雪霊(はくれい せつれい )は花音にしか見えなかった。

 白冷の雪霊(はくれい せつれい )は黒滝股で犯した心当たない罪から来たのかと考えていた。

 復讐の恐怖

 過去の恐怖

 憑依の恐怖

 生涯、花音は3つの恐怖に苦しんだ。

 過去の恐怖から花音は故郷に戻る事はなかった。

雪霊よ(せつれい) 息子に姿を 見せないで 生きてるうちに 私が(あがな)うから」


 

 




 

 

これらを歌詞にして作曲し、いつか合唱組曲にしたいと考えたいと思います。公表できる機会がありましたら動画サイトにて公表します。

次回の短編は「30年目の真実」

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