80.ボヘミアンと石像の間
アクスペリオスは、人型機械武装で特殊能力を発動した為、自分の少年だった頃を思いだしている。
特殊能力は深層意識にまで意識を深める必要がある。だから過去の記憶、例えそれが父親殺しの相談であるとしても、吹き上げてしまうことがある。
今回、吹き上げた記憶は、彼の少年の頃の記憶だ。
彼の父親は、母親の稼いだ金を使い込み酒で眠っている。
母親が離婚しようかと聞くので、殺して裏山に埋めた方がよいと彼は提案している。
しかし、彼は母親と共謀して父親殺しをしなかった。
これは何も父親に同情したとか言う事ではない。
彼が父親を共謀して殺さなかった理由は、彼は母親もまた信じていなかった為だ。
彼が母親を信じない理由は、彼がまだ小さな頃、母親が彼を連れてある家を訪問した時、母親が言った言葉だ。
「この家の子供になるかい?」
彼には答えることができなかった。
普通の子供が母親から聞かれて答えられる質問ではない。
母親は、ここの夫婦には子供がいないのを彼に説明した後、母親が言う。
「今の生活にはうんざりだが、子供を残して離婚すれば、子供がどうなるか不安だ。だから子供をどこかの養子にすれば、自分は一人で生活できる。」
彼にはマリアの絵がかけてある玄関だけが母親の発言と共に記憶に残る。
今は、母親が疲れていたことが分かる。
母親がいくら一生懸命働いても、父親が社長になる夢を追い続けていつも金で苦労していることに、心底嫌気がさしていたのだという事情も分かる。
それでも彼にとって女とは、母親の延長であった。
母親さえ信じることができない男が女を信じれるわけがない。
だから、誰とも夫婦になることを考えなかった。
彼は自分は永遠の放浪者なのだと思っていた。
彼は、ユキが何を心配していたのか、この時分かる。
|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫の特殊能力、深層意識まで連結した時、人は自らの心にある暗黒と向き合う。
暗黒の渦が彼を飲み込み始める。
その時、彼の心に一筋の光がさす。
ユキの顔が浮かぶ。ユキは一途に彼を追い続けていた。
ユキとならやり直せるかもしれない。
その思いの光が彼を暗黒の渦から開放する。
彼は最近まで人生を諦めていた。人々の社会がどうだろうと所詮、人々の行為の結果である。
確かにウソつきは良くない。しかし、ウソつきのウソをいつまでも信じることは、同じように良くない。
世の中の不幸の原因は、心の問題であり、感情の問題だ。
彼の父親は自らのコンプレックスを解消する為、社長になろうとして借金をし、あわや息子である彼に殺されそうになる。
そして彼は、占いにはまり宗教団体にはまる。
そして彼は宗教団体が、営利企業であることを理解して宗教団体を去る。
ほとんど宗教団体は営業活動のツールと営業マンを使って信者の票と金を集めることが目的だ。
販売している商品は、信じる者は救われるという安心感である。だから本当の病気にはほとんど効果がない。
しかし、中にはミトラ教の流れ、波動と瞑想を使って現実に干渉する密教がある。
実際に飛んでみせる大道芸をする教祖すらもいる。大道芸をする教祖は、自分こそ覚者だと自称していたが、三流の霊媒でしかない。
結跏趺坐の状態で|大道芸≪ジャンプ≫をすることが、覚者の証明になるとこの教祖は吹聴しているが、大きな勘違いである。
ストレスが溜まれば溜まるほど|大道芸≪ジャンプ≫は高くなるという事実を彼は知らないのだ。
|大道芸≪ジャンプ≫は空中浮遊ではない。
ただ、救われたい者が救われたいから、信じてしまう者がいる。
分かりやすく例えるなら、擦り傷なら我慢することもできるが、骨折は麻酔を使って手術がいる。
心の傷が軽ければ人は自然治癒てきるが、心の骨折には、麻酔を使って手術がいる。
しかし、宗教には、医学と違い客観的試験がないのでヤブ医者だらけである。
1つだけ言えることは、ウソは方便にならない。ウソで自分を洗脳すると、現実が見えなくなり、無限とも思える地獄に陥る。
ノンが動かないアクスペリオスを心配して地面に犬型機械武装で座り、人型機械武装を見ている。空中では円盤型機械武装でナナ子がやはり心配して見ている。
暫くしてアクスペリオスが意識を表面意識に戻して言う。
「大丈夫だ。」
アクスペリオスが自らの深層意識の暗黒から抜け出して言う。
「俺には、待っている女がいる。」
地下要塞の最下層、石像の間に、神族の売国伝やアングリ議員、サンショウウオ族の太夫ヘイゾウなどがいる。彼らはこの部屋にある秘密の通路から逃げたいと愚帝に要望する為、今まで隠れていた他の部屋から集まっている。
売国伝は、自由主義大国で、大量の偽造郵便投票が発覚してここに避難している。(100%売国伝だけの票が袋で現れたのだ。さすがに偽造だとばれた。)
アングリは、その整った美貌を武器にして金で票を買ったことがばれてここにいる。
実際は東大陸の均一主義大国との結びつきが強く、売国伝もアングリも金と人員を支援されている。その為、頭脳主義大国の虎府大頭領から睨まれる。
自由主義大国も東昇帝国も頭脳主義国である。
自由主義大国において大量の偽造郵便投票など、投票者の魂に対する冒涜である。
売国伝は、いくら息子が均一主義大国のアダルト男優だからと言っても許さない。
その為、この地下要塞に逃げたのである。
同じように均一主義大国の代理のようなアングリ議員は言論制裁される。
地下要塞は、売国伝やアングリ議員のようなマスメディアによる言論制裁逃れの一時避難所でもある。アングリ議員が言う。
売国伝が叫ぶ。「さっさと安全な場所に亡命させろ!」
アングリが言う。「私達をすぐに脱出させて。」
ヘイゾウが怒鳴る。「いくらでも金は出すから、俺を逃がせ!」
既に門が破られている。彼らに余裕などない。
愚帝が問う。
「なぜ逃げるグ?」
売国伝が言う。「もうこの場所も安全ではない。」
アングリが言う。「私達たちは、戦闘員ではないわ。」
ヘイゾウが言う。「ここなら大丈夫だと言ったのにウソだった。」
彼らは見た目と口先だけの者たちだ。
愚帝が問う。「共に戦う者は手を挙げグ。」
誰一人手を挙げない。
皆自分の事しか考えていない。
愚帝が配下のコウモリ族たちに超音波で指示する。
コウモリ族たちが売国伝、アングリ、ヘイゾウたちが超音波でき身動きできなくする。
愚帝が噛みつき血を吸い始める。
「わが力となって共に戦うのグ。」
売国伝が気絶し、アングリたちが泣き出し、ヘイゾウが逃げようと足掻く。
彼らをコウモリ族たちは槍でに殴り、意識を奪う。
売国伝、アングリ、ヘイゾウたち全ての血を吸った愚帝は言う。
「ここに置いていたのはこういう事の為グ。」
売国伝、アングリ、ヘイゾウたちは、いざという時に血を吸う為の愚帝の生きたエサだ。その為に一時避難所だと説明していたのだ。
愚帝は、背後にある秘密の通路に入り、中にある人型機械武装に搭乗する。愚帝が呟く。
「罠を仕掛けるグ。」
そして愚帝が石像の間に超音波の罠をはる。目には見えないが人の意識を刈る罠だ。その結果、コウモリ族たちが意識を失う。
そこへノンたちが入り口を破壊して現れる。
ノンの犬型機械武装が石像の間で吠える。
「ワオーン!」




