第一話
「よくぞ参った、勇者とその仲間たちよ!」
現在、国の王様と謁見をしている最中である。
国王が玉座に座り、謁見の間の入り口から玉座の手前まで赤い絨毯が続く。赤い絨毯の左右には、強そうな兵たちがずらりと立ち並んでいる。
「勇者よ! 必ず、魔王ビビマオールの首を討ち取ってくれ!」
「はっ! この国に害を与える魔王を、必ず仕留めて参ります!」
そんなことを宣言する勇者。
(いや、この国に害を与えたことはないよ? 血気盛んな部下が、勝手に暴れたことはあるかもしれないけれども……)
我は跪き、俯いている。顔を上げると「魔王が侵入している! 皆の者、であえであえ!」などと、兵士たちに囲まれて殺されることを想像している。脂汗が滲み出てくる。がくがく震えそうになっている膝を、強引に押さえつける。
そんな我を今日も置いてきぼりにして、話がどんどん進んで行く。
「勇者達が旅立つ前に、前祝パレードとしゃれこもうじゃないか」
陽キャどものパーティーが始まりそうな予感がした。
数日後。
形は荷馬車だが、豪華さは王族の馬車並みの装飾がされ、幌の無いオープンタイプ。
その馬車に勇者パーティーは乗り込み、城下町中を馬車はゆっくりと走り回る。
「きゃ~、勇者様!」
「魔王なんかぶっ殺してくれ!」
「がんばれ~」
あちらこちらから、歓声が響き渡っている。
勇者パーティーのメンバーは、立った状態で国民に手を振って、期待に応えようとしている。
(こ……この人間達が、全員、我に敵意を向けている)
足がぷるぷると震える。我は顔を隠す為に、馬車の椅子に座った。
そんな我を見て、マリアさんが声をかけてくる。
「マオさん、何を照れてるんですか? マオさんも、魔王を倒した後は英雄になるのですから、しっかりと国民に覚えて貰わないと!」
そういうと、我の腕を掴み、引っ張って立たせる。
「い、いや、お構いなく」
「もう~、マオさんてば、謙虚なんだから」
我の手を掴み、操り人形のように手を振らせる。
照れや謙虚ではなくて、死にそうなほどの恐怖なのだが。
状況的には『指名手配』のビラを撒く必要がないくらいに有名になった。
ショックのあまりに、我は気絶した。
目が覚めると、知らない天井が見える。いや、天井にしてはおかしな形をしている。
ぼんやりしている視点を合わせようとしていたら、突然、マリアさんが横から顔を出してきた。
「あ、マオさん。起きましたか? ふふ、マオさんたら、緊張しすぎて倒れちゃうんだもん」
目の前に突然美女の顔が現れ、再び昇天しそうになった。止まりそうな心臓を必死に動かす。いや、自分の意志で動くようなものではないのだが、そうそう気を失っている場合ではない。状況次第では、気だけではなく、命を失いかねない。
上体を起こして、ここがどこなのかを確認する。
「え? 馬車の中? パレードはどうなったの?」
「ああ、なかなか起きないから、マオさんを馬車に積んで魔王討伐の旅に出発しました」
「えええええ!」
噛み合っていないはずの歯車が、着実に魔王討伐へと回り始めていた。
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