第二話
とうとう我が城、魔王城が見えてきた。
長い道のりだった。いや、そうでもないかな? もっと長い道のりでもよかった気がする。なんなら、永遠に辿り着かないくらいに。
脳内で、走馬灯が流れていく。
仲間との冒険の日々。蒲焼のこと。蒲焼の香ばしかったこと。蒲焼の焼き色の良さ。そして、蒲焼のほろほろとした柔らかさ。
勇者に殺されて、蒲焼が食べれなくなるかと思うと、悲しくなってきた。
流石に拠点が近い。幹部たちも勇者が来たことに気づいたら、勇者を倒しにこちらに向かってくるだろう。
そんなことを考えていたら、早速、翼を羽ばたかせて一匹の魔族が飛んできた。我は慌てて枯れ木に隠れて、勇者にも魔族にもバレないように覗き見をする。
その魔族は、地面に降りて口を開く。
「お前らが勇者か! 俺の名はギアラ! 俺は四天王で最も最弱!」
……なんでお前が自分で『最弱』って言うんだよ! そこはお前が倒された後に、他の三人がお前のことを、「やつは四天王の中で最も最弱」っていう所だろうが!
それと、魔王城の防衛の使命はどうした? なんで来たの?
相変わらずの報連相のダメさに嘆く。これは、我が悪いのだろうかと思えてきてしまう。
そんなことを考えている中、戦闘が始まろうとしている。
アランは剣を鞘から引き抜く。それを見たギアラも身構える。
「あれ?」
ギアラがこれから戦闘が始まるにしては、拍子抜けな言葉を発した。なんだ?
「あれあれあれあれ? この見知った魔力は……」
ドキリと心臓の鼓動が跳ね上がる。まさか……。
過去最高に冷や汗が出てきた。もう氷魔法で絶対零度まで体温が下げられたかのように。
「そこにいらっしゃるのは、魔王様じゃないですか! なんで、そんな木の陰に隠れているのですか? あっ! 俺が勇者と戦っている時、隙をついて勇者を殺すためですね」
(ぎゃあぁぁぁぁ! おまえ、隠れている我に気づくなよ! しかも余計なことを言いやがって!)
仮にギアラが言ったように、勇者の隙をつくとしても、その作戦を勇者の目の前で口走るってどうなの? 謀反? 君は謀反でも起こしているの? 全責任を我に押し付けて、自分だけ助かろうって魂胆なの?
ギアラの暴走は止まらない。
「魔王様、ここで勇者を挟み撃ちにしましょう!」
驚いていた勇者達が、辺りをきょろきょろと見回す。だが、勇者たちはまだ気づいていないようだ。このままやり過ごすか? いや、無理だな。ギアラが余計なことを言い過ぎた。
観念して、木の陰から頭をかきながら出て行く。
「ど……どうも、冒険者マオ改め、魔王ビビマオールです……」
勇者たちは目を丸くして驚いている。
「マオさん……魔王ビビマオールだったのですか?」
マリアさんは口元を両手で覆い、わなわなと震えている。
呆然とする勇者一行。その隙をギアラは見逃さなかった。
「勇者の命、貰った!」
ギアラが勇者めがけて攻撃を繰り出す。
勇者は衝撃的な出来事が起きたことで、身体が固まっていたのか、反応できていない。このままでは、勇者はやられるであろう。
その間に入り込み、ギアラの攻撃から身体を貼って勇者を守った。
ギアラが握っていた剣から血が滴り落ちる。
「……魔王がどうして……」
勇者が口にする。その問いに我は答える。
「我は殺伐とした世界は嫌だ! 我は平和主義だ! 人間と魔族が共存する道があるのではないかと思っている! アランさん、マリアさん、オルガさん、ソフィアさん、メリンダさん。あなたたちと旅したことが楽しかったです。あなたたちと仲良くしたいんです! もちろん、我の部下も家族同然です! 和解の話し合いをしませんか!?」
顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら、命が惜しくて……いや、平和の為に懇願した。
それを見た勇者たちは顔を見合わせている。
ギアラは何が起きたのか分からないようで、呆然としている。
勇者は握りしめていた剣を鞘に戻し、言葉を発した。
「マオさん……わかりました。和解のための話し合いをしましょう」
マリアさんが、我の肩に手を置いた。そこから温もりが伝わってきた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
今回も短い。第七章はボリュームがなさ過ぎて、一話だけにまとめてもいい気がするけど、それだとちょっと格好がつかない。悩ましいです。
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