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練習帳  作者: 薄雪草
9/13

夜、眠る

とりとめのない夢を詩のようにして。


夜、眠る。


意識はまぶたの裏側にありながら、空に向かって溶けていく。

手の先から透けて、光る輪郭になって。

さらさらと崩れていく。

砂みたいに。


意識を研ぎ澄ますと、夜の音が聴こえてくる。


遠くを電車が通る音。

隣家の生活の音。

葉の上を風が流れていく時の微かな音。



深夜、都市の住人が寝静まると、夜空を鯨が泳ぐ。

とても大きな鯨だから雲と間違われるかもしれない。暗闇の色をした鯨だ。

鯨は黒い瞳を光らせながら、夜を泳いでいく。とても、ゆっくりと。


夜の扉は白い流木でできているという。

開けると眠りの海が、毎日いつも変わらずに、静かに凪いでいる。それは果てのない海だから。

繰り返す波音は、心音と同じ。

強くなり、弱くなって。再び強くなり、弱くなる。



夜の渚を旅していけば、右も左も星の砂だ。サクサクと、音を立てて歩いていこう。遠くに見える椰子の木のところまで。


雲に隠された月を探して青い浜辺を行く。

南国の花咲く木の下に。

降り積もるのは白い夢。


そうして水平線の向こうから呼んでいるのは、沈んだ月の幻だ。海に映る影が暗くなったら星の時間になって、そうなったら数えきれない無名の五等星まで、闇の夜の歌を歌ってくれる。



青い時間は影と遊ぼう。風の吹く木立を抜けて。


もう時間はないのかもしれない。

楽しく遊ぼう。

目いっぱい遊ぼう。


夜明けが来る前におやすみの挨拶をしたら、眠りの底へ。

降りていく。









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