010.賢者エラン
冒険者ギルドに来た。そういえばまだ依頼をこなしていないのだ。
「おぅ、悪女エラン、この前はすまなかったな」
あの腹パンしてやったやつだ、確か仲間がダンとか行ってたな
「やる気か? 悪女じゃねえし『賢者エラン』と呼びな」
侮られないように凄んでみた。似合わないな。
「やめとくよ、誰も何もしないさ『賢者エラン』様
お詫びにこれをやるよ」
短剣を一振り手渡された
「良いのか、これ高そうだぞ」
「高そうじゃない、高い!」
「なんでこんな物を?」
「このままじゃ冒険者ギルド追い出されちゃうんだよ、しっかり謝罪しないと」
「わかった謝罪を受け取ろう」
「私からはこれをあげる」
「なんだこれは?」
「裏の魔道具屋で作らせてもらった『閃光弾極み』だ、使うときはこの遮光メガネが必要だけどな、ドラゴンにも効くぞ」
「使い勝手悪すぎだろ」
「それからこれもあげる『炸裂弾極み』だ、100メートルは離れて使えよ」
「使えんだろ」
「そしてこれが『火種極み』だ、10メートルは離れとけ」
「あのな」
「それから・・・」
「許してくれ」
なんとか不用品を処分できた、魔道具工房の練習で作ったんだけど、まあ何かには使えるだろ
「あっ『マジックバック小』だ20キロぐらい入るぞ、これもやる」
「微妙に小せえな、わかったありがとう、じゃあな」
あっ行ってしまった。逃げられたか。
この短剣結構使いやすいな、有り難く使わせてもらおう。これを持っていれば謝罪を受けたと思ってくれるんだろう、皆も見てたし大丈夫だな。
(このあと、『命知らずのダン、賢者エランから強力なアイテムを賜る』との噂が広がった)
そうだ依頼を探そう。初めての依頼。
と言ってもまだ低ランクなので採取しか受けられないなぁ。
自分用の素材探しにもなるし
よし、薬草採取は常時受け付け依頼だな、どこで取れるか受付に聞いてみよう。
やって来ました魔の森の入口
奥まで入らなければ初心者でも大丈夫だそうだ。まあ短剣も持っているし。遠くから影(剣聖)も見張っている。いつも隣りにいては冒険者気分を味わえないと遠ざけたのだった。
遠くに高い山もあるから目印にすれば迷わないよね。
探索魔法ってあるのかな、なければ作ろう、目的とする野草は「回復草」まんま回復薬の原料だそうだ。
まずは一株見つけた。そしてこれと同じものを魔力散策する。あっちの方に群生地がありそうだ、少し離れているけど大丈夫だよね。大量ゲットだ。アイテムボックスに収納して鮮度を保つ。基本だね。
さて帰ろうとすると、遠くから戦闘音、ぎゃーーと叫び声、テンプレだ。
えっと、確か冒険者マニュアルを受付嬢からもらっていたな。
『異常を感じたら状況を見極める』っと
そうか、まず危険のない距離を保って近づいてみよう。
あっ見えてきた、馬車を中心に護衛たちと冒険者が地竜を相手に戦っている。
見学しようかな、先輩の動きを見るのは勉強になる。
あっちょっと劣勢みたいだな。こんな時はっと
『加勢する場合は、加勢しても良いかしっかり確認すること』っとそうだよね後でクレーム入るかもしれないからな、よしまず声掛けだ
「おーい、加勢は必要か?」
「頼む助けてくれー」
よし、言質はとった、あっ忘れていた
『加勢する場合は取り分をはっきりさせてから加勢すること』なるほどそうだよね
「おーい、私の取り分は?」
「お前素人か、全部やるから加勢してくれ」
「素人だよー」
これで介入しても良いんだよね
「ちっ素人か、囮にもならん」
「あっ不穏な言動だ」
こういう時は
『様子がおかしいと判断したら加勢しなくても良い』ほー見捨てても良いんだ
「おーい、不穏な言動をしたぞ、こういう時は見捨てても良いってマニュアルに書いてあるぞ」
「悪かった、少しでも良い助けてくれ」
「んー、やられちゃいそうだし助け損でもいいから助けてあげようかな」
「わかった、少し引け」
「おー」
一瞬道がひらけた
「おりゃあ」
瞬間的に移動して、剣戟を与える
<ぐぎゃぁ〜〜>>
とりあえず地竜の四肢を断つ、というか短剣では体を両断は出来ない。大剣欲しいな。
『地竜は皮が使えるのでできるだけ素材を取れる様に倒すこと』とマニュアルにあった。
よし、素材ゲットだ
「もらうよ」
出血多量で息絶えた地竜をアイテムボックスに収納して立ち去る
「まてっ」
「ん? くれるって言ったよね」
「そうだが、なぜすぐに立ち去ろうとしている」
「もう用は無いから」
「名乗りはしないのか?」
「賢者エラン、じゃあね」
「待て、主が礼を言いたいそうだ」
「要らない、じゃーねー」
早く帰らないと門限があるんだ。
美少女令嬢のテンプレイベントがあるかもしれないけど門限を破れば外出禁止になってしまうかもしれない、それただけは避けなければならない。それに美少女ゲットしても意味が無い。ちっ駄神め覚えてろっ。
全速力で冒険者ギルドに戻り大量の納品を済ませる
「貴重素材の大量の納品によりランクが上がります」
えっとランクって何だっけ
「GランクからFランクになります、更新したカードと報酬金貨1枚です」
「ありがと、また来る」
地竜は納品に時間がかかりそうだし今度来た時に納品しよう。
全速力で城に帰った、よかった間に合った。
あっ父上が居る
「良く無事で帰ったな、嬉しいぞ、心配したんだよ」
「薬草の採取だし危険なんて無いよ」地竜は居たけど、あれは依頼とは関係ない、単なる人助けだ。
「初依頼のお祝いパーティーをしよう」
「大げさな」
「可愛い子には旅をさせろとは言ったものだね」
いや旅してないし、
「旅に出てもいいの?」
「成人したらな、その前に学園に通わなくてな、来年かぁ心配だなぁ」
親ばか?
「心配要らないよ、それまでに強くなるよ」
「頑張ってるみたいだね、誇らしいよ、でも危険なことはしないと約束してくれるかな」
「自分から危険には飛び込まないよ、戦闘狂じゃないんだし、降りかかる火の粉ははらうけど」
「おおっさすが我が娘、凛々しいぞ」
地竜のことは内緒にしておこう。でも賢者エランって名乗っちゃったな。
「お前の名に似た、ケンジャ・エランとか言うのが居るらしいから間違われないようにするんだぞ
A級冒険者をボコったとか乱暴なやつらしいから」
「えっと、そうだね、うん、注意する」
そんな噂が・・・・




