85.ジャンヌの自立
少し長いですがよろしくご検討します。
やっと農業に情報技術を反映させる目処がつき、ノンたちに獅子族のマサヒロと猫人族のサラが合流する。
最近、アスクレピオスが深層機械武装に搭乗する場面が増えてイシスの舟を緊急モード(防御専用)で運用することが起きている。
しかし、やはりイシスの舟が戦闘に参加しなければならないこともある。
今回の戦闘では、イシスの舟がどうしても必要になり、急遽、マサヒロとサラを呼ぶことになった。
イシスの舟にある部屋でジャンヌは祈っている。
ジャンヌの前には正十字架があり、その前には棺があり、今までに取り戻したイエシエアの像の各部が納められている。
正十字架にはジャンヌがいつも見ている人々の罪を背負い十字架上で磔となった聖人と謂われている人の像はない。ただの正十字架である。
(どうか私を導いてください。)
ジャンヌは心の底から祈っている。しかし、声は聴こえない。かつてジャンヌを導いた神の声が聴こえない。
「どうして私を導いてくれないのですか?」
心の中の思いが、外へ漏れる。
「きっと自分で考えろ。と言う事さ。」
いつのまにかジャンヌの横にいるアクスペリオスが答える。
「でも今までは声が私を導いてくれたのに。」
ジャンヌはレンヌで自分たちの国王を戴冠させるまでは声が聴こえていた事をアクスペリオスに言う。
「だから、お前さんの聞いた声は、集合的無意識(深層意識)で、戴冠がその目的なのさ。」
自分たちの国王を戴冠させたいという多くの人の願望が、その国の人々の集合的無意識としてジャンヌに声として認識されのだとアスクレピオスが説明する。
ジャンヌがアクスペリオスに聞く。
「では、私が聞いた声は?」
アクスペリオスが言う。
「イエシユアなら答えると思う?」
質問に質問で返されたジャンヌが答えにつまる。
ジャンヌが頭を振り呟く。
「分からない。私には分からないのです。」
アクスペリオスが言う。
「お前さん。いつまで子供でいるのかね?」
ジャンヌが言う。
「神に聞くことはいけない事なのですか?」
アクスペリオスが言う。
「親は、自分の子供にいつかは自立してほしいと願うものだろ。」
ジャンヌが言う。
「自立しても、神には聞くべきでしょう。」
ジャンヌは人が不完全である以上神に聞くべきだと思っている。
アクスペリオスが言う。
「全知全能の神とは人々の願望だ。本当に全知全能の神がいたとしても分からないという事は分からない。」
ジャンヌが反論する。
「だからこそ神の子、イエシユアが人の子として生まれたのです。」
アクスペリオスが言う。
「つまり、イエシユアがいなければ神は不完全な神だと白状しているのかな?」
ジャンヌが言う。
「天には私たちの父がいる。そしてイエシユアはその御子。」
アクスペリオスが言う。
「イエシユアは自分を人の子であると言っている。天の父は契約に基づく父だ。」
そこへソラが二人の会話に割り込む。
「何時まで|神学論争≪難しい話≫をする気ニャ?」
ジャンヌがアスクレピオスの後ろを見ると、そこにマサヒロとサラがいる。
本来は、マサヒロとサラにジャンヌを紹介する為にここにアスクレピオスが二人を連れてきたのだ。
アスクレピオスが二人にジャンヌを紹介する。
ジャンヌが聞く。
「退屈だったでしょ?」
マサヒロがジャンヌの目を見て話す。
「いいや。大変興味深かった。」
「退屈だったニャ。」
マサヒロがサラの目を見て言う。
「本当は興味があったのでは?」
サラが仕方なく頷く。
「確かに興味はあるニャ。」
そしてジャンヌに向かい言う。
「まずは自分で考えるクセをつけるべきだと思う。」
そこでジャンヌは質問しようとして口を閉ざす。
(まずは自分で考えるべきだと言われたばかりなので、まず自分で考えるべきだと気づいたので質問は控えた。)
そこへノンが来る。アクスペリオスが言う。
「さあ戦いの時間だ。」
ノンが言う。
「全てはこれからの行動で決まるワン。」
ノンたちが部屋から出ていく。
ジャンヌは一人残り自分で考える。
マサヒロとサラは自室に戻る。
ここでもやはりドアは通常とは違う音をたてる。
ただ、ナナ子やモモ子より音が小さいだけでやはり異常をマサヒロは感じる。
「どうしたのかな?」
「あの女の体型についてどう思うニャ?」
猫人族が相手を威嚇するときに発するフーとでもいいそうなサラの表情である。
「罪つくりな体型だなと思う。」
「貴方はどうだったニャ?」
「別にどうもこうも無い。」
安心してフーと息を吐き、サラが緊張を解く。
「やっぱりマサヒロは凄いニャ。」
普通の男ならジャンヌに考えることは豊かな胸とお尻であるが、マサヒロはそのよりな事は考えない男だ。
世の中、直ぐに男とは、女とはと二元論で話をするが、男でも一般的な男、特殊なグループの男、個別で扱うべき男が実際に存在する。これと同じように女にだって一般的な女、特殊なグループの女、個別で扱うべき女がいる。
マサヒロは、女性に対して胸、尻、外見ではなく、その女性の内面を重視するかなり少数派の男だった。
だからこそサラは好きになったのであり、でも心配になってしまい確かめたのだ。
マサヒロが仕方ないなと言う表情でサラに言う。
「お前が好きだ。」
マサヒロとサラがキスをする。
警報がなり、マサヒロとサラはイシスの舟の運行に向う。
テアラ飛行要塞は、明けの明星と呼ばれる星が耀く夜空を六枚の翼を広げて飛んでいる。
結局、闇ミトラ教会はイシスの舟を飛ばせず、彼らが飛ばせるテアラ飛行要塞を作る。
その管制室に青白い肌の数人の神族たちが集まっている。
神族たちの中で椅子に座っているのは、自称女予言者イザベル一人である。
真っ白な服に金銀の刺繍がしてある法服は、彼女の青白い顔をよけい目立たせる。
イザベラの赤い目が正面にある画面を見ている。画面には、イシスの舟から円形型機械武装に噛みついて飛び立つ準備をしている|犬型機械武装≪コーギー≫が映っている。その|犬型機械武装≪コーギー≫は、背中に大きな麻袋を担いでいる。
イザベラがイライラしながら周囲にいる青白い神族たちに言う。
「あんな駄犬がなぜ英雄なのよ?」
イザベラは手に握っていた紙束を投げ捨てる。
その紙はノンの調査レポートであり、ノンが普通の学校で普通の成績をとり、たいして運動神経も良くないことが書かれている。
イザベラはいつも調査レポートを作り、相手を分析して作戦を立てる。それが今回は全く通用しないのでイザベラはイライラしているのだ。
ただの駄犬がなぜ勝つのか、全く理解できない。
近くにいた青白い神族の一人が言う。
「駄犬が飛びました。」
イザベラが言う。
「トビバッタを全て出しなさい。」
トビバッタは、体長30センチ程度のバッタのような胴体の背中にプロペラが付いている|遠隔操作型飛行機≪ドローン≫だ。
テアラ飛行要塞の格納庫が開き中から全てのトビバッタがノンとナナ子に向かう。
まるで雨雲のように見える大群である。その大群はちょうどテアラ飛行要塞とイシスの舟の間を飛んでいく。
青白い人々は死神と呼ばれる集団で、イザベラはそのリーダーだ。そして彼らが死神と呼ばれる理由はトビバッタが発射する青白い液体が人に海綿状脳症を即時に引き起こす毒だからだ。
トビバッタの大群と円形型機械武装と犬型機械武装が接触してトビバッタの黒い集団がノンたちを覆う。
トビバッタは接触すると毒の液体を吹き付け、吹き付けたものを燃やすべく炎を出す。
大きな炎が上がる。
イザベラが言う。
「犬と狐の丸焼きよ。ワインを用意しましょう。」
イザベラとしては、ノンたちがトビバッタの大群に突入したのを見てもう勝ったと思ったのである。
しかし、途中でイザベラの表情がひきつる。
トビバッタの大群が竜巻に巻き込まれ、竜巻が炎の竜巻に変化する。トビバッタが竜巻から逃れようとするが、次々と炎の竜巻に巻き込まれる。
「なんなのよ。ありえないわ!」
通常、深層機械武装にあのような巨大な竜巻を起こせる能力はない。
だからノンたちが竜巻を作っている訳ではない。
イザベラが地上で巨大な竜巻が発生している場所を見る。
「電波反射線で見せて。」
正面の画面に神の乗り物、真火場が現れる。真火場は、星形八面体(ピラミッドを二つ重ね合わせた形)、上下左右前後どこから見ても立体六芒星である。
ノンの犬型機械武装が担いでいた麻袋の中身だ。
イザベラは、真火場が自分たちには開けられなかった格納庫の扉にあった絵と同じ形であることを理解する。
イザベラが見ている|真火場≪マカバ≫の絵が格納庫の1つに描かれていたことを思い出す。イザベラたちは、七個のチャクラの内、下部三つまでしか利用できずほとんどの倉庫を開けられなかった。近くにいる青白い人がイザベラに告げる。
「イザベラ様、このままではトビバッタが全滅します。」
それはテアラ飛行要塞のミサイル攻撃が丸見えになる事を意味する。あくまでトビバッタはミサイル攻撃を隠す為の囮だ。
このままでは不味い。イザベラが叫ぶ。
「全ミサイルを発射よ!」
テアラ飛行要塞から全てのミサイルが発射される。しかし、イシスの舟のレーザー砲が全てのミサイルを撃破する。
やはりイシスの舟の方がすぐれた機能を持っている。
イザベラが歯をくいしばり叫ぶ。
「撤退よ。全速で逃げるのよ!」
テアラ飛行要塞が反転して逃げにはいる。しかし、炎の竜巻から青い炎で包まれた円形型機械武装が現れる。そして巨大錨が円形型機械武装から発射されてテアラ飛行要塞に突き刺さる。
巨大錨は内部から特殊鎖を出してイシスの舟に繋がる。
円形型機械武装が円大錨をテアラ要塞が逃げられない近くまで運び発射したのだ。
もうテアラ飛行要塞はイシスの舟から逃れられない。
イザベラが叫ぶ。
「総員、迎撃よ。」
イザベラたちも管制室から出て機械武装に搭乗する。イザベラは特殊な能力を持つ人型機械武装に搭乗する。
ノンの搭乗する犬型機械武装とナナ子が搭乗する|円形型機械武装≪プレスピー≫はテアラ飛行要塞の上で要塞のハッチを開けようとしている。
イエシユアの左手は管制室にあるので、ノンたちはテアラ飛行要塞の内部に浸入する必要がある。
もちろんイザベラたちは、それを阻止する為テアラ飛行要塞の上でノンたちと戦う。ノンたちはテアラ飛行要塞が落下しない程度の攻撃でイザベラたちと戦う必要がある。
イザベラたちは足の裏に磁石が付いているので、テアラ飛行要塞の上でも、強風で飛ばされない。
しかし、ノンの搭乗している犬型機械武装は円形型機械武装に噛みついて飛んでいる。もちろん両手で大剣を使い、ナナ子は火炎放射で次々とイザベラの部下が搭乗している機械武装と戦う。
その時、イシスの舟から高圧電流が流れ磁石でテアラ飛行要塞に立っている機械武装が磁石が無効になり、飛ばされる。
イザベラの人型機械武装は、瞬時にテアラ要塞に錨を射ちテアラ要塞に留まる。
イザベラが叫ぶ。「犬コロなんかに負けない。」
イザベラの搭乗している人型機械武装とノンとナナ子たちの戦いが始まる。
ナナ子が言う。「私もいるコン。」
円盤型機械武装から火炎放射が放射される。 しかし、人型機械武装の持つ杖からの凍氷によって相殺させる。
犬型機械武装の大剣による攻撃は、杖を持たない手から出てきたナイフによって防がれる。そして足のひざから銀色の矢が飛び出す。
イザベラが自慢して言う。
「この魔術師は体の全てから攻撃できるのよ。」
人型機械武装の手、肩、ひざなどからナイフや、ミサイルや、銀色の矢がノンたちを攻撃する。
ノンたちはイザベラの攻撃を避け上昇する。複数の攻撃は受けきれなければ損傷してしまう。
イザベラが勝ったと思い、叫ぶ。
「臆病者、どっかへ行きな。」
イザベラが引っ掛かっている巨大錨を外そうと近づこうとした時、真上からカルタリが急降下してくる。
人型機械武装の肩からミサイルを発射するがカルタリを止めることができない。イザベラは杖を掲げたが、本能で危険を察知して避けようとする。しかし、カルタリは方向を変え杖ごと人型機械武装を破壊する。
イザベラはとっさに緊急脱出して管制室へと戻る。
イザベラが管制室に戻るとそこには、アクスペリオスとジャンヌたちがイエシユアの左手を入れて固めた透明の立体を運ぼうとしている。
ノンたちがイザベラたちの注意を引き付けている間に、ジャンヌたちはテアラ要塞へ侵入している。
つまり、ノンたちが囮となって戦っている間に、イエシユアの左手を奪還する作戦だ。
ジャンヌが剣をイザベラに向け叫ぶ。
「お前たちからイエシユアを取り戻す!」
イザベラが杖を掲げ叫ぶ。
「黙れ。小娘!」
イザベラの杖から凍氷がジャンヌに向け発射する。
ジャンヌは透明な立方体の後ろに避け、イザベラに斬りつける。
イザベラが叫ぶ。「我こそ予言者なり。」
イザベラが今度は、ジャンヌに向け炎を発射する。
ジャンヌが叫ぶ。「偽予言者、地獄へ行け。」
何度か透明の立体の回りでイザベラが攻撃し、ジャンヌが避ける。
ジャンヌが再び避け、再び透明の立体に炎がぶつかりヒビが入る。
イザベラが怒鳴る。
「きさま、わざと避けたな!」
ジャンヌは避ける時、透明の立体に攻撃が当たるようにと動いていた。
ジャンヌが言う。
「自分の未来が分からないから、やはり偽予言者だ。」
ジャンヌが偽予言者と言われ我を忘れた瞬間、ジャンヌがイザベラを倒す。
アクスペリオスが割れた透明の立体からイエシユアの左手を持ってジャンヌと共に要塞から脱出する。
その後、イシスの舟からのレーザー砲によってテアラ飛行要塞は破壊させる。




