第四話
しばらく歩くと、馬車が数台、遠目に見える。
「ん~? なんだろう? あんなところで馬車が停まっている。商隊の馬車が休憩でもしているのかな?」
「とりあえず、馬車の方に向かってみよう。空いている場所があれば、乗せて貰えるかもしれない」
勇者がそう言うと、我に視線を向ける。その視線に釣られて、他のパーティメンバーも視線を我に向ける。
我はと言うと、ぜぇ~ぜぇ~と激しく呼吸を整えようとしている真っ最中である。
全員が視線を馬車に戻すと、再び歩き始めた。
「待て! 何か様子がおかしくないか?」
勇者は突然、手を横に伸ばし、メンバーを制止させる。
「メリンダ。ちょっと確認してくれ」
メリンダは双眼鏡を手にして覗き込む。
「馬車が盗賊らしき者達に襲われているよ!」
「助けるぞ!」
全員が、馬車へと向かい走り出す。いや、我以外。
我は体力が底を尽きていて走れない。
仕方がないので、歩いていく。
やっと追い付き、状況を確認する。
すると、メリンダが言っていたように、盗賊、つまり人間である。
(人間が相手なら戦える! いや、我は平和主義だから殺しはしないけどね)
そう思った我は、マリアさんにカッコいいところを見せようと、アダマンタイト製の剣をすらりと抜く。
そこへ勇者からの指示が出る。
「マオさんは、馬車と乗客を守って下さい!」
「あ、はい」
我は、馬車と乗客を背にし、盗賊を威嚇するように剣を向ける。だが、勇者達も戦いながらこちらに来ないようにしているので、我は何もすることがない。
しばらくすると、盗賊は武器を投げ捨て、降参した。
こうして、我の出番はなくなった。
盗賊は捕縛され、ロープでぐるぐる巻きになっている。
(下っ端と遭遇した時もこんな感じだったらよかったのにな~)
そんな顔バレ防止の願望を思っていると、勇者が交渉している。
助けた相手を見ると、やはり商隊らしい。
「助けて頂きありがとうございます」
「いや、勇者として当然のことをしたまでです。それよりも馬車に空きがあれば、次の街まで乗せて行ってもらえると助かるのですが」
「ええ、いいですとも。むしろ大歓迎ですよ。勇者様に護衛をして頂けるなんて。仕入れたものを売り払った後ですから、馬車は空いてますよ!」
「それはよかった。では、よろしくお願いします」
交渉が成立したようだ。他のメンバーも「よろしくお願いします」と喜んでお願いをしている。
我も小声で「よろしくお願いします」と呟くが、誰の耳にも届かなかった。
早速、我々は馬車に乗り込もうとする。我は戦闘をしていなかったので、遠慮気味に最後に乗り込もうとする。
すると、商隊のリーダーらしき人物が、指示をしてくる。
「この馬車には、五人しか乗れないよ。だから、悪いけど一人はあっちの馬車に乗ってくれ」
指差された馬車を見つめる。
(仕方がない。魔王が人間の指示に従うのも癪だが、我も大人だから素直に応じますか)
一人寂しく馬車に向かい、後ろから乗り込もうとする。
すると、多数の殺気を感じる。
集まる視線の先に目をやると、先ほど勇者達が捕縛した盗賊たちが、鋭く目を光らせ、我を睨みつける。
(ひいぃぃぃ~! 我はお前らに何もしてないよ~)
我は前世で何か悪行でも働きましたか? と、存在するかも分からない神に、心の中で問いただした。
いつも読んで頂きありがとうございます。
感想や応援をお待ちしております。




