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ビビり魔王、冒険者になる  作者: 藤谷 葵
初稿(第二章)

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第一話

 翌朝、身体がバキバキである。慣れない力仕事をしたために筋肉痛になった。


 だが、マリアさんと一緒に討伐の依頼を受けるために、冒険者ギルドに行かないといけない。正直色々な意味でさぼりたい。


 自分の身体を無理やり起こす。生まれたての小鹿のようにプルプルと足を震えさせながら立ち上がる。気怠さゆえに、深いため息を吐いた。



「はぁ~、じゃあ行きますか」



 転移魔法を使い、いつもの木陰に移動した。街の入り口に歩いて行く。警備兵に何か言われるかと思い、自分の見た目を確認した。

 またアダマンタイトの装備をしてきちゃったよ。うっかりしてた。


 案の定、警備兵は何も言わないけど、ジロジロと見てくる。そそくさと街中に入り、冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドの中に入ると、こちらの皆様方はもう慣れたようで、我の方には目を向けない。目立ちたくない我としては良い傾向である。


 マリアさんがまだ来ていないようなので、依頼掲示板を確認する。今まではEランクの依頼ばかりを見ていたが、今日からDランクの依頼だ。現実を直視しなくては……。


 掲示板に貼ってあるDランクの依頼書に目を向ける。『魔族討伐』と言う文字が真っ先に目に入り、思わずすぐに視線をそらした。その文字を見ただけで、眩暈と吐き気がしそうだ。



「おはようございます」



 突然、背後から声をかけられてびっくりした。振り返るとマリアさんが笑顔で立っていた。



「あ、お、おはようございます」

「何か良さそうな依頼ありました?」



 眩しい笑顔で微笑みながら言ってくる。でも、その笑顔のまま魔族を殺していたりしたら怖いのだが……。そんなことは当然言わずに返事をする。



「い、いえ、僕も今来て見始めた所です」



 マリアさんも掲示板を見るために顔を寄せてくる。我の顔の側にマリアさんの顔がある。

 今にもほっぺたがくっつきそうだよ。ドキドキしたが当のマリアさんは全然気にしていないようである。

 まあ、こんな陰キャコミュ障なんかに意識しないよね。心の中で自虐しつつ掲示板の依頼書を見ていく。すると普通の獣討伐の依頼があった。これが良いと思い、マリアさんに提案する。



「あ、あのこのイノシシの討伐ってどうですか?」

「そうですね。マオさんはDランクになりたてですから、魔物や魔族よりも危険の少ないイノシシの討伐の方がいいかもしれませんね」



 いや、イノシシの討伐も我には十分危険なのだが……。

 早速二人で受付に行き、依頼を受託する。



「じゃあ、パーティを組みましょうか」



 マリアさんはステータス画面を操作している。我もステータス画面を開いておくと、パーティ申請メッセージが届いた。パーティ申請メッセージは『承認』と『キャンセル』が選べる。迷わず承認をした。



「では、行きましょう!」



 マリアさんが張り切っている。人を助けることが好きな人のようだ。我も切羽詰まっているのだけど助けてくれないかな? いや、人間限定で魔族は助けてくれないか。などと考えていたら討伐場所に着いた。


 場所は町壁を出た近くの森。依頼書によると、最近町壁の外の畑の農作物が、イノシシに荒らされて困っているとのこと。早速討伐を開始する。

 いや、これ討伐といるより狩りじゃないか? と思っても何も言わないことにした。


 森の中に入って行き、そっと進む。討伐対象のイノシシにバレて逃げられないようにである。

 しばらくするとマリアさんが手で我を抑止する。我は状況を察して唾を飲みこむ。視界にイノシシが見えた。


 マリアさんが小声で詠唱を開始する。詠唱が完了して魔法を発動すると、金色に光り輝く鎖状のものが、イノシシを拘束した。



「捕まえました。それじゃあ、マオさんとどめをよろしくお願いします」



 ギュンと音がしそうなほどに、顔をマリアさんの方に動かした。



(え? 我が殺すの? なんか可哀そうなんだけど。我は魔王だけど平和主義なので、生き物をなるべく殺さないようにしているのだけど……)



 だが、我の活躍に期待で目を輝かせているマリアさんの表情が眩しい。やらざる負えない状況になってしまっている。


 アダマンタイトの剣を鞘から抜いて、せめて苦しまないようにと、首元に狙いを定めて、両眼を強く閉じて剣を振り下した。


 その直後、嫌な感覚がした。肉を切り裂く感覚である。目を開けると、無残なイノシシの死体が目の前にある。思わず腰を抜かした。自分でやったとはいえ何て恐ろしいことを……。


 そんなことを思っていた時期もありました。

 その後の我は、段々と手慣れた手つきで討伐していった。



「さて、解体して素材を取りましょうか」

「うん? 解体して素材を取る? そのまま持っていっては駄目なのですか?」

「ギルドにそのまま渡すと、解体手数料がかかってしまいます。解体に人手が必要になってしまいます」

「そうなんですね」



 マリアさんの説明で納得はしたよ。うん。ただし問題がある。解体をするって言うことはグロイ物を見る羽目になるんだよね? 我はそんな耐性ないんだが?



「あ、あの解体用のナイフを持っていないので、僕にはできないかな」



 言い訳をして逃れようとした。まあ実際にナイフを持っていないのだが。いつも通り、嫌なイベントが発生する。



「あ、それじゃあ私の予備のナイフをお貸ししますわ」

「……ありがとうございます」



 ありがたくないよ! やっぱりこうなるのか! 心の中で涙した。



「マオさんは解体したことあります? あ、冒険者になる前とかに個人的に」

「……い、いえ、ないですね。これが初めてです」

「じゃあ、何匹も狩りましたから、私が最初に見本を見せますね」



 そういうとマリアさんはナイフを手際よくザシュッザシュッとイノシシの身体を捌いていく。初めて見たので吐きそうである。



「ふぅ~、こんな感じですね」



 マリアさんは「いい仕事をした」という空気を醸し出しながら、額の汗を腕で拭った。

 イノシシは、肉に皮、それと牙、他はそのまま土に還す物に分けた。



「細かく分けていますけど、何でここまで解体をするんです?」

「ああ、討伐の依頼は、証に牙を提出するんですよ。あとのお肉と皮はアイテムボックスに保管しておいて、お肉と皮の採集の依頼があったら、すぐに依頼が達成出来ますからね」

「なるほど」



 冒険者というのも、なかなか頭を使うもんだ。てっきり脳筋の集まりかと思っていたが、そうでもないらしい。まあ、マリアさんだからそう思えるのかもしれない。


 その後も解体をして、気づいたらもう夕方であった。

いつも読んで頂きありがとうございます。


応援や感想をお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく拝読させていただいています。 もうアダマンタイト製の武器防具で良い気がします(笑) 装備が凄くので勇者と間違われてないか心配するぐらい絡まれない(笑) アイテムボックスは、ギルドが個…
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