173.獣人国(39) エワンの冒険(2) 出発
その後、特に問題も発生せず獣人国港に着いた。
形式的ではあるが国王に謁見するため、王都に向かう。
今回の船にはロレイン商会の人も乗っていた。まだ払い下げ船を運用するまでには至っていない。元々商船では無かったので、色々と改造が必要みたいだ。それでも改造したほうが新造するよりもかなり安い。
ただ、エラン商会の船の方が快適なため人はエラン商会の船、荷物は自前の船とかの使い分けもあるみたいだ。
今回の視察もニャーヤ宰相が案内役の担当だ。
「エワン、いらっしゃいにゃ」
ニャーヤはエワンが分体である事を知っている
「ニャーヤ様はじめましてエワンです、従者の方はご存知ですね」
「しってるにゃ、よろしくにゃ」
ニャーヤを冥界に連れて行ったら人気者になりそうだ。エシックスでも人気あったからね
エランは同時に経験しているため知っているが、一応海底人の件は報告した。
「エワンを国王代理に任命しますにゃ、視察中はエワン・ユグエンドーラを名乗るにゃ
これが証の剣エンドラですにゃ」
エンドラを預かることになった。儀式的なものだけどね。
堅苦しい儀式は続いた。・・・・
「今回の視察は主に西海岸の部族の視察ですにゃ」
やはり「にゃ」が鬱陶しいので概略をまとめると
大陸の中央は平原で馬人族や犀人族などの草食系の獣人が住んでいる、大陸の西側に寄った位置に山脈があるため、西海岸は狭い土地が続く。山麓には蝙蝠人族やムササビ族、モモンガ族などの部族が住んでいる。
西海岸にはバンパイア族が居る、バンパイア族が獣人族かどうかよくわからないが。外界とはあまり接触を持たず、ひっそりと暮らしているらしい。前世の知識ではバンパイアは強力な種族だと思ったけど。街に出て吸血鬼になってもらっても困るからそれで良いんだけど。あと恐竜族も居るらしい。西海岸に住む部族は原種に近いせいで獣人と言うより、二足歩行の動物といった感じらしく交流をあまり持たない様だ。
従って排他的であることは確実だ。そういった事も有り、これまであまり視察対象にしていなかったが、一応獣人国に属し従っている部族なので今回は使者が視察に赴くことになったのである。
今回は王都の北から大型草食動物獣人族の領域を通って山脈へと向かい、山脈の北側にある谷を通り西海岸に抜け南下するルートを行く。谷は緩やかな坂道で通り抜けられるように切り開いた街道である。
トンネルを掘ったらもっと楽に行けそうだな。いつもの錬金採掘で穴を塞がなければ出来そうだ、掘った土はアイテムボックスへ入れて行けば良い。
ひっそりと暮らしたいのに勝手に便利に行き来できるようにしたら怒られそうなので現地で確認してからにしよう。
そんな事を考えながら、馬車でぱっかぱっかと進んでいる。護衛は今回も熊獣人だ。王の代理でも王様と同じ扱いだ。大型草食動物獣人の領は広いので結構飛ばして走る。最初の宿泊地は、馬獣人だ、特徴はたてがみがあることだ、モヒカン?太い目のモヒカンだ。
大型草食動物獣人と言っても雑食である。好物は人参だ。飼葉は食べない。走るのは早い。
王都に近いので国王は見たことがあるそうだ。大型草食動物獣人は親国王派のため歓迎ムードはとても良い。この地は馬鈴薯の産地でもある。大量にもらった。
お礼にノンフライドポテト焼き器をプレゼントした。所謂オーブンの魔道具だ。短冊切りにして少し水洗いして水をしっかりと切り、ちょっぴり油を塗って予備加熱してある魔道具へぽんと放り込む。200度で20分程焼いて、塩をぱらぱらとまぶした。
とても美味しかったが問題があった、一度に焼ける量では足りないのだ。オーブンをもう一台プレゼントした。
王都に屋台を出したらと言ったら、即決で決まった。そして屋台用にもう一台オーブンをあげる事になった。下手なことを言うものではない、あとは買ってねと言ってさっさと出発した。
更に大量の馬鈴薯と人参をもらったから少しは元が取れたけど。
今夜は野営することにした。次の街までは遠い。あと野営が2回続く
草原オオカミが頻繁に来る。結界があるので問題ないが、ガウガウうるさくてよく寝られない。
うるさいので彼らはスリープで寝てもらった。朝にはなぜか骨になっていたが・・・
次の日からは防音結界にした。
翌朝結界の外を見ると野生の猪の死骸が山になっていた。ぶつかって死んだらしい。防音にしておいたから気づかなかった。食料を大量にゲット出来た。
今日の夕食は豚汁だな。エラン商会の味噌も大量にアイテムボックスに入れてある。




