82.エフエ要塞の大闘技場
少し長いのですがよろしくお願いします。
イシスの舟にある個室で早朝、ノンは床に降りてゆっくりのびをしている。横のベットの上では、ナナ子がノンを見ている。
昨日まで戦いが続き二人がゆっくりできる日がなかった。
昨日から次の目標を決めるまでの間、ノンとナナ子はゆっくりしている。ノンが床に転がり腹をみせてナナ子に言う。
「ナナ子、なでなでワン。」
犬人グループにおける親しい者同士での甘えである。ノンは腹をみせてナナ子に甘えている。
「甘えん坊さんコン。」
ナナ子がベットから降りてノンのお腹をなでなでする。
ノンがナナ子の顔をペロペロする。更に胸までペロペロする。
ナナ子がノンに乳首をペロペロされて感じ声をあげる。
「もう好きねコン。」
ナナ子がお返しにノンのムスコをなでなでする。若い二人はそのまま、早朝に始める。
この時、ノンは思う。
(若いってとってもいいワン!)
山羊族の陰帝は、不機嫌に側近の闘増・アクイナスが現れるのをラオデ要塞にある七頭竜の間で待っている。
陰帝は闘増が現れるまでの間、仕方なく黄金と宝石と真珠で飾る法衣を神経質に見る。
既に闇ミトラ教会の七帝のうち、五帝が英雄とその仲間に倒されている。まるでどこかの英雄物語かと思えるほどだ。
陰帝にとって完全に想定外だ。
「あり得ないイ。」
陰帝は、最初はあのコーギーはイケメンの貴公子とはほど遠いので、まさか英雄のように五帝を倒さすとは思っていなかった。
どのドラマであろうと、英雄はカッコいいイケメンが苦難を乗り越えて悪を倒す。これが想定される物語である。
しかし、あのコーギーは全く英雄らしくなかった。ただ可愛いだけだと陰帝は思ってしまった。
陰帝は、まさかノンが天命を持つとは考えなかった。だから対応が遅れてしまった。
しかも今回は、イエシユアの封印までも解こうとしている。
陰帝が呟く。
「全く余計なことをする駄犬だイ。」
闇ミトラ教会の最大の秘密、イエシユアの封印が解かれたら、闇ミトラ教会は倒れる。
それは即ち黄金と宝石と真珠で身を飾って地上を陰から支配者する陰帝が破滅する時だ。
「わざわざイエシユアとその仲間を殺し、更に信者たちを殺して、イエシユアを封印し、その力を横取りしたというのにイ。」
長十字架へ磔したのは、本物のイエシユアに対する封印である。
その目的はイエシユアに罪と罰を擦り付け封印を強固にして、イエシユアの救世主としての覚醒を阻止する事だ。
所詮、在俗宗教もヤクザと同じで縄張り(地域)とシノギ(信者と金)を|競合する相手≪他の宗教団体≫と争う存在だ。
つまり、イエシエアの教えを乗っ取れば、その縄張りとシノギは手に入れられる。
そして、イエシエアを封印すればその縄張りとシノギは永遠に自分たちのものになる。
だから陰帝は、そのカギであるイエシユアの像を確保する為、側近である神族の闇天使、闘増を愚帝のいる地下要塞に行かせた。
この時、陰帝は自分がイライラしている事に気づく。
そしてつくづく思う。
(年は取りたくないものだイ。)
陰帝がイライラしながら待っていると、闘増が現れる。
「待ちくたびれたイ。」
しかし、闘増はイエシユアの全身像ではなく、一部しか持って来ていない。
陰帝が不機嫌になり聞く。
「なぜ全身像ではないイ?」
闘増が言う。
「敵を分析する為に、バラバラにしたのです。」
闘増は、イエシユアの像を頭部、右手、左手、右足、左足、上半身、下半身の七個に分ける。そしてそれぞれの要塞に置いたと説明する。
陰帝が聞く。
「何が目的なのだイ?」
闘増が答える。
「エフエ要塞などでの英雄の戦いについてデータを集め、|ラオデ要塞≪ここ≫で七頭竜を使って倒すのです。」
七つの頭を持つ竜、七頭竜は最強にして最凶の|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫だ。
闘増が更に言う。
「もちろん、ここに来るまでに倒されるかもしれません。」
陰帝もそれも有りうると考える。|ラオデ要塞≪ここ≫までの要塞で英雄が倒されるかもしれない。むしろ陰帝としてはその方がいい。
「分かったイ。」
やっと陰帝の顔に余裕が戻る。
陰帝の前から去った闘増は一人、呟く。
「必ず仇はとってやるからな。」
阿鼻の城にいたゴリラ族の|悪意成≪アクイナス≫は、闘増にとって小さい頃から仲のいい親戚であった。
闘増にとって直接の悪意成を倒した|相手≪ロト≫より、この一連の戦いを起こしたノンたちが許せない。
エフエ要塞の前にある大闘技場で獅子族のニコライ、雄牛族のコンスタン、神族のアタナシウス、鷲族のインケンがそれぞれの|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫に搭乗している。
ニコライが言う。
「全く余計なことだ。」
ニコライにとっては全く不本意な状況だ。
そもそもなぜ闇ミトラ教会がイエシユアを封印するために戦うのか理解できない。
ミトラ教の教典は目次録だけであり、旧約経典、新約経典はそもそも目的が違う。
旧約経典は神と民族の物語であり、新約経典はイエシエアの言動が中心である。
目次録はミトラへの目次録なのだ。その中心は数字に表されるシンボルと意味である。
例えば七は、ミトラ教会のシンボルである。そのシンボルは、チャクラに対応しており、七は女神の持つ力でもある。
つまり、目次録とは救世神ミトラの力を得る為の目次だ。
確かにイエシユアとその仲間たちは大勢の信者を従えていた。
しかし、根本の目標が違う。ミトラ教会が闇と光に分裂してもミトラ教会の根本的な目標は現実世界における理想社会の実現である。
イエシユアとその仲間たちは、霊的世界における理想の実現が目標だ。本来、イエシユアとミトラ教会は全く交わることさえないはずだった。
それなのに、イエシユアを封印し、その教えと信者を奪うから逆襲される。
ニコライは、獅子面機械武装に搭乗しながら思っている。
彼らは元々人型機械武装を一部だけ改造してニコライは獅子面機械武装、コンスタンは雄牛面機械武装、アタナシウスは人型機械武装、インケンは鷲面機械武装に搭乗している。
ニコライがアタナシウスを見てこぼす。
「左足を渡したらダメか?」
彼らはイエシエアの左足を渡されていた。
ニコライには、この左足の為に自らの命を賭ける意味が分からない。
アタナシウスが怒って言う。
「だめです。」
コンスタンも言う。
「アタナシウスの言う通り。」
インケンも言う。
「アタナシウスが正しい。」
アタナシウスたちにとって闇ミトラ教会は現実世界と霊的世界とを統合した存在が必要であり、その統合した存在の代用としてイエシエアの像が必要だとニコライに言う。
やはりイエシユアを必要とする理由がないと思うニコライが聞く。
「霊的世界と天の国の世界は違うだろう?」
アタナシウスが更に怒って言う。
「全ては、救世神ミトラの元に。」
ニコライが聞く。「勝てるのだろうな。」
アタナシウスが言う。「当たり前だ。」
アタナシウスたちは自分たちが正義だと信じているので敗北することはないと信じている。
しかし、ノンたちは今までニコライたちと同じ|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫と戦って勝っているのである。
ニコライは慎重に戦うことにする。
ニコライが言う。「お前たちが負けたら俺は降伏する。」
アタナシウスがニコライを馬鹿にしたように言う。
「我らが負けたら勝手にするがいい。」
コンスタンもインケンもニコライを臆病だと見ている。
ニコライは口を閉ざし、周囲を見る。
古代に行われた決闘と同じようにニコライたち四人がノンたち四人と戦う。勝利者はイエシユアの左足を手にする。
ニコライたちがこの決闘を申込む理由は、イシスの舟を使われたら、ニコライたちが非常に不利になるからだ。ノンたちが決闘に応じる理由は、イエシユアの左足を損傷せずに手に入れたい為だ。
ニコライの前にノンの犬型機械武装、コンスタンの前にミツルとカオル姫の軍女神、アクスペリオスの前にアタナシウスの人型機械武装、ナナ子の円形型機械武装の前にインケンが立つ。
ノンが剣を抜いて言う。「始めるワン。」
ニコライも剣を抜いて言う。「始めよう。」
二人の剣がぶつかり一斉に戦いが始まる。
ニコライは大剣を振るいノンに斬りかかる。しかし、ヤスベエと統合したノンは強い。ニコライも剣には自信があるのだが、ノンの方がうまい。
しかもノンの方が慣れている。ニコライが言う。
「不味いな。殺られてしまう。」
何とか獅子面機械武装の必殺技を出さなければとニコライが焦る。
コンスタンは、雄牛面機械武装の全力で軍女神に斬りかかるが、撥ね飛ばされる。コンスタンは特殊能力である光で周囲を覆い、軍女神の頭を狙う。胴体部分はいくつもの武器を持つ手が邪魔で手が出ない。
コンスタンが絶叫しながら大剣を突き刺す。
「化け物、死ね。」
しかし、剣で防がれ首を斬られ雄牛面機械武装ごと踏みつけられる。
カオル姫が絶叫する。
「化け物だなんて失礼だわ。」
軍女神が、コンスタンの搭乗した雄牛面機械武装をコンスタンごと踏み潰す。
軍女神の中でカオル姫と下半身が結合しているミツルは、女神様を怒らせると恐いとムスコが縮む。
アタナシウスがアクスペリオスに斬られ、後退する。
「止めろ。地上に楽園を作るのだ。邪魔するな!」
アクスペリオスが反論する。
「楽園の為に、どのくらい人殺しの地獄をつくるつもりだ。」
アタナシウスが絶叫する。
「五月蝿い。黙れ!」
アクスペリオスが叫ぶ。
「黙るのは、貴様だ!」
アタナシウスが人型機械武装の特殊能力である幻でアクスペリオスの視覚と聴覚を誤魔化す。アタナシウスが裏に回り込み、姿勢を這いつくばるように低めにする。
アクスペリオスは剣を中段に構えたまま動かない。
アタナシウスが下からアクスペリオスへ斬りかかる。
アクスペリオスが飛び、アタナシウスに斬りかかる。
「嘘つきは、死ね。」
アタナシウスが倒される。
鷲族のインケンとナナ子は空中で戦っている。
インケンの搭乗する鷲面機械武装は、背中の翼で空中に飛び上がりミサイルを撃つ。ナナ子の円盤型機械武装は、ミサイルをミサイルで迎撃し、火炎放射をインケンに向ける。
空中戦では、互角だが軍女神が、下からインケンに火炎放射を向ける。
更にアクスペリオスからミサイル攻撃が加わり、避けきれずに地上に落ちる。インケンが怒鳴る。
「バカヤロウ、卑怯だ!」
アクスペリオスが言う。
「罪なき人を火あぶりにするお前たちこそ卑怯だ。」
ナナ子の円盤型機械武装とアクスペリオスの人型機械武装と軍女神の攻撃で、インケンが火だるまになる。
アクスペリオスは、聖地を奪回する為の十字軍を、神の名前を語り集め、女、子供まで殺した|長十字軍≪アルビジュア≫をつくったインケンを許せなかった。
ニコライは、ノンの犬型機械武装と激しく戦っている。しかし、他の三人は既に倒されている。特に軍女神は、圧倒的でとても勝てるとは思えない。
ニコライが叫ぶ。
「降伏する。」
ニコライは剣を投げる。
近づく戦女神のカオル姫が言う。
「手を付きなさい。」
大剣を捨てた獅子面機械武装に軍女神が馬乗りになる。
これで神話のように軍女神が獅子を従える。
だけど重すぎて獅子面機械武装が口を開ける。
恐いので心の中で叫ぶ。
(重すぎる。)
(面倒くさい話)
あくまでも、ミトラ教がキリスト教を乗っ取ったという仮説です。
仮説の根拠となるのは【タリズマン 秘められた知識の系譜】
グラハム・ハンコック ロバート・ボーヴァル
訳 大地舜
竹書房




