88.大バビロンに向うジャンヌ
ノンが仰向けに足を開いて寝ている。このところ激しい戦いが続いて疲れが溜まっている。そのせいでノンは、犬のコーギーそっくりな寝相をしている。
もともとのノンはナナ子との幸せだけが今生の目的だった。でもナナ子の都合で英雄となり、ここまできてしまう。ナナ子は近づき、そして寝顔にキスをする。
ナナ子が呟く。「愛してるコン。」
ノンが寝言で言う。「愛してるワン。」
多くの人はささやかな幸せを求めているだけなのに、一部の欲深な嘘つきが、人々を騙して未来と幸せを奪っている。
もういい加減に終わりにしなければいけない。人は既にこの星を壊せる力を持っている。つまり、子供と同じように泣いていれば親がわりに神が介入するレベルではない。
自分の業の結果は、自分の人生で精算するレベルなのである。それなのに闇ミトラ教会は、懺悔して神に祈れば救われると説明している。
このままでは、本当にハルマゲドンが始まる。それが愚かな人類によって引き起こされるか、神の怒りによるかは神のみ知る。
はっきりしているのは、救世神ミトラを隠してイエシユアを磔にする闇ミトラ教会が終わるべきだということだ。
ナナ子は深く深く深く息を吸い部屋から出る。
大バビロンとも呼ばれるラオデ要塞は、ゴルゴタの丘の上から巨大な地下空洞まで続いている。地上は六階、地下六十六階ある。地上部分の周囲には高い城壁があり、周囲を囲んでいる。この地下部分のうち三十三階は岩盤の中であり、その下の三十三階部分が地下空洞にある。
つまり、巨大な筒が地上から地下にある空洞まで続いているイメージだ。これは神話の時代にはるかな空まで作られたと言われるバビロンの塔を逆さまにしたようなものだ。
どちらも神に対抗する意識と名前を持っている。
そのラオデ要塞の地下にある巨大空洞には、七頭竜が待機している。七頭竜は巨大機械武装であるが、深層機械武装ではない。
だから軍女神と普通に戦っても勝つことは難しい。そもそもイシスの舟自体が超文明技術である。闇ミトラ教会は、その超文明技術を手に入れながら自分たちに分かる範囲でしか利用しなかった。
真理より財力を優先し、信者数を優先した結果、本来は解明するべきイシスの舟について解明が出来なかった。
今更、懺悔しても遅い。ラオデ要塞最下層の七頭竜の間にいる陰帝が言う。
「数量で圧倒するイ。」
山羊族の兵士がラオデ要塞の各ポジションを確認している。
この地下の巨大空洞には、底が死の海につながる湖がある。死の海とは、廃液とゴミで普通の生き物が住めなくなった為、死の海とよばれる。その海は、廃液で黒く濁りときどき油が光を七色に反射する。その海につながる通路には魔獄と呼ばれている鯱型機械武装が配置されている。
ノンたちが死の海から浸入してくる場合、それを鯱型機械武装が自爆攻撃する。
七頭竜の間の天井には、軍女神と対峙する七頭竜の図が描かれている。その図を睨みながら陰帝が言う。
「罠にかけてやるイ。」
目次録では七頭竜が負けるが、それはあくまで普通に正面から戦う場合だと陰帝は考える。
巨大な空洞を罠として軍女神を罠にかける。軍女神さえ倒せば後は戦いようがある。
陰帝の姿は、二本の山羊族の角と八本の金でできた突起でまるで角が十本あるように見える。
それは目次録の七頭竜の角の数と一地しているのだが陰帝は別に意識していたわけではない。
陰帝は、最近ノンたちを罠にかけてこの姿で嗤ってやることだ。そして陰帝はノンとナナ子を火あぶりにする事を想像する。
「駄犬と女狐の丸焼きでパーティーを開くイ。」
ラオデ要塞の各階にも獄蛙と呼ばれる蛙型機械武装が配置してある。地上からやってきても、死の海からきてもどちらにしてもノンたちを圧倒的数量で攻撃して損傷させ傷だらけにさせる゙。そこを七頭竜で攻撃するのだ。
陰帝は駄犬たちが傷つき、倒れる゙イメージを想像して嗤う。
「きっと勝てるイ。」
地上へ翼獅子型機械武装に搭乗したマサヒロとサラたちが地上の獄蛙に口からレーザー攻撃をする。これらは、イシスの舟にあった倉庫からサラが見つけたものだ。
倉庫に描かれた図は|霊獅子≪グリフィン≫であり、霊獅子に成れるサラが扉に手をつけると扉が開いた。その倉庫にあった|翼獅子型機械武装≪メカグリフィン≫が活躍している。
円盤型機械武装に噛みついている犬型機械武装に搭乗しているノンも、レーザー砲を持って獄蛙を攻撃する。
更に人型機械武装に搭乗するアクスペリオスは蜘蛛型飛行体を多数飛ばして獄蛙に接近して獄蛙の制御を奪って同士討ちをさせる。
地上の獄蛙はすぐに全て倒され、ラオデ要塞の地上部分は瓦礫の山になる。
ノンが瓦礫の前にたち、遠吠えする。
ワオーン!
そこへ天馬型機械武装に搭乗したジャンヌが、マテイス族が搭乗した機械武装を率い現れる。
天馬型機械武装は、角を持つ大きな白馬の姿だ。白馬の描かれたイシスの舟のある倉庫にあった。
(少し時間が戻る。)
ジャンヌは考えていた。
イエシユアなら何をするか。ずっと考えて考えて考えていた。でもジャンヌには分からない。
いくら考えても分からない。
最後にジャンヌは自分は何がしたいのかを考えてみた。そして倉庫のペガサスの絵にジャンヌがたまたま触れた時、倉庫が開いた。
もともと嘘をいつも言わない場合、表面意識から深層意識まで繋がりやすい。そしてその時、ジャンヌは深く考えていたので、深層意識まで繋がっている状態だった。
ジャンヌは言う。「したいことをする。」
ジャンヌは深層機械武装に搭乗して出撃する。
ジャンヌがイシスの舟から出撃してラオデ要塞に到達するとそこは瓦礫の山だった。ジャンヌはそれを見て周囲に伝える。
「ここは私にやらせて。」
周囲がどいて天馬型機械武装だけが瓦礫の山の前に立つ。
ジャンヌが意識を集中する。天馬型機械武装の背中から羽が現れる。更にジャンヌが胸に意識を集中すると、ラオデ要塞の地上部分に竜巻が巻き起こる。
ジャンヌが意識を継続して集中し、瓦礫を吹き飛ばす。
瓦礫が除かれると巨大な出入口が現れ、下の階から獄蛙の攻撃が再会する。ノンたちも攻撃してまず地下一階部分を制圧する。
ノンたちがまた|獄蛙≪ゴク≫を討伐する。
ノンが瓦礫に立ち遠吠えする。
ワオーン!
ノンがジャンヌに言う。
「任せたワン。」
ジャンヌが再び竜巻を起こす。地上からの進撃が1階層ずつ進む頃、死の海へイシスの舟が潜行する。




