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92.水の章・前

 まだ、夜明け前、わずかに空が明るくなり始めた頃、将小華はひとまず狼人族の聖地ミツミネにある奥の院で、狼人族のジミヘンと正木アキラ、及び神義官長官コーギー犬族のノン、秘書の天狐族のナナ子に自分が逃げた事情とアキラを頼りここまできた経緯を話した。


 一通り話をした後、小華はアキラから提案された言葉を使う。

 「亡命したいアル。」


 小華は以前、東昇帝国にアキラのゼミ(選抜講義)に留学生として参加していたことがある。その為、ある程度言葉が話せる。

 ナナ子が確認する。

 「東昇帝国への政治的亡命という意味コン?」

 小華が言う。「その通りアル。」

 アキラが補足する。

 「彼女はもう亡命するしか生き残る道はない。」

 ナナ子が聞く。「何か彼女は提供できる情報があるコン?」

 アキラが言う。「彼女は紅卓民派の財産洗浄(マネーロンダリング)をしていた将建華のボディーガードだった。」

 つまり、紅卓民派の情報について将小華は提供できるとアキラは説明する。政治的亡命とは受入る側にとってプラスになるかどうかの問題だ。アキラが熱心なのでナナ子が言う。

 「随分と熱心ですコン?」

 アキラが言う。「彼女は私と同じ狼人族だ。それに、・・・」

 アキラが小華に確認するように見る。

 小華がアキラに同意を示す。

 アキラが言う。「彼女は地別土(チベツト)の狼人族だ。」

 ナナ子が言う。「つまり、将建華の血のつながった娘ではないコン?」

 小華が言う。「その通り。本当は怒累血絵(ドルチエ)家の娘、ただ一人の生き残りアル。」

 小華は将建華の養女であり、本当は地別土(チベツト)の名家の娘だった。

 ノンは|地別土≪チベット≫も、まして|怒累血絵≪ドルチエ≫家について全く知らない。だから自然と口が開く。

 隣りのナナ子がノンの口を閉め聞く。

 「度脱(ドル)の|怒累血絵≪ドルチエ≫家?」

 小華が言う。「さすが高家。よく知っているアル。」

 ナナ子が更に聞く。

 「怒累血絵家(ドルチエ)の事を知るのは?」

 小華が言う。「将建華とここにいる人だけ。」

 アキラが説明する。「怒累血絵(怒累血絵)家は、空行母の秘技を伝える血統だ。」

 ナナ子が言う。「重要な事は、その血統が地別土(チベツト)の独立に意味があるかどうかコン。」

 アキラが言う。「意味があると思う。それに亡命が認められたら、奥義の空行母を説明するならどうでしょうか?」

 アキラがノンを見る。

 

 全員の視線がノンに集まる。

 「取り合えず匿うワン。」

 朝の光がさす中でほっとする小華、ジミヘン、アキラと考えこむナナ子がいた。




 小華たちとの話の後、ノンとナナ子は青輝高速艇に戻り、個室で少し休憩時間をとった。休憩の時間なのでノンはナナ子に腹をみせ、さすってもらう。

 ナナ子「本当に甘えん坊だから。」

 ナナ子も裸のノンのお腹をさすって癒される

 このところ戦いが続きストレスがたまっていたのでナナ子も息抜きしている。

 ノンがナナ子の顔をなめる。

 ノンが言う。「大好きワン。」

 ナナ子も言う。「私もコン。」

 ナナ子がキスする。




 数日後、真夜中の夜来浜(ヨコハマ)港に停泊している青輝高速挺(シリウス)の監禁室にいる孔子女に台話国の母方の叔父、神族の李整義が面会に訪れる。

 李整義は法理講の講員で正木アキラのゼミに参加するために孔子女に紹介状を書いた事がある。

 普通は台話国にいる李整義だが、アキラから知らを受けたので急遽、ここに来た。

 打ちひしがれた孔子女に李整義が言う。

 「私の面子(メンツ)に泥を塗ったな。」

 李整義は、孔子女が血の繋がった親族だからアキラへの紹介状を書いたのに孔子女は裏切ったと判断している。多くの東大陸関係者は大家族基準で事象を考え行動する。


 孔子女が言う。「私には本港当局に捕まった婚約者がいるの。彼を救う為に断ることはできないわ。」

 東大陸の均一主義(コミュニズム)大国は独裁大国である。目的の為には手段は選ばない。孔子女にとって婚約者(従兄)の母親は叔母であり、叔母の願いを断れば婚約者(従兄)の命が危ない。

 孔子女の婚約者(従兄)は、本港の民主化運動をして刑務所に監禁されている。

 このままでは、何時生きたまま臓器を抜かれ、殺されるか分からない。もちろん、この場合は不慮の死とされる。

 |均一主義≪コミュニズム≫大国は、法治国家ではない。人治国家であり、即ち一般人の命はゴキブリ並みである。

 気にいらなければ、叩き潰す。これが人民民主主義国家でわある。

 彼らは手段を選ばない独裁大国だが、特に神経過敏になっているのが地別土(チベツト)の独立運動である。そして地別土(チベツト)独立運動を支援しているのがアキラだ。

 だからちゃんとした紹介状がなければ、アキラのゼミ(選抜講義)に参加できない。法理講は独裁大国における弾圧対象である。(独裁大国の弾圧対象は、地別土独立、台話国独立、荒羅独立、民主化運動、法理講の五つ)

 弾圧対象の法理講の講員である李整義の紹介だから独裁大国からの留学生でも孔子女はアキラのゼミ(選抜講義)に参加できた。しかし、孔子女は李整義の信頼を裏切ってしまった。

 

 そこへアキラが現れる。アキラも先日の百愛人党の襲撃以来、独裁大国からの襲撃を避ける為にノンたちと行動を共にしている。

 

 アキラが言う。「孔子女をこれ以上、責めないでほしい。」

 孔子女が言う。「従弟を殺すと脅されて。」

 彼女が泣き出してしまう。


 李整義が言う。「二度と顔を見せるな。」

 まるで一昔前の皇帝が支配しているような国家が現実に人々を恐怖によって従わせている。

 李整義がアキラに言う。「だから独裁大国はダメなのだ。全ての人を不幸にする。」




 その時、警報が青輝高速挺(シリウス)内になり響く。

 アキラが言う。「どうやら来たようです。少し待って下さい。」

 アキラが行者として感覚を鋭くする。

 アキラは自分の履いていた靴を脱ぎ、靴の底のあるところをナイフで削る。すると底にはマイクロチップが現れる。

 アキラが言う。「これが発信器です。」

 李整義の靴にも孔子女の靴にもマイクロチップは仕組まれていた。台話国は島国である。東大陸から少し離れており、東昇帝国と共に近代化を達成した自由主義国家である。

 しかし、かなり多くの人が独裁大国に親戚がいるので、独裁大国の介入をいろいろ受けている。

 



 

 (時間は少し遡り、李整義が孔子女と会った時刻に戻る。)


 東昇帝国も独裁大国の介入を受けている。その一つが夜来浜(ヨコハマ)港の保税地区にある大国貿易倉庫だ。ここには元々は魔香尾(マカオ)からの財産洗浄の賭博地区マネーロンダリングセンターの候補地だった。

 その為、警護部隊が配置されている。

 その倉庫兼基地の中で鴨族のボブがイライラしている。

 小華を生死に関わらず捕獲しろと命令した孔子女が捕獲され、台話国の法理講のメンバーと接触している。

 法理講のメンバーであることは、均一主義(コミュニズム)大国において麻薬中毒(ジャンキー)と同じ重罪人である。

 それだけで惨たらしい死を意味する。しかも孔子女がいる高速艇にはどうやら小華もいるらしい。

 ここは孔子女という証人と共に法理講のメンバーと小華も消滅できれば、後は嘘で言い逃れればいい。鴨族のボブが命令する。

 「大水竜出撃。重罪人(ターゲット)を抹殺せよ。」

 孔子女、李整義、将小華には靴にマイクロチップを埋め込んでおり、彼らを抹殺することこそ、ボブの紅党での地位向上をもたらすはずだ。

 「これで出世は間違いない。」

 ボブは、出世して金と権力を持つ未来を想像する。

 そして、ふとキャバクラで女をくどく姿が目に浮かぶ。

 ボブはもうウキウキしてしまう。

 



 青輝高速挺(シリウス)が停泊している桟橋は、獅子族が搭乗している機械武装兵(メカアーマー)の部隊が警護している。

 その機械武装兵(メカアーマー)の全てが一瞬で全て腰部(動力部)が破壊される。

 この少し前から警報が鳴っているが警護している機械武装兵(メカアーマー)は敵を認識できずに動けなくなる。


 動きが速い円盤型機械武装(フレスピー)に噛みついた犬型機械武装(コーギー)が出撃する。

 ナナ子が言う。「あたりに拡張してコン。」

 ノンが唸り、周囲に音波を拡散する。

 すると何も見えない空間に無数のミミズのような線状の飛行体の反応がレーダーに現れる。

 ナナ子が火炎放射を放ち、ノンがレーザー砲で破壊する。

 いくつかのミミズのような飛行体は破壊したが多くは海中へと姿を消す。

 ノンが言う。「何か浮上するワン。海の中ワン。」

 ノンが連絡した時には青輝高速挺(シリウス)が船底の衝撃で揺れ始める。

 


 小華は警報が鳴り響く船内でアキラを探そうとして、急な揺れで姿勢を崩し頭を壁に激しくぶつける。小華は頭への激しい衝撃で意識を失う。


 そして、地別土(チベツト)から天竺国(インド)へ逃げようと雪に覆われた道を家族と進む少女、明妃(シンニ)だった頃の記憶が蘇る。


 

 

(面倒くさい話)

 ここで登場する将建華は、香港で金持ち相手にビジネスをしていた肖建華が拉致された事件からインスピレーションを受けて、登場しました。もちろんフィクションです。

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