81.愚帝と戦女神
(今日から毎日二話ずつの投稿になりますので、宜しければお読み下さい。)
ノンの犬型機械武装が吠える。
「ワオーン!」
愚帝によって石像の間に張り巡らされた|超音波の罠≪ステルス≫が消える。
愚帝が怒鳴る。
「せっかく楽に死ねるように準備したのにグ!」
ノンが言う。
「余計なお世話ワン。」
犬型機械武装が十字剣を人型機械武装に突き刺そうとするが空振りする。
「あれれワワン?」
愚帝が嗤う。
「駄犬は幻影と遊べグ。」
愚帝の人型機械武装は、人の感覚に干渉し影響を与える特殊能力を持っている。
今もノンたちに視覚に幻影を見せ、聴覚には幻聴を聞かせ、臭覚にもニセの臭いを与える特殊能力を使っている。
ナナ子の火炎放射も幻影などに惑わされて当たらない。
人型機械武装がナナ子の円形型機械武装を蹴り壁に激突させる。
人型機械武装は、大剣を抜き、犬型機械武装に斬りかかる。
その時、アクスペリオスが搭乗している人型機械武装が|犬形機械武装≪コーギー≫を斬ろうとする人型機械武装の腕を斬る。
アクスペリオスは、見えている幻影ではなくノンを愚帝が狙うその時に、愚帝を狙ったのだ。
腕を斬られた人型機械武装が後退して言う。
「これぐらいの傷など平気グ。」
人型機械武装の斬られた腕が再接合する。
壁にめり込んでいた円盤型機械武装に噛みつき壁から犬型機械武装が引き抜く。
再び対峙するノンたちと愚帝。
「こっちだって平気ワン!」
円盤型機械武装は後ろに移動して援護に回る。
単純に見れば三対一。しかし、愚帝の人型機械武装は、幾つかの特殊能力を持っている。
今も、愚帝は人型機械武装の特殊能力を使って倒れているコウモリ族たちから生命力を吸い上げている。
ノンとアクスペリオスは、自分たちの周囲に光るバリアを意識して愚帝の人型機械武装から伸びてくる黒い触手を消滅させている。
愚帝が勝ち誇ったように言う。
「触手をいつまで防げるのかな。」
「バカにするなワン!」
ノンの犬型機械武装が十字剣で斬りかかる。
アクスペリオスの人型機械武装もノンと反対側から斬りかかる。
しかし、愚帝の人型機械武装の触手は愚帝の周囲全てをカバーしている。
「闇よ、燃えよコン!」
円盤型機械武装からの火炎放射でも、触手は少し消えるだけで愚帝の人型機械武装に届かない。
愚帝が叫ぶ。
「さっさと諦めて死ぬグ!」
愚帝の人型機械武装から三つの闇の塊が現れる。
ノンとアクスペリオスとナナ子の搭乗している|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫に闇の塊が接近する。
ノンが十字剣で斬りつける。しかし、ノンの十字剣が凍りつく。
「闇に接触するだけでも凍りつくグ。」
ノンたちは触手の切断だけでも、手一杯なのに闇の塊までは手が回らない。
ナナ子の全力の火炎放射も闇の塊に消され、端が凍りつく。
愚帝が叫ぶ。
「さあ、我のエネルギーとなるグ!」
闇の塊がノンたちそれぞれに接触しようとする。
その時、いくつかの光輪が闇の塊を切り裂いて愚帝の|人型機械武装≪バンパイア≫に向かう。愚帝はとっさに避けたが、それでも腕が飛ぶ。
愚帝が怒鳴る。
「邪魔するのは、誰グ?」
壊れた入口から、多手型機械武装が現れる。 軍女神とも言われる伝説の存在だ。
(ここで、少し時間をまだノンたちが愚帝と戦う前に戻す。)
ズシオウたちの|機械武装兵≪メカアーマー≫は今回は危険過ぎるので、第九層の壊れた入口の外で待機している。
ズシオウたちが待機している状態は、そのまま監視している状態でもある。
そのズシオウたちの監視している中、不格好なコウモリ族が飛び上がろうとして飛べず何度も地面にぶつかってしまう。
不格好という意味はコウモリ族にしては腹が出ているので、まるでブタにコウモリの羽根をつけた感じである。
一方の不格好なコウモリ族と思われている者は、しきりに汗をかきながら第九層から逃げようとしてはいるが、失敗ばかりしている。
「クソが!大金をはたいて買ったのに役立たずとは。」
どうにもどうやら体重オーバーで飛べないようだ。
彼が失敗している間に周囲は、ズシオウたちの|機械武装兵≪メカアーマー≫たちに囲まれる゙。
ズシオウが彼に問いかける。
「もしかして、ヘイゾウか?」
ズシオウはまるっこい体型と声がヘイゾウに似ているので聞く。
そのコウモリ族もどきは首を振り叫ぶ。
「違う!違う!俺はコウモリ族の技術者だ!」
風音が言う。
「つまり、技術者だから普段はデスクワークで飛んでいないから、飛べないという意味カン?」
コウモリ族もどきは言う。
「その通りだ。ところで相談だがいくら払えば逃してくれる?」
アンが当然のように問う。
(この場で適当なウソを言われて逃してはならない。)
「今、この場で払えるの?」
コウモリ族もどきが言う。
「払うのではない。金塊が隠してある場所を教えるから逃がしてくれという話だ。」
風音が指摘する。
「さっきはいくら払えばと聞いてきたのに金塊カン?」
「言葉のあやだ。金を渡す事にかわりはない。」
ズシオウが断言する。
「やはり、お前はヘイゾウだ。」
「違う!違う!何度言えばいいんだ!」
風音が言う。
「ヘイゾウでないなら、この場で射殺カン。」
この言葉でコウモリ族もどきの動きが止まる。
「捕虜を希望する。」
「捕虜は要らない。お前たちは犯罪者集団だ。」
「なら、どうすれば逃してくれる?」
「お前の選択は二つカン。
一つは役立つ情報を渡して捕虜になる、
もう一つはこの場で射殺カン。」
一斉に銃口がコウモリ族もどきに向けられる。
既に痛みが限界になりつつあるズシオウが銃口を頭に突きつけ言う。
「今直ぐ死ぬか、ヘイゾウである事を認め、役立つ情報を渡せ。」
「ヘイゾウである事を認め、役立つ情報を渡せば殺さないと約束するか?」
ズシオウの表情が歪む。
本当はこの場で直ぐに殺したい気持ちをやっと抑えて言う。
「約束する。」
暫しコウモリ族もどきは考え、ズシオウを見て言う。
「分かった。ヘイゾウである事を認め、役立つ情報を渡す。」
アンが言う。
「早く言いなさい。」
ズシオウが銃口をコウモリ族もどきの頭につけている。
「愚帝の使う機体はほぼ無敵だ。ただ戦女神だけには敵わない。」
すぐさまコウモリ族もどきの話がイシスの舟に伝えられる。そして急遽、イシスの舟の運用を緊急運用(防御専用)に変更し、|多手型機械武装≪ドルガー≫、またの名は戦女神が出撃する。
愚帝は目の前に現れた|多手型機械武装≪ドルガー≫を信じられない。
「何故、動かせるグ!」
愚帝たちは、イシスの舟にあった深層機械武装のうち、利用できるものは全て持ち出した。持ち出さなかったものは、余りに胴長短足で利用できない犬型機械武装と、操作が分からない円盤型機械、それに多手型機械武装だ。
前後左右に制御装置と十八本の手を持つ軍女神は伝説では、七神が力を合わせて作ったと言われている。
しかし、操作する席は一つ、人が一人で操作できない|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫だ。
愚帝が叫ぶ。 「操作できるはずがないグ。」
多手型機械武装がゆっくり歩いてくる。多手型機械武装の青い光で触手が消えていく。
その様子から愚帝は、前後左右の制御装置と十八本の手を操作するのでやっと動いているように思えた。
なら、最大数の闇の塊をぶつければ、軍女神でも対応できるはずがない。
「凍りつくがいいグ。」
愚帝は、最大数の闇の塊、九つを現出させ、ノン、アクスペリオス、ナナ子のそれぞれに投げ、残りの六つを多手型機械武装に投げる。そして、大剣で斬りつける。
多手型機械武装の1つの手から光輪が闇の塊に向かう。別の手が持つ盾が人型機械武装の大剣を防ぎ、更に別の手が持つ大剣が人型機械武装の首を断つ。光輪はあっという間に六つの闇の塊を消滅させて、ノンたちに向かった闇の塊へ向かう。
人型機械武装がバラバラに分割され、胴体が半分にされてしまい、緊急脱出装置で|人型機械武装≪バンパイア≫から愚帝が逃げた。
「クソグ!ここは逃げる゙が正解グ!」
しかし、多手型機械武装が持つ大きな法螺貝が響き、愚帝が動けなくなる。
「何だとグ!」
そこへ別の手から炎が吹き付ける。
ギャーーー。
愚帝が悲鳴と共に塵になり消える。
ノンが言う。
「助かったワン。」
ナナ子も言う。
「ありがとう。」
しかし、|多手型機械武装≪ドルガー≫からはなんの返事もない。
アクスペリオスがノンとナナ子に言う。
「二人は、そっとしておこう。」
多手型機械武装の中ではミツルとカオル姫が、余りに接触していたので愚帝が消えたら我慢できずに二人は始めていた。
この|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫は、二人が向き合い、ぴったりくっついて操作するタイプだった。
だから、操作する席は一つ、ただ操作する者は二人。
愚帝が消えると早速二人は我慢できずに合体を始めたのだ。
ノンもナナ子の裸身のお尻を思い、ナナ子と共にイシスの舟へ急いで戻る。
アクスペリオスが言う。「若いっていいな。」
アクスペリオスは若い者たちの熱気に当てられるが、ユキを思ってやはり駆け出していた。
なお、ヘイゾウは、ノンたちの話から確かに役立つ情報をズシオウたちに提供したので捕虜として収容する事になる。
ヘイゾウが変身用スーツを脱ぎ、パンツ一丁になり、手錠をはめられぼやく。
「こんなはずではなかった。」
それを見ているアンがズシオウに聞く。
「殺さなくても良かったの?」
「良くはない。だが約束は約束だ。」
「私にとっては良かったわ。」
「何故?」
「自分の兄が人殺しにならなかったから。」
ズシオウがアンを見る。
「俺にはすぎた妹だ。」
ズシオウたちもイシスの舟に向かう。




