90.大バビロンの罠・後
ノンが空を飛び回り、レーザー砲で海獣型機械武装の目を攻撃している。既に海獣型機械武装の片方の目が破壊され瞼が降りている。
陰帝が怒鳴る。「駄犬。地獄へ落ちろイ!」
ノンが言う。「地獄へ堕ちるのは大嘘つきのお前ワン。」
陰帝が怒鳴る。「ふざけるなイ!」
ノンが言う。「大嘘つきは地獄逝きワン。」
たれでも嘘を言う事がある。しかし、人の人生を台無しにする大嘘つきは地獄逝きだとノンが言う。
陰帝「駄犬こそ地獄に堕してやるイ。」
烈火の如く怒った陰帝は、海獣型機械武装の七獣化の変形スイッチを押す。
海獣型機械武装が変形して、胴体部分から頭が六つ出現する。更にアンテナの機能を持つ突起が十本出てくる。そして海獣型機械武装は、胴体が短くなる。
合計七つの頭の十三の目が映し出す画面で周囲を監視しているので陰帝に死角はない。
七つの頭を持つ姿は、闇ミトラ教会にとって重要な意味がある。だからこそ天井に描かれるし、闇ミトラ教会の最重要な機械武装のほとんどは、七つの頭を持つ。
十三の画面でノンを追う陰帝が言う。
「丸焼けになれイ。」
六つの頭がノンに向かって火炎放射する。ノンは火炎を避けて上空へ行く。
「嫌だワン!」
|犬型機械武装≪コーギー≫がお尻を振り振り陰帝をバカにする。
「我を怒らせた事を後悔させてやるイ。」
陰帝は、ラオデ要塞のあった大穴に近づく。
そこは、岩などで埋まっている。
陰帝が言う。「駄犬の仲間を溶岩で丸焼きイ。」
六つの頭はノンに向け火炎放射を続け、残り1つの頭から火炎放射して岩を加熱しはじめる。
陰帝は岩を溶かし溶岩にして|軍女神≪ドルガー≫たちにまで流すつもりだ。
一方、軍女神に搭乗しているミツルとカオル姫はちょうどいいところで衝撃を受けて二人同時にいっていた。
ミツルが洩らす。「あー。」
カオル姫が叫ぶ。「いく!」
ミツルたちが絶頂をむかえ、動かないでいると、軍女神の第三の目が開く。
危機的状況において軍女神の自己防衛機能が発動して額の真中にある第三の目が開き、イシスの舟の中にある倉庫が開く。
イシスの舟では、赤ランプが点滅している。陰帝の仕掛けた爆薬の爆発に巻き込まれる。
その大きな揺れで倒れていたユダはたいした怪我をしていないことを確かめて周囲を見る。
警報が鳴り響いている中で、扉に十八本の腕を持つ|死天女≪カーリー≫の絵が描かれている扉が開く。
ユダが中を見ると、そこには真っ黒な色をしたまるで全裸の天女の姿をした深層機械武装がいた。
そこへマリアが現れる。マリアはユダの心配をしている。
「大丈夫でしたか?」
本来はイシスの舟を制御しているはずのマリアが現れた事に驚いたユダが聞く。
「私は大丈夫です。それよりなぜ貴女がここに?」
マリアはイシスの舟が地下洞窟の爆破に巻き込まれてしまい、動きがとれないことを説明する。そしてアクスペリオスたちも爆発に巻き込まれて閉じ込められて、陰帝の巨大機械武装と戦っているのは、ノンとナナ子だけだと説明する。
ドクロを持っている死天女を見る。
ユダは、死天女の神話を思い出している。
|死天女≪カーリー≫の神話では敵だけでなく、呼び出した者も破滅するまで破壊が止まらない最強にして最凶の女神として語られている。
マリアがユダを心配して言う。
「死天女は人に制御できるものではありません。」
ユダが言う。「このままでは、誰も助かりません。」
マリアが悲しげに聞く。「どうしてもいくのですか?」
ユダがマリアを見てはっきりと言う。「行きます。」
ユダが死天女に搭乗する。
まず、死天女がイシスの舟から外に出る。大きな岩がイシスの舟を挟んでいる。
そしてユダは死天女の持つドクロをかざし、周囲からエネルギーを集め、エネルギーの渦を創る。渦は段々と大きな渦となり、速さと大きさが拡大する。
そして渦が大きな岩を動かし始める。大きな岩が浮き、渦を巻き回転する。
「何が起こったのだイ?」
陰帝は自分の目の前で起きていることが理解できない。大きな岩が渦を巻いて空にあがり、後には巨大な穴が現れる。
もちろん軍女神も、天馬型機械武装もその他も自由になる。
そして地下から死天女が姿を現す。
陰帝が絶叫する。「バカな、死天女だと。」
一度、現れたら敵を全滅させても止まらない最凶神である。陰帝は七つの全ての頭を死天女に向け、最大の火炎放射を浴びせる。
しかし、炎の中から飛光輪が現れ、海獣型機械武装の七つの頭が切られる。
火炎放射にも関わらず、死天女は無傷で浮いている。
陰帝は恐怖で脂汗が全身からでる。「化けもの!」
陰帝が退避しようと操縦管を引く。しかし、海獣型機械武装は動かない。
「何が起きてイ?」
急いで逃げようとするが動かない。ふと見ると正面に死天女がいる。その死天女が三叉戟で海獣型機械武装の足を地面に突き刺している。
死天女がドクロを掲げる。
ユダが言う。「滅びよ。」
陰帝から生命力がドクロに吸い込まれ、陰帝の命が消える。
ノンたちがほっとした時、死天女が再び動き出す。飛行能力を持つノンとナナ子、ジャンヌが後についていく。
かなり離れた場所で死天女が止まる。
この時、陰帝のオリジナルが緋色をした地獣王の中で目を覚ます。
|地獣王≪シャンバラ≫の姿は、頭はゴリラのようであり、胴体は虎のようであり、尻尾は蛇のような合体獣に似た|巨大機械武装≪メカアーマー≫だ。
実は海獣型機械武装の中にいたのは、陰帝の複製体だ。
あくまでも|オリジナル≪本体≫が生き残ることを優先させた陰帝は、ラオデ要塞そのものと|海獣型機械武装≪レビアタン≫、陰帝の|複製体≪クローン≫までも囮として使っていたのだ。
この陰帝のオリジナルは、ラオデ要塞から離れた場所に隠れされている。
本来、オリジナル《本体》は、仮死状態であり、複製体の生死に関わらず意識は戻らない。
だから普通は見つかるはずがなかった。
オリジナルの意識は、近くに敵の機械武装が接近した場合のみ覚醒する。
しかし、死天女には通用しない。
死天女の|黒時間≪ダークタイム≫の能力は、予定された未来を感知する能力だ。具体的には、オウムのような姿の無身鳥が周囲を検索して未来に敵となる者を見つける。
無身鳥が黒時間の能力で陰帝の|オリジナル≪オリジナル≫を見つけたので、|死天女≪カーリー≫が陰帝の前に現れたのだ。
「何が起きたイ?」
|死天女≪カーリー≫の接近で陰帝が目を覚ます。そして陰帝は、接近する|死天女≪カーリー≫を見て自分が戦うしかない事を理解する。
地獣王の起動に伴い、周囲の地面に隠してある獣像型武装兵も起動する。
獣像型武装兵は、山羊族のような外観であるが、特殊形状記憶合金で構成されているので、多少にかかわらず自己修復能力を持っている。(サイズは通常の機械武装とほぼ同じ)
陰帝が命令する。「破壊しろイ。」
獣像型武装兵が、槍を投げる。
ノンとナナ子は空中で槍を避けつつ、レーザー砲で攻撃する。
ジャンヌはやはり空中で天馬型機械武装の口からミサイルを発射して攻撃する。
死天女は地上に降りて自身でも接近する獣像型武装兵を三叉戟や槍で破壊する。
獣像型武装兵の投げる槍は死天女の持つホラ貝で軌道をずらす。死天女は軍女神の持つ武器と同じものを持ち、更にエネルギーを吸収するドクロを持つ。
|死天女≪カーリー≫が飛光輪で離れた場所の獣像型武装兵の首を切る。
あっという間に獣像型武装兵の全てが破壊される。
陰帝が叫ぶ。「復活して破壊しろイ!」
地獣王が紅く光り、獣像型武装兵が姿を自己修復して再び死天女たちを攻撃する。
ノンが言う。「きりがないワン。」
ジャンヌが叫ぶ。「うっとおしい。」
ユダが言う。「ドクロよ。吸いとれ。」
死天女の持つドクロが獣像型武装兵からエネルギーを吸いとる。
それを見ていた陰帝が叫ぶ。「死神め、これでも喰らえ!」
地獣王が巨大なイリジウムでできた神殺しの巨大槍を出現させる。
陰帝が神殺しの巨大槍で死天女を突こうとするが死天女は三叉戟で止める。
ユダが言う。「先生を偉大な宗教指導者に戻せ。」
陰帝が叫ぶ。「真実なんてくそ喰らイ!」
死天女がドクロを掲げ、地獣王の全てのエネルギーを吸い尽くす。
「バカイ、」
陰帝がミイラ化し、地獣王が倒れる。
既に全ての獣像型武装兵のエネルギーはドクロに吸い込まれている。
ユダは死天女の中でまだ人の意識を持っている。しかし、破壊衝動が全身を駆け巡っており、全身が震えている。自分自身の意識がもうじき死天女に乗っ取られることも時間の問題である事が分かる。
これこそこそが死天女に搭乗する者の宿命だ。
この破壊衝動を抑えることができなければ、味方さえ破壊してしまう。ユダはふところから短刀を取り出す。
ユダ「先生、やっとそちらにいけます。」
ユダが短刀を首にあて力を入れる。
ノンが叫ぶ。「死んじゃダメワン!」
その時、ノンとナナ子が死天女に円盤型機械武装と犬型機械武装で体当たりする。
ユダが意識を取り戻した時、横にはノンとマリアがいる。
ユダが呟く。「私はまた、生き延びてしまいたした。先生。」
ノンが言う。「先生は望んでいないワン。」
ユダが聞く。「では、何を望まれていると?」
ノンがうるうるした目でユダを見て言う。
「生きて本当の事を言うべきワン。」
マリアが言う。「貴方は無事、死天女を止めたのです。それで十分ですよ。」
なお、死天女が停止した後、軍女神の第三の目が閉じた。




