055.獣人国(5) 防衛作戦(4) 拠点確保
「えっと、密偵さんの名前は?」
「ありません」
密偵だからか、しょうがない
「仮の名前は?」
「ご自由に」
「では、『カゲ』で」
「同行するのは全部で3人ですが」
「では『レッド・シャドー』『シルバー・シャドー』『ブルー・シャドー』 シャドウ部隊と名付ける」
ホワイトは代官と紛らわしいのでシルバーにした
誰がどの名前か本人たちに選ばせた。
さて、密偵シャドー部隊が3人と私とニャーヤとマギドラの6人か。
どうやって行こう。
空から行こうとしたら飛龍になるけどそれだと目立つなぁ。
飛龍ごと隠密を発動して行こうか。
拠点さえ得られれば転移で直ぐなんだけど。
「ニャーヤ、獣人国で拠点に出来そうな所に心当たりある?」
「どこも占拠されている可能性が高いにゃ、
人族の居留地が隔離されているだけなら、そこがいいんじゃなゃいかにゃぁ」
「そうか、ではシャドー部隊は拠点確保した後に転移で運ぼう
私とニャーヤで先行して拠点確保に向かう」
「どうやって行くにゃぁ?」
「私は自力で、ニャーヤはドーラに乗ってけてもらう」
「エラン様は飛べるのにゃあ?」
「秘密よ」
そう、精霊の羽は非公開だ。隠密をかけて飛ぼう。
獣人大陸までは約4日だ。船だと一ヶ月。
高高度で飛んでいると
2日ほど来たところで50隻ぐらいの船団が眼下に見えた、第一陣か?
まだ大陸までは3週間の余裕があるな、もし獣人国で問題を解決したとしても第一陣は到達してしまうかもしれないな。クラークケンタ頑張って。
大陸近くで隠密をかけたまま海岸近くにあるという人族の居留地を目指す。港付近に船は見当たらない、おそらく持てる船総出で人族大陸に向かったのだろう。
人族の居留者は帰る手段がないので、監視はゆるいだろう。牢屋に入れるのも管理が面倒なのでおそらく居留地で軟禁状態だろう。
居留地は浜に近い小さな島らしい。こちらとしても好都合だ。
私だけ島の人気のない場所に着地した、ドーラ達は待機だ。
探索を発動し島を調べていく。人族だけのようだ。人数は20名。船を取られて隔離されている状態だ。泳いだとしても浜までで、そこには獣人が居る。船も小型のものしかなく人族の大陸までの帰還は不可能だ。
隠密発動したまま、人々の会話を聞いたりして状況を把握していく。食料の備蓄もあり、水は井戸と雨水が使えて何とか生活は出来ているみたいだ。リーダー格と思われる人物がいたのでとりあえず接触してみることにした。隠密を解いてまずは挨拶
「こんにちは」
「だれだ、お前の様な子供はいないはずだ」
あっ子供だった。ここは正直にいこう
「私はエラン領のエラン、様子を見に来ました」
「嘘を付くな、キツネ属か?」
「獣人ではありません」
どうやって信じてもらおう。
「船長、その方はエラン領主です。見たことがあります」
そんなに表に出てないと思うけど。
あっ、ロレイン商会の人か?
「ひょっとしてロレイン商会の方?」
「護衛以外はロレイン商会のものです」
こんなところまで手広くやっているんだ、すごいねロレイン商会。
「ちょっとヴァルハラ領で獣人を保護したら、なんかクーデターがあったらしくて、私達の大陸に進軍するのだとか聞いたので様子を見に来たんです」
「よく見つからなかったな」
「隠密スキルを持っていますので、それで状況は?」
「エラン様の聞いた話は正しい。我々かここに居るときにクーデターが起こり、同時に船を奪われここに閉じ込められたままだ、先日船団が我々の大陸に向かったのを見た。早く知らせないと」
「わかりました。貴方がたをすぐに救出することは出来るのですが、ここを拠点にして、これからクーデター返しをする予定なので、いきなり居留地の人族が居なくなると気づかれる可能性があります、
ですから、しばらくここで待機して何事もない風を装っていただけませんか」
「わかった協力しよう、ただ食料が少なくなってきて困っている」
「問題ありません」
でーーん
以前ドロシア帝国から没収した兵糧の一部を渡した。
「拠点は浜とは反対側に作ります、何かあれば連絡下さい」
その場を離れて、拠点候補地を探し監視塔を建ててカモフラージュをしておく
ドーラとニャーヤを呼び込んだ。
そして密偵シャドウ部隊を転移で連れてきた。
シャドウ部隊を迎えに行ったついでに王都に行き第一陣が獣人国を出港した事を告げた。
ーーーーー
「俺たちゃ最強獣人部隊、
海を超え行くぞぉ〜
人族なんて蹴散らして
我らは最強獣人部隊」
歌のような、掛け声のような不明の言葉を発するクマ族の獣人、屈強な勇姿を誇らしげに天を仰ぐ
そんな時、叫び声が
「「クラーケンだ」」
なにそれ顔でクマ獣人が見渡す間もなく、海からせり上がった巨大な吸盤の付いた腕が巻き付いてきた。
そしてなすすべもなく海の中へと次々と引きずり込まれていく。地獄絵図であった。
船も軋み、真っ二つに折れて沈んでいく、小型手漕ぎ船で僅かな獣人が逃げられたぐらいだ。
そして、次々と船が襲われて沈んでいく。船団の半分が失われた。
〈うぇーぷ、ちょっと食べすぎたな、主、もういいかなぁ〉
従魔通信が来た
〈クラークケンタありがとう、もう良いわご苦労さま〉
〈なんでもないよ、いつもよりたくさん食べられて嬉しいだけだ〉
〈もう食べなくていいから、出来たらもうすこしだけ沈めておいて〉
〈わかった〉
そして50隻あった船団は15隻ほどになってしまっていた。小型船で逃げた者を乗せたので、船はぎゅうぎゅうで、食料の配給も減り、獣人たちの体力を奪った。
残り2週間。それは大食漢の獣人たちにとって地獄の日々であった。




