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ビビり魔王、冒険者になる  作者: 藤谷 葵
初稿(第一章)

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第三話

 プライドを打ち砕かれた感じをしつつ、Eランク用の依頼掲示板へと足を運ぶ。



(魔王の我が、人間風情何かに頭を下げるとは……)



 魔王城での生活を思い出す。皆は我を、崇め、ちやほやと甘やかしてくれる。まあ、時には我が叱ったりしたら、威圧感を放つが、基本的には従順ではある。


 やるせない思いをしながら、掲示板に貼られている依頼書に目を向ける。Eランクは、素材の採集依頼だけのようだ。



(ふっ、我には簡単な依頼だな)



 そう思いつつ、何気に隣にあったDランクの依頼掲示板に目を向ける。すると、『魔物討伐』や『魔族討伐』の依頼書があった。それを見た途端に、我は気づいた。



(あれ? ここに長々といるのはヤバくね? 我が魔王とバレたら殺される!)



 青ざめつつ、Eランクの素材採集依頼書を一枚剥ぎ取り、急ぎ足で冒険者ギルドの外に出た。


 路地裏に行き、「ぷはっ!」と止めていた息を吐いた。緊張のあまり、呼吸を忘れていた。


 あまり目立たないようにして、尚且つ、できるだけ勇者達に近い立場になって、情報を集めるか、と思いつつ、掲示板から剥がした素材採集の依頼書を見た。

 内容は『薬草採集百個』と書いてあった。

 

 探知スキルを使い、薬草の場所を見つけた。その場所に向かっていったが、辿り着く頃には既に疲れていた。



(魔王の我が、このくらいで疲れるか?)



 近くにあった手頃な切り株に腰を掛けて休む。ついでにステータス画面を開き、確認をする。



「ん~?」



 今まで、偽装スキルを持っていたことを知っていたが、使ったことはない。引き籠りに使うような機会がなかったからである。

 偽装したステータスの数字を、我だけが正しい数値を見れるように、指でなぞってみる。だが、数値は変わらない。慌ててゴシゴシゴシゴシと画面を擦る。

 数字が変わらないので、目の方を擦ってみたが、やはり同じままである。



(あれ? 数字が偽装した値で固定されてる?)



 どうやら、『完璧な偽装』らしい。つまり、実体の肉体も弱く偽装されたと……。



「そんなことあるか!」



 叫んだものの、その言葉は木霊するだけで、虚しさが込み上げてきた。


 しばらくの間、切り株の上で頭を抱え、悶絶していた。

 すると、どこからともなく、遠吠えが聞こえてきた。



(ま、魔物か! 今のステータスだと勝てない! 鳴き声からして、遠くにいるはず。探知スキルで、魔物の位置と採集する薬草を確認しながら依頼をこなさねば!)



 急いで、薬草をアイテムボックスに突っ込んだ。

 探知スキルのおかげで、直ぐに百個集まり、文字通り逃げ帰った。


 安全地帯……と言えるかどうかわからないが、街に辿り着いた。



「ふぅ~」



 ほっと一息つくと、足ががくがくと震えてきた。弱体化状態で魔物と出会った恐怖心と、後は筋肉疲労。


 震える足を抑えながら、冒険者ギルドへと戻った。


 受付の女性に、依頼内容の薬草百個を渡すために、アイテムボックスの中から、薬草と依頼書を受付カウンターの上に置いた。無言で……。



「マオさん、お疲れ様です。手際がいいですね。今までも薬草取りの経験があるのですか?」



 そう言われて思い出す。お小遣い欲しさで、魔王城の中庭に生えている草むしりしたことを。



(部下にも良く褒められていたなぁ~。「仕事して偉い」「草むしり上手です」って)



 褒められてほくほく顔になり、こくこくと頷いた。



「では、採集物の確認をしますね」



 受付の女性が確認を始めた。我は、緊張でそのまま棒立ちで待っていた。すると、受付の女性が気づき、気を利かせてくれた。



「マオさん。採集物の確認には、少し時間がかかりますから、その辺で休んでいて下さい」

(少し時間がかかるのか……)



 冒険者ギルド内を見回す。そして、本来の目的を思い出した。



(勇者の情報を集めないと!)



 冒険者ギルド内を改めてみると、結構広くて、テーブルが複数人座れるようになっている。

 チームを組んだ冒険者達が、依頼の話し合いをできるようになっているようだ。


 我の様子を見た受付の女性は、側に立ち止まって居られて仕事がやりづらいのか、笑顔を引き攣らせ、再び声をかけてきた。



「まだまだお時間かかりますので、席についてお飲み物でも、お食事でも、ご自由にどうぞ。飲食物や薬草などのアイテムでしたらあちらで販売しております」



 丁寧に説明をしてくれた。まあ、目の前で、ぼーっとされていても、仕事がやりづらいのか。

 察した我は、こくこくと頷き、販売場所へと足を運んだ。すると大事なことに気づいた。



(あれ? 我、お金持ってきたか?)



 慌てて、ステータス画面を確認する。

 ステータス画面に表示はされているが、お金は他人には見えず、自分だけ見えるようになっている。

 これは、我だけではなく他の者も同様である。ステータス画面を見ることでお金をたくさん持っているのが分かってしまえば、その人間は誰かに襲われる可能性がある。


 天敵とも思える神が作ったシステムに、「よくできているもんだ」と感心してしまう。


 何はともあれ、お金を確認するが、少ししかなかった。

 気まぐれで部下の手伝いをした時に、お礼に貰ったお小遣い程度の金額だ。


 一番安いジュースを販売所で買って、どこに座るか席を探した。

 『勇者の情報を探る為』に、あの賑やかそうなチームらしき者達がいる側に座ろうと、そのチームのいる席に背を向けるように座った。


 そのチームの者達は、ご機嫌らしく、声が大きめである。



「いや~、今日の魔族討伐は楽勝だったな~、ガーゴイル系が二匹いて飛ぶから、攻撃は魔法や弓矢だけど、俺はみんなを守るだけでいいんだから簡単だな」



 若い男性の声の後に、若い女性の声が続く。



「貴方はほとんど棒立ちで暇そうだったけど、こっちは魔法を使うのが大変なんだからね!」



 女性はため息交じりの声を出した。

 我はその会話を聞いて、目を見開き驚愕する。



(ガーゴイル系!? 我の部下じゃないか!?)



 驚きと恐怖が襲ってきた。手がガタガタと震え、持っていたジュースがちゃぽちゃぽと零れた。


 すると、突然誰かが話しかけてきた。



「具合でも悪いのですか? 大丈夫です?」



 ビクッと驚きつつ、声のする方を見ると、女性が立っていた。まじまじ見ると、いかにも僧侶という格好をしていた。



「あっ! はい。あっ! いえ。大丈夫です!」



 テンパりました。

 そんな我に、女性の僧侶は、優しく声をかけてくれた。



「顔色も悪いですし、具合が悪かったら遠慮なく言って下さいね? まだ未熟な僧侶ですが、お役に立てるかもしれませんし」



 その後、我がビビり気味な態度を取ってしまったので、心を読まれた。



「あっ! 突然、知らない人に声をかけられたら、びっくりしますよね。 私の名前はマリアです。教会での仕事もやりがいがありましたが、最前線で戦っている人たちの助けになりたくて、最近、冒険者に登録しました」



 そう挨拶してきたので、我も挨拶を返しておく。



「我……い、いや、僕はマオです。今日、冒険者に登録したばかりです」



 マリアさんは、自分のアイテムボックスから、ハンカチを取り出して、笑顔で我の服にかかったジュースを拭いてくれた。その後、そのハンカチで、机にも零れたジュースを拭いてくれた。マリアさんに母性を感じて、思わず「ママ~」と甘えたくなったが、もちろん言葉には出さなかった。


 そんなやり取りをしていたら、受付の女性に呼ばれた。



「マオさん、確認が終わりました。受付に来て下さい」



 呼ばれて動揺する。受付に行かなきゃだし、マリアさんと話している途中である。コミュ障の我には、どうしていいのか判断できない。


 狼狽えていると、「マオさん、呼んでいるみたいですよ?」とマリアさんが言ってくれたので、その言葉に従うことにする。



「マ、マリアさん。ありがとうございました」



 会釈をしてお礼を言った。そして、受付に行くと、受付の女性が笑顔で対応する。



「依頼完了です。こちらが依頼報酬になります。初めての依頼達成、ご苦労様でした」



 銅貨を五枚ほど、我のステータス画面に入金された。薬草採集の依頼で、銅貨五枚が安いのか高いのか分からなかった。だが、部下の草むしりを手伝った時よりも多い。

 一瞬、ほくほく顔になったものの、先ほどの冒険者たちのことを思い出す。


 我の部下を討伐したパーティーから、早く離れたかったので、早足で冒険者ギルドの外へ出た。

 きょろきょろと周りを警戒して、近くの路地裏に入って行った。


 そして、転移魔法で、我の城に戻った。


 自分の部屋に戻ると、スキルで服を部屋着に着替えた。そして、豪華で大きなベッドに飛び込むように寝転んだ。



「あ~、体力的にも疲れたけど、それ以上に精神的に疲れた~」



 そうぼやきながら、少し休憩してから、考えた。



(魔王と気づかれて戦うことになると、殺されそうだから、強い武器でも持って行こう。明日になると持って行くのを忘れそうだから、今のうちに用意しておくか……)



 億劫だが、ベッドから立ち上がり、転移魔法で我が城の宝庫に移動した。


 宝庫には、様々な伝説級の装備が保管されている。我が使うためのものと、一部の側近が使うものである。


 自分用の装備を眺めた。



(う~ん? そこら辺の普通に冒険者っぽいやつでも、我の部下を倒してしまうなら、オリハルコン製のバスターソードと、オリハルコン製の軽鎧でも持っておくべきか?)



 装備するものを決めて、それをアイテムボックスに入れた。そしてまた、自分の部屋に転移して、今日はもう疲れたから寝ようと、ベッドに飛び込んで、そのまま眠りについた。


 翌朝、清々しい目覚めであった。昨日の労働で、丁度良い疲れのせいか熟睡できたのであろう。そして、昨日の出来事のメンタルダメージもマシになった。



(さて、今日も冒険者ギルドに行くか。なるべく毎日行って、常連になれば情報も集めやすいだろう。だが、長いはしたくないが……)



 そう考えながら食事を終えて、冒険者ギルドに行く準備をした。

いつも読んで頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
いつも楽しく拝読させていただいています。 偽装した値で固定されるならMAXまで上げられるなら 最強ですね。 最弱魔王設定?が面白いですね(笑) (部下にも良く褒められていたなぁ~。「仕事して偉い…
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