星を売る人
「星、買いませんか?」
そんな声がした。
女性の、綺麗な声だった。
どんな人だろうと思って声のした方を見ると、ボブの女性が立っていた。
ベージュのコートを着ていて、どこか首を傾げているような…鳩みたいな人だなと思った。
「どんな星がありますか?」
思わず聞いてみた。
その人はとても嬉しそうに、いろいろ教えてくれた。
「どんな星もありますよ」
「白いのも、青いものも」
白い星はいちばん定番の星で、青いのは温度が高いのだという。
温度は何℃だったか…あまり身近に思えない数字だったから忘れてしまった。
「珍しい翡翠色から、温かな黄色、オレンジ色も。
お客様のお好みをお伺いしましたら、いくつかおススメをご紹介いたしますよ。
いかがされますか?」
せっかくだから、青いのと翡翠色のを見てみたいと思い、希望を伝えてみた。
「承りました」
セールスの女性はそう言って、
おもむろにカバンからパンフレットを出してきた。
ふむふむと話を聞いていく。契約の話も。
意外と簡単に買えるんだと感心した。
いろいろあって、水色の星を買った。
とはいえ、手元にあるのは証書一枚だ。
その星は今も、夜空に輝いている。
自分の星を持つというのは、なかなか、結構いい気分になるもので。
今夜は、素敵な夜になりそうだと思った。