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春を待つ気持ち
朝の空気が好きだった。
特に二月の終わりの、ときどき春めいた湿った風が吹く頃の、早朝の空気が。
夜明け前に起き出して、扉を開けて、外に郵便物を取りに行く。
そうしたときに視界に入る、朝靄に白く煙るような、朝の空気が好きだ。
朝食のために、お湯を沸かす。
それから、熱いお茶か紅茶を淹れる。
湯気の立つカップをテーブルに置く頃には、トーストも焼けている。
そのままでも、好きなジャムを塗ってもいい。
窓の外から朝日が昇っていくのを見ていると、今日が始まるという、はりきったような気持ちになって、新しいこと、試してみようか、あの意地悪な人には今日はこう話しかけてみようか、などと考える。
上着を来て、ショルダーバッグを肩からかけて、そうしたらいよいよ、出立のとき。
ここを出て、二度と戻らないというような、覚悟を決めて、靴ひもをキュキュっと結んだら
さあ、出かけよう