第三話
東にある山から、太陽が昇り始めた。
無事に朝を迎えたことに、ほっとした。
(ふぅ~、昨日、下っ端と出会ったときは、何かのフラグかと思っていたが、何も起きなくてよかった)
みんなで荷物をまとめて、再び、『魔王ビビマオールを討伐に行く、魔王ビビマオール』というわけわからない物語が始まる。
馬車に揺られるが、一応慣れたようだ。
『乗り物酔い耐性スキル』が強化されたのだろうか。馬車に乗っていても酔うことはなくなった。まあ、お尻は痛いが。
しばらく進むと、オルガが大声で叫んだ。
「行く手に魔族がいるぞ!」
その声に、我以外が戦闘準備を整える。我はと言うと、授業参観に来た両親を、恥ずかしく感じるかのように、その魔族を確認する。
(昨日の下っ端どもではないか! あいつら、まだこんなところで何をやっているんだ!)
昨夜、早く帰るように口を酸っぱくするほど言ったのに。下っ端の心配ではなく、我の保身のためであるが。
準備ができると、全員が馬車から飛び降りた。
我だけが、馬車の中で事の成り行きを見守っている。
下っ端たちが、こちらに気づき、大声を張り上げる。
「おいおい、あれって勇者じゃね~か?」
「おお! 間違いない! 指名手配所通りだ!」
「よし! 奴らを倒して、ビビマオール様に首を差し出そう」
そんなことを大声で叫ぶ馬鹿な下っ端ども。というか、我の名前を出すな!
チラ見をしていたら、下っ端の一人にバレた。
「あれ? ビビマオール様じゃ……」
そこまで口にした下っ端に、我は慌てて馬車から飛びだし抱き着いた。両手で口を押える。
その光景を見た勇者たちは、我が下っ端と転がりつつも戦っているかのように見えたのか、我を褒め称える。
「おお! マオさんに一番を取られた。俺たちも負けてられないな!」
そう言うと勇者一行は「うおおおお!」と声を張り上げ、突撃してくる。
「ま、魔王様! これはどういうことですか!?」
我が組み伏せた下っ端以外が、この状況を飲み込めないのか。狼狽えている。うん、安心しろ。我も未だに飲み込めていないから。
その下っ端の言葉は、勇者たちの雄たけびで搔き消された。
戦闘は勇者パーティの圧勝で終わり、現在、我が抱き着いた下っ端だけが残っている。勇者パーティに囲まれた状態で、正座をしている。
「さあ、魔王ビビマオールの情報を話してもらうか」
勇者の発するその言葉に、下っ端は我の方をちらっと見る。
我は下っ端が変なことを口走らないように、目配せをする。
だが、その意味を違う解釈したらしい。
「え、えっと……ビビマオール様はそこに……」
そこまで口にした時、我は衝動的に、下っ端にとどめを刺した。
「マオさん! なんで情報を引き出す前に殺したのですか!?」
当然、詰め寄られる。我は必死に言い訳を考える。
「(我のことをばらすのが)許せなかったものですから……」
勇者が我の肩をポンと叩く。
「そっか……マオさんもつらいことがあったんだね。ごめんな。余計な詮索はしないよ」
何かを勘違いしたらしいが、言い訳は成功のようだ。
付け加えておくと、つらいことは今現在、進行中である。
「ここから先、どうするの~?」
ソフィアが駄々を捏ね気味に聞いてきた。
その理由は、下っ端たちと戦闘をしていた時に、敵……いや、相手というべきか? その攻撃に巻き込まれ、馬車が壊れてしまった。
全壊したわけではないが、走らせるのは無理であろう。
勇者は顎に手をあて考える。
「仕方がない。ここから次の街までは、歩いて行こう」
その言葉に、誰も愚痴をこぼさずに徒歩での移動準備をしている。
(いやいや! 徒歩で? この弱体化しているステータスで!?)
我だけが心の中で愚痴った。
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