009.魔道具屋
ソラードは剣聖としての仕事は無いが、今は騎士団の団長から依頼を受けて、エラン様の監視をしている。監視というか護衛? 子守? いや考えないでおこう。今は借金を肩代わりしてもらっている恩人だ。
エランを連れて王都でも有名な魔道具屋にやって来た
「いらっしゃいませ、今日はどの様な物をお探しですか?」
「魔道具は初めてでどの様な物があるか知らないのでまずは見て回るだけでも良い?」
「御予算は?」
「金貨50枚は持ってきたけど、ソラードの借金建て替えたので40枚ぐらい」
「エラン様その説明は要らない」
「そうですか、それだけあれば大体のものは買えますね、御説明しましょうか?」
「お願い」
「こちらは帝国製の携帯魔導コンロでごさいます。旅先で使用するのに重宝します」
「そしてこちらが帝国製の給湯器です。そしてこちらが・・・」
「あのー、全部帝国製?」
「はいそうでございます。魔道具は国内ではほとんど作られておりません」
「魔道具を作れるようになりたいんだけど、国内じゃ無理?」
「そうですね魔道具師を目指すなら帝国がよろしいかと」
「そうですか、魔導コンロはいくら?」
「金貨10枚でございます」
金貨1枚が10万円の感覚だから100万円か高いな、でも買わない選択肢はない
「じゃあ魔導コンロください」
「エラン様、なぜ魔導コンロを?」
「いや聞いてたでしょ帝国でしか学べないんだよ、そしたら帝国に行くでしょ。旅に必要な物は買っておかなくっちゃ」
「いつになく遠回りな思考。許可が出るとお思いですか?」
「成人すれば王家を出るだろうから行けるよ」
「重要人物は許可が必要です」
「か弱い少女は一般人」
「どこが? 一般人は『武神』とか『魔神』などとは呼ばれません
仕方ないですね王都にも1軒だけ魔道具工房があったと思います、行ってみます?」
「あるの? 行こう行こう」
「元気だな、まあ魔道具屋というか、閃光弾とか冒険者の使う武器を作っているところだけどな」
冒険者ギルドの近くまで戻ってきた、ギルドの裏にあるらしい。そうだよねギルドに近いに決まっている。
店に行くと、冒険者グッズが沢山並んでいる。
閃光弾。
炸裂弾。
火種。そうか誰もが火魔法使えないし魔力も無駄に出来ない。
水筒。自動で水がいっぱいになるようになっているみたいだ。
乾燥機。濡れたままだと体温奪われるし、濡れたら速く乾かさないといけないね。
虫除け。超音波みたいのを出して追い払う装置らしい。小動物も来ないらしい。
ふぅーん色々あるな。
「お前さん初めて見る顔だな」
「エランって言います、先日冒険者登録をしたところで」
「まだこんな物必要じゃ無いだろ」
「いえ、魔道具に興味があって、魔道具師を目指しているんです。でもほとんど帝国製で国内では学べないと知って落ち込んでいるところです」
(どこがだ)、剣聖様黙ってて。
「ほう、魔道具師を目指しているのか、珍しいな、ここでも少しは作っている、工房見ていくか?」
「うわー嬉しい、是非是非、お願いします。」
(こいつネコ被りやがって)、剣聖様うるさい。
剣聖様、これは交渉術です。猫かぶりではありません。力が全てでは無いんですよ。現に剣聖様よりもお金の方が強かったですよね。力だけでは駄目なんです。
ここが工房? 何も無い。いや中央に釜が1つ
「これは?」
「錬金釜じゃよ」
「はあーこれがぁ、本では見たけど現物は初めてですぅ」
「本?」
「『賢者の書』と『錬金王の書』っていう冒険譚です。錬金術で魔道具を作るんですね」
「秘術の書で国内では見られんもののはずだがな、儂は帝国で学んだから知っておるが」
「じゃあ私の大先輩ですねぇ、そんな方にお逢いできて嬉しいです、エラン感激ですぅ」
(こいつどこまで猫被ってんだよ)
「そうか」
「作るところを見せてもらっても良いですか」
「おお、じゃあ火種の魔道具を作ってみるか」
すごく手際よく魔道具が作られていく、材料が次々と空中から現れて加工され錬金釜に入っていく
そして錬金釜が光り輝き円筒形の塊になった。それをケースに入れると完成。らしい。
見事な技だ。
「すごぉーい、材料は亜空間保管庫ですか」
「よくわかったな、ここらじゃあまり見かけんが、便利じゃろ」
「これも『賢者の書』にありました
やってみます。
たしか、別の空間を創造してっと、そこに棚、フローラックみたいのを作って在庫管理用のコンピュータみたいのを創造してっと」
「そんなに簡単にはできんはずじゃが?わしだって10年かかった」
「出来たぁーー」
「そんな馬鹿な」
周りにあったいろいろなものを入れ出ししてみる
「お手本が良かったんです」
「まてよエランといえば『魔神エラン』か?」
「おそらくはそのエランですがその呼ばれ方は好きじゃない、美少女エランとか・・・」
ガン無視された。自分で言うなって、自分で言わなきゃ誰が言う
「逆にすごいものを見せられたな、ついでに何か作ってみるか」
話題をそらされた
それからいくつかのレシピを初見で再現するというとんでもない状態が続いた
「もう教えられるものがないな、素材がなくてな、帝国に行けばもっと色々作れるぞ
行くときは紹介状を書いてやる、儂の弟子1号だ。
そうじゃ『魔神エラン』じゃ可愛そうだ『賢者エラン』ってのはどうだ?」
「それいい、自分で言うときは『賢者エラン』って名乗る事にするよ」