働く事の闇。
[第3話] 働く事の闇。
私は大企業で働くOL。
名前は乾瑠花。
入社3年目になる私は大企業であるがゆえ、色んな顔を見てきた。
正直、事務作業ばかりであったが、現場での作業も多々あり、色んな声を耳にしてきた。
そんな私に与えられた任務は会社に潜む闇を暴いてみんなが働きやすいようにすること。
いつも疑問に思っていた。
机の上で、データのやりとりをしている人は給料が良い。
現場で額に汗を流し駆け回る人は給料が低い。
それって、おかしくない?
身を削って動いてる分にしては割に合わない。
なぜ給料が違うかの理由には
需要と供給に当てはまるが、需要を目先だけに向けると
その仕事の先にお客さんがどれだけいるかによって変わる。
顧客の管理数を抱えるほど給料は変わるという仕組みだ。
でも、それって一つの一つ仕事が最終的に顧客につながるから、会社全体でワンチームとして扱われないのかな?
現場では給料に見合わない作業や休日出勤、残業に対して不満を口にする人はたくさんいる。
この不平等はどうしたらいいの?
給料や雇用の立場というピラミッドは日本独自のシステムらしい。
あるヨーロッパの雇用の仕組みは、社長以外は普通の社員。派遣やバイトなんて形は無い。役職は存在せず、実力主義で、そのまま給料に反映されるシステムだ。
そんな社会もあるんだと思いながらも、何とか生き抜いている私。だから私なりに社会の変革に一役かえるんじゃないかと思っている毎日。
瑠花の任務は会社に潜む闇を暴くこと。
ただ暴くだけでは何も解決しない。
しっかりと声を上げるのだ。
みんなが平等になるシステムか。
現実には無理だが、見直すことはできるはず。
無理に休日出勤させたり残業させたり、体の負担を考えない体勢は従業員にとって辛いものである。
私は本部の指令が入ると、任務のため会社の重役に接近することにした。そのチャンスは会社の記念パーティーだ。
参加できるか心配していたが、私は運良く総務を担っていたので参加できた。
パーティーの当日、その席では忖度の嵐だ。
お酌をしている最中に思い切って、提案してみた。
現場では給料の割に休日出勤が多くて身が持たないと声が出ています。給料よりも休みがほしいと皆さん嘆いています。
一般の社員に言われるほど俺は甘く見られたもんだ。
と簡単にあしらわれた。
ここは話題を変えなくては。
重役さんは確か犬を何匹か飼っていらっしゃるとお聞きしましたが、犬がお好きなんですね。
そうだよ。小さい頃から好きで今も大事に家の中で一緒に暮らしているよ。
ここでピンときた!
犬が好きなら潜入できる。
何か会社に関する情報が得られるかもしれない。
重役なら何か握っていてもおかしくない。
数日後、瑠花は犬に変身。
それは決行された。
迷い犬としてウロウロしていると計画通り重役に見事拾われた。
あれよと言う間に重役の自宅に潜入できた。
うちで働く下っ端は上の言うことを聞いてればいいんだよ。
文句があれば辞めればいい。
仕事があるだけ有り難く思え。
まぁ、酷い言葉の雨あられ...。
しかし、本音もポロリ...。
どうせ俺の力じゃ会社は変わらないよ。
変えたきゃとっくにそうしているさ。
と、本音では何とか改善したいと思っているらしく、その案が浮かばずに時間が過ぎてしまっているみたいだった。
犬の前では素直になれるのか?
あなた、犬の前だといつもブツブツ何かを言っているわね。
この会話はしっかりと瑠花の首輪で録音されている。
そう、お互い対話もせずに時間が過ぎた事で、雇用関係に溝が出来ていたようだ。
瑠花は重役が酒で眠くなった隙に
バレずに家から出た。
気付いたら人間に戻っていて裸になっているのを忘れていた。
怪しまれないようにターミネーターみたいに一回腰を下ろしてみた。って夜だし周りには誰もいないじゃん。誰かツッコんでよ。
なんてバカやっていたら、ロングコートが風に飛ばされてきて、運良く服を拝借する事ができた。
数日後、会社の定例会議があった。そこには色んな重役が来るとあって、あの音声を流すには絶好のタイミングだ。
最後の質疑応答の時に瑠花は音声を流した。
何だこれは?一体誰が?
まぁ聞いてみようじゃないか。
これは従業員は知っているのかね?
いや、全く存じてはいません。
ならいい機会だ。
全従業員を集めて対話する時間を設けようじゃないか。
そして、重役達と従業員が一同に集まった。
従業員はそれぞれ本音で声を上げた。
改善されないならストライキするか身体的ストレスで労働組合に掛け合うしかないとカマを掛けるシーンも見られた。
お互いがバランス良く関係を築くには難しいかもしれないが寄り添う事はできるはず。
これがきっかけとなり、休日出勤にならないよう作業効率を見直すようになった。
時代はもう変革期にある。
会社のために自分が働くんじゃない。
自分のために会社で働く。
ライフワークバランスが叫ばれている現代。
たった一度の人生、時間は限られている。自分を大切にしなくて、いつ大切にするんだ。
と任務を無事に終えた瑠花はそんな思いに胸が熱くなった。