089.学園(46) 吟遊詩人(2) 潜入
渡し船に乗る
今、ドロシア帝国と国交は無いが、旅人のために渡し船は行き来している。旅芸人2人なら特に問題ない。
シャドゥ達はどうやって渡るのかな? 気にしないでおこう、全てに説明を求めるときりが無い。
移動だけなら、ダンジョン機能でも出来るし、転移でも出来る、飛んで入る事も出来る。ただ今回は潜入である。従ってちゃんと入国するのが良いだろう。
身分証明書はエラン領の物を作った。領主だから身分証明書ぐらいは自由に発行できる。ユグエンドーラの身分証明書だと警戒されるかもしれないので、大陸の反対側にあるエラン領の身分証明書にした。
イーフラシーノが旅先で見つけて見習いにして旅しているという設定だ。見習い中は見聞を広げるために旅をする必要がある。今回はまだ慣れない私のために師匠に連れられて旅をしているという設定だ。
嘘ではない。
入国自体は問題なく通れた、小さな弟子を連れた吟遊詩人は人畜無害と判断された。
ちなみに彼の身分証は冒険者ギルドの物で、職業が吟遊詩人になっている。
見習い修行中は、別の吟遊詩人に会うこともあるし、師匠以外の芸を見るだけでも見習いの勉強になる。
そんな話しをしながら乗合馬車に乗って街に向かっている途中だ。
えっと元々私には作詩の才能は無い、更に言うと前世から引き継いで無い、スキルを貰ったぐらいでは改善されないであろうぐらい壊滅的だ。
「作詩の出来栄えを見たい」
「ししょーー」
「やってみなさい」
ちっ、厳しいな、作詩してみるか、知らないよ
ここでは差し障りのない獣人国の国王交代に関して
『
此処は王国の西海を隔てた獣人国、力で支配される国
力は権力そのもの、力が物を言う
王は勢力を伸ばさんと他の大陸に軍を向けた
一部は海を渡り王国へ、北極を越えて帝国へ
少数精鋭の獣人軍、数は少ないが強力な軍隊に匹敵する
そこに現れた一人の英雄
戦争による国への被害が出る前に解決せんと仲間を連れて獣人国に渡る
そしてなんと国王との一騎打ちに持ち込んだ
振るう大剣、割れる大地
あまりの猛攻に国王は膝まづいた
お前が国王だ
力で支配するものは、力に敗れる
新たな国王は、弱い力の者も国の力になると国を巡り新たな力を手に入れていった。
』
「なるほど、続きは」
「今ここのあたりまでしか出来ていません」
「言葉が多いな、洗練されていない、もっと感動的な言い回しにしなさい」
「はい、自覚はあります」
乗り合い馬者に同乗している客は私に同情的で、
「師匠、厳しすぎるよ、まだ小さな子じゃない。」
大銅貨1枚を貰った。嬉しい。金貨1枚に匹敵する。
「ありがとうございます」
行商人さんだそうだ。
つられて、他の客からも銅貨を何枚か貰った。嬉しい。
別にドロシア帝国民全員が悪いわけではない、優しい人たちも多いんだね。
酒に酔っ払った客が
「嬢ちゃん夜の相手してくれたらもっと出すぜ」
台無しだった。
流石に師匠が睨みつけて黙らせた。
微妙な雰囲気の中、街にたどり着いた。




