第一話
ここは闇に包まれし魔王城。
窓の外で、稲妻が轟いている。
我の名は、魔王ビビマオール。この世界の魔王である。
だが、我のステータスがおかしい。バグっているのか?
鑑定スキルで自分のステータスをまじまじと眺める。
称号は『魔王』となっている。だが、スキルが魔王の物とは、とても思えない。いや、仮に魔王でなく、下級魔族だとしてもだ。
『スキル名:勇者みたいな感じ』
『効果:魔物や魔族に対して物理攻撃力や物理防御力、魔法攻撃力に魔法耐性、状態異常耐性が上昇する』
いや、人間と戦う場合は? 誰もツッコミを入れる者がいないので、自分でツッコんでおく。
そんなことを日々、ベッドの上でごろごろしつつ、悶々と考えている。すると、突然、誰かが我の部屋のドアを、乱暴に開けた。そして、開口一番に、驚くべきことを言い出した。
「魔王ビビマオール様! 勇者を名乗るべきものが現れました!」
その闖入者は大声で叫んだ。
我はドアが勢いよく開いた音と、訪問者の叫び声にビクッ! とした。驚きで硬直した身体をなんとか声の主の方に向けると、我の部下であった。
平静を装いつつ「落ち着け、どういうことか詳しく話せ」と声をかける。
内心では、落ち着かずに心臓をバクバクさせているのは、我の方だが……。
「人間達が、召喚魔法で異世界人を勇者として召喚したようです! そして、魔王ビビマオール様を討伐するらしいです!」
それを聞いた我は、くるりと体の向きを変えて、部下に背を向けた。顔からは、脂汗が垂れまくっている。部下に動揺しまくっている姿を見せるわけにはいかない。
「……そうか、わかった。直ちにこの城の警備レベルを最大限にしろ」
平静を装いながら、部下にそう伝えた。
「はっ! かしこまりました。それと閃いたことがあるのですが、ビビマオール様が自ら出向いて、勇者が強くなる前に倒してしまっては如何でしょうか?」
こいつ、とんでもないことを言い出した。だが、震えそうな声を抑える。
「いや、わざわざ我が出るまでもない。そなた達なら、勇者達を倒せると信じている。それと勇者が現れたのならば、今後、この部屋は誰であろうが立ち入りを禁止とする。勇者達が、何らかの方法で、魔族に偽装して侵入する可能性もある」
要するに、『怖いから引き籠ります』ってことなんだが、部下は納得してくれた。
「はっ! かしこまりました。他の者達にも伝えておきます。我々が必ず勇者たちを倒して、首をビビマオール様に差し出して見せますよ! 期待してお待ち下さい!」
そう言い残して、我の部屋を出て行った。
(いや、首はいらんから! 平穏が欲しいんだが!)
部下が部屋を出て扉を閉めた後に、冷や汗を流しながら青ざめていた。
(我は魔王になりたかったわけではなく、称号のせいで勝手に魔王になってただけだし、人間を襲ってるのは血気盛んな部下達で、我がそれとなく人間を殺さないように言ってもいつも違う解釈されるだけだし……)
当然、人間側の立場からすると、事実を述べても言い訳にしか聞こえないであろう。
どうしようと部屋を熊のようにうろうろと歩きながら考えた。
(人間どもに紛れるか? 冒険者の振りして勇者達の行動を探るか?)
天才的な発想に、我は自画自賛をした。
早速、変身スキルを使って、人間に擬態してみる。そして、部屋にある鏡を見て悩んだ。
(この姿なら、人間の若者の男ぐらいに見えるか?)
人間の姿は、部下を通して魔法水晶玉に映ったのを見た程度しかない。そもそも城の中に引き籠りなので、魔族や魔物もろくに知らなかったりする。
まあ、変身スキルと言っても、元々の姿が、禍々しい角と翼、それに尻尾だけで、後は普通の人間と変わらない姿である。
とりあえず、我は勇者が召喚された城の近くに、転移魔法を使用して移動した。
読んで頂きありがとうございます。
第0稿を読んで下さった方には、二度手間となりますが、初稿版として、新たに投稿させて頂きます。
……前のは作者が納得いく形になっていなかったのですよ……。
公募に出す予定の作品なので、がんがん感想や応援を頂けると嬉しいです。




