76.憤怒のゴリラ・後
大猿型機械武装に搭乗しているピエールは、怒りで頭だけでなく、全身を振るわせている。
もともと怒りを押さえることは苦手である。
それは、彼の両親がやはりストレスを押さえるのではなく、何かにぶつけることで解消することを小さい時から見ていたからでもある。
三つ子(三歳)までの両親の行動から人は基本となる性格が構築される。
後はその性格をそのままでも周囲に問題を起こさない人と、その性格が周囲に問題を起こしてしまう人の差になる。
周囲と問題を起こす者には、ここから二つの道が別れる。
1つはその問題の発生源について対処する道である。
もう1つは、問題について対処する道である。
問題の発生源について対処するのではなく、問題を力で対処するだけが、彼の両親の生き方であった。
彼はその生き方そのままで異端狩りに自分の怒りをぶつける。その彼が、吹き飛ばされた。
周囲を見て考えることなど全くない。
ノンが言う。「お猿のお尻は真っ赤ワン。」
わざとピエールを挑発する。
ピエールは目の前にいた犬型機械武装に向かって走る。
ノンの周囲にいた通常の機械武装は、後退している。
ノンとナナコは彼らが後退する時間を稼ぐ為に残る。
ノンの前で大剣が届きそうな距離に成ったところで彼の目の前に円盤型機械武装から火炎が炸裂し、再び大爆発が起きる。
事前に撤退することを考え地雷が設置してあるのだ。
その地雷の爆発を受け暫くして彼はまた立ち上がる。
ピエールがまた叫ぶ。「ぶっ殺す!」
大猿型機械武装の防御は、深層機械武装の中でも最高である。
彼の心に更なる怒りは加わるが、物理的なダメージはほとんどない。
怒りに頭がくらくらしながら彼が立ち上がる。
既にノンたちはかなり後退している。
姿が何処にも見えない。
「バカヤロー!」
彼が怒鳴る。
「ワオーン。」
ノンの遠吠えが遠くから聞こえる。
それが罠であることなど考えもせず彼は、声の聞こえた方角へ走る。
そしてノンの犬型機械武装が見えたところで、またも足元に火炎が円盤型機械武装から放射されて彼は地雷に吹き飛ばされる。
「絶対ぶっ壊す!」
彼は、また立ち上がる。
また、ノンたちの姿は消えている。
「ワオーン。」
遠くからノンの遠吠えが聞こえる。
「何度でもやるがいい!。絶対許さない。」
彼が怒鳴る。既に頭は怒りで割れそうなほど痛いが気にしない。
彼の大猿型機械武装には物理的には何の問題もない。
また、ノンの犬型機械武装の姿が見え、また火炎が円盤型機械武装が放射されて彼が地雷で吹き飛ばされる。
また彼は起きる。
またしてもノンたちの姿はない。
「ワオーン。」
再び遠吠えが聞こえる。
また彼が走ろうとした時、視界が真っ赤にそまり、彼は全身に痺れを感じて意識を失う。
ゆっくりと大猿型機械武装が地面に倒れる。
彼は脳内出血を起こして意識を失う。
ノンたちは、イシスの舟のデータベースから大猿型機械武装の性能が物理的には無敵であることを知った。
だからノンの特殊能力である低周波振動砲で操縦者にダメージを与えることにして後退した。
イシスの舟にあった形状記憶合金の鎖で縛り、大猿型機械武装は運ばれる。
ノンたちのところにズシオウたちが来る。
ズシオウがノンに言う。
「あともう少しで、やつらの本拠地に着く。」
ノンが言う。
「それにしても、心がポンコツばかりワン。」
ズシオウが言う。
「俺が言うのもなんだが、外見は華やか、でも実際はハリボテの世界だからな。」
ナナ子が聞く。
「では、どんな人がマスメディアに入るのコン?」
風音が言う。
「ほとんどは楽して沢山の金を稼ぐ事を目指す人々。」
ノンが頷き、言う。
「なるほどワン。大切な心は置き去りワン。」
ナナ子が言う。
「やっぱり、マスメディアは終わりコン。」
皆が笑う。




