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ビビり魔王、冒険者になる  作者: 藤谷 葵
初稿(第二章)

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第二話

 冒険者ギルドで換金を済ませた後。



「マオさん、よかったら喫茶店でお話でもしませんか?」



 頬を赤く染めながら、上目遣いで訴えかけてくるマリアさん。

 可愛い女性にそんな仕草をされたら、もちろん返事はイエスの一択。



「は、はい! 行きましょう!」



 照れ臭くなり、背中をくるりと向け、喫茶店に向けて出発しようとする。

 すると、背後から声がかかる。



「マオさん、そっちじゃなくて、こっちですよ」



 照れ臭さから恥ずかしさに移行して、すごすごとマリアさんの後についていく。

 すると、辿り着いた先は、こじゃれたお店であった。



(こ、こんなおしゃれなお店は初めてだ!)



 おしゃれなお店。そして、女性とデート。これはもう勝ち組であろう。

 我は鼻の下を伸ばしたまま、喫茶店のドアを開けた。


 店内を見渡すと、『いかにも喫茶店です!』という造り。

 店内には、女の子たちがきゃぴきゃぴしているかと思っていたら……筋肉でがちがちの冒険者男性たちが、ケーキを口にしている。



「やっぱり、仕事の後のご褒美には甘味だよね~」



 なんて声が聞こえてくるが、「お前ら筋肉だるまは、焼いた肉の塊でも喰ってろ!」というのが、我の内心である。だが、それを口にすると、店内全員を敵に回してしまうので、お口はチャックどころか、厳重に鎖と南京錠でがんじがらめにした。



「あ、あっちの席が空いてますね。あそこにしましょう」



 二人向かい合い、テーブルに着いた。メニューを手渡されて、困惑する。


『ポイズンスライムゼリー』『マンドラゴラケーキ』など、わけのわからん名前がついている。これらの材料が名前の通りだと、ろくな食べ物ではないような気がする。


 高速で他のテーブルに視線を移し、ブツを確認する。



(メニューに書いてあるのだと、マンドラゴラケーキらしきものが安牌そうだな……)



 そして、マリアさんはポイズンスライムゼリーで、我はマンドラゴラケーキにした。


 品が出てくる間に、ちょっと二人で会話をする。



「マオさんも、やっぱり勇者に憧れているんですか?」

「そ、そうですね」



 何が「そうですね」だ。我のことを殺そうとしている勇者に対して、憧れの気持ちなんてこれっぽっちもない。だが、勇者に好感を持っていると思わせた方が、情報収集しやすそうだ。人間たちは、勇者を崇拝しているようだしな。我が部下に崇拝されているのと一緒である。



「マリアさんは、勇者を見たことがありますか?」



 そう聞くと、マリアさんは頬をポリポリと掻き、ポッと頬を赤らめる。



「えへへ、幼馴染が勇者のご神託を受けたんですよ」

(おっと? まさか勇者の知り合いとは、我は結構ツイているのでは?)



 だが、なんだろうな……マリアさんの表情を見て、涙が出そうになった。


 我だけが気まずい空気の中。それを変えるように、料理が運ばれてきた。飲み物の紅茶はセットである。


 まずね……マンドラゴラケーキが毒々しい紫色をしているんだよね。慌てて辺りの人が食べているものを再確認すると、普通に美味しそうな白いクリームである。なんで?


 そして、マリアさんのポイズンスライムゼリー。綺麗に透き通っていて、まるでマリアさんの心の綺麗さを表しているように見えるほど美しい。ポイズンの毒らしさはどこいった?


 そんなことを考えていると、マリアさんが良いことだか、悪いことだかを口にした。



「マオさんは、やっぱり凄い人なんですね! ここの料理って、注文した人の魔力量で見た目や味が変わるって、有名なんですよ。面白そうだから、前から一度来てみたかったのですが、一人だとなんか恥ずかしくて。でも、マオさんに、こんな魔力量しかない私を知られちゃったのもなんか恥ずかしい」



 両手で顔を覆うマリアさん。確かに恥ずかしそうだが、我は味が気になる。


 勝手に自分を失恋認定して、自分を慰めるために、無の境地でケーキを口に運ぶ。


 すると……激うまである。

 単純な我は、三歩歩いた鳥のように、失恋思い込みは記憶の闇の中へと沈んでいった。


 満足したお腹を擦って、情報収集を再開する。



「え、えっと、マリアさんは勇者とお、お、幼馴染なんですよね? 勇者のお名前はなんて言うんですか?」



 マリアさんは、紅茶を一口啜ってから、勇者の名前を口にする。



「『彼』はアランっていいます」

(やめろ~! 『彼』とかいうな~! 付き合っているみたいじゃん! 恋人同士みたいじゃん!)



 我は口から吐き出しそうな血反吐を、紅茶で流し込んだ。



「今度、マオさんにも紹介しますね」



 彼氏を紹介するノリで、そんな言葉を紡ぐマリアさん。

 いや、確かに勇者アランの情報は欲しいが、我がマリアさんのお父さんになった気分である。マリアさんの実のお父さんよ……勇者アランをぶっ飛ばしてくれ。


 切実に願った。


 他のパーティメンバーの三人も紹介された。

 戦士のオルガ。魔法使いのソフィア。斥候のメリンダ。そして、もうすぐ加入予定の僧侶マリアさんである。



(勇者、戦士、魔法使い、斥候、僧侶。この時点でパーティーが完璧ではないか? 我はもう倒される運命なのか?)



 そんな思いを、再び紅茶で流し込んだ。


 数日後。



「マオさん、今日は交流を深めるために、飲みに行きましょう」



 マリアさんからそんなお誘いがあった。



「聖女のようなマリアさん。積極的だな~」



 なんて顔を赤らめながら、マリアさんに言われるままについて行く。そこは酒場。ギルド併設の荒くれ者どもが集う場所ではなく、『大人の社交場』という感じを醸し出している。


 「飲み終えた後、どうなるんだろう」と、邪な考えで悶々としていた。


 鼻の下を伸ばしながら、二人で店内へと入って行く。

 すると、マリアさんが手を振っている。そのまま手を振った先に進んで行った。


 手を振ったテーブルに着くと、席には四人の男女が座っていた。どういうこと?


 そんな我の思考を置いていくように、話が進んで行く。



「マオさん。こちらが私の幼馴染で、ご神託で勇者とされたアランです」

「……はあ……?」



 状況が分からない。誰か助けてくれ。少なくとも、我が考えていたようなことではなかったということは、信じたくないが分かる。



「どうも、アランです。マリアからはマオさんが打倒魔王に向けて頑張っていると伺っています。マオさん、僕たちと一緒に、魔王を倒しましょう!」



 両手で我の手を包み込み、固く握手を結ぶ。熱意が伝わってくるが、その熱意に比例して、我の血の気は引いていく。勇者と一緒に我を倒す? なんでそんな話になった? そもそも、我は『打倒魔王』なんてものは掲げた覚えはないぞ?


 硬直していると、マリアさんが肩に手を置いた。



「マオさん、とりあえず席について飲みながら、今後のことを話しましょう」



 勇者の情報を得るだけでよかったのに、なぜか勇者のパーティーに入ることになった。

いつも読んで頂きありがとうございます。


最初(第一章)は、ボリュームがあるのに、進むにつれて文章が短くなる作者の癖。なんだろう?

安定的に未熟です……言い訳すると、伸びしろです。


応援や感想をお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく拝読させて頂いています。 ここの喫茶店は、面白いですね。 筋肉だるまにもケーキを食べる権利はあると言いたい(笑) 面白かったです(笑) どういう風に変わるか説明ぽくなりますが あると良い…
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