73.貪欲のトブネズミ
地下要塞の第四層にあるのは、要塞というよりは宮殿である。
もちろん要塞であるから、周囲には厚い強化ガラスが前後左右と天井に設置してある。
ドブネズミ族のエテイエンヌは人型機械武装に搭乗しながら不満をもらしている。
「右を見ても、左を見ても、真っ黒ばかりチュ。」
自由を主張する頭脳主義の右も、平等を主張する均一主義の左も、トップは自らの利害で動くウソつきの心で真っ黒ばかりである。
エテイエンヌは深く深く絶望して、金を集める事に専念した。
それを他人は貪欲という。しかし、自分しか信じるもののないエテイエンヌにとって頼れるものは金しかない。
エテイエンヌは誰も信じないだけでなく、神も信じない。
だから、金をふんだんに提供した仙人計画に参加する。
これは、エティエンヌにとっては当然の行動だった。
「信じるものは、我と、我が身と、我が力チュ。」
そして、ひたすら金塊、金貨を集め、貯める。
その金塊、金貨は壁に作った空間に隠し、その空間をコンクリで埋めた。
エテイエンヌは誰も信じないので一人で宮殿のような強化ガラスの要塞でノンたちを待っている。
そこへ、円盤型機械武装に噛みついた犬型機械武装が現れる。
エテイエンヌがオール金歯で叫ぶ。
「このガラスの宮殿は無敵だチュ!」
宮殿の強化ガラスには、ミサイルも何も効かないバリアーが張ってある。
「お試しワン。」
ノンがミサイルを撃つが全くキズさえつかない。エテイエンヌが勝ち誇って言う。
「どうせ無駄だチュ。」
ノンが言う。
「全てはこれからの行動が決めるワン。」
そう言ってノンは、地面を掘り出す。
エテイエンヌは最初はそれを見ても馬鹿にしていた。
「犬らしく穴掘りか、無駄だチュ。」
しかし、ノンの背後に岩石の山ができる。
それを見てエテイエンヌが焦る。強化ガラスは地下にはない。つまり、ノンが強化ガラスのない深さまで掘れば、宮殿へ攻撃できる。
エテイエンヌが叫ぶ。
「止めろ。無駄チュ。」
無駄ではない事はエテイエンヌの叫びが照明している。
エテイエンヌの人型機械武装は、人型なので地面を掘るにはむいていない。
ノンの搭乗した犬型機械武装の姿が穴に消えると、エテイエンヌは大剣を出した。ノンが地面から出てくるところを狙い打ちする為である。
犬型機械武装の姿が見えなくなり、かなりの時間がたつ。
宮殿の地面をエテイエンヌは見て回る。
既にマティス犬族たちの機械武装も到着しノンを手伝いシャベルで堀り始め、掘り出した土石の山が次々にできる。
事前にナナ子から連絡が届いて機械武装用のシャベルがイシスの船から運ばれたのである。
地面を見るエテイエンヌは、忙しく回る。
ノンが堀るトンネル以外からもトンネルが掘られ始め、どこから現れるか分からないから、エテイエンヌは忙しく回る。
エテイエンヌが言う。「くそう。殺すチュ。」
エテイエンヌが大剣を突き刺す。
足元がぐらつき、エテイエンヌが大剣で足元を突く。地面が崩れエテイエンヌが地面の穴に落ちる。
落ちたエテイエンヌはそこで犬型機械武装を見てミサイルを発射する。
「死ねチュ!」
しかし、犬型機械武装の姿は消え、エテイエンヌの前は円盤型機械武装からの火炎でいっばいになる。
実は、ノンは地下にエテイエンヌの落とし穴を作り、その前にノン用の蛸壺を作った。
そして地面を削り、エテイエンヌが落ちるようにして待っていた。
ぐるぐる回れば、いずれ地面が崩れエテイエンヌが落とし穴に落ちる。
その時、ノンは蛸壺に避難して姿だけを鏡に写し、背後からナナ子に火炎放射機で攻撃してもらった。
炎に包まれたエティエンヌが叫ぶ。
「死にたくないチュ。」
エテイエンヌが地面をよじのぼる為に両手をふちにかける。そこを背後からノンは大剣で突く。
エティエンヌは意識を失いつつある間に自分がなぜ金に執着するようになったのかを思い出す。
エティエンヌはまだ小さく非力だった頃、エティエンヌは母親のトブネズミ族と共に物乞いをして生きていた。
しかし、その日はほとんど金が集まらず、母親がエティエンヌにだけわずかな食べ物の与えた。
「もう金がないのだよ」
「母ちゃんは?」
「母ちゃんはいいの。」
腹が減っていたエティエンヌは全て食べ、母親はそのまま永遠の眠りにつく。
もう、いくらエティエンヌが揺すっても、母親は起きなかった。
その後、エティエンヌは養子となり、勉強で頭角を現し、仙人計画に参加する。
もう、金を集め無くてもいいのかな?
死んだ母親が現れる。
もう、いいんだよ。
そうか、もういいのか。
エティエンヌの意識が炎の中に消える゙。
貪欲の宮殿は孤独な守護者の死で陥落する。
ノンは穴から出た犬型機械武装のお尻が少し炎ですすけているのを気にしている。
ナナ子が言う。「男の子だから気にしない。」
ノンが言う。「でも、・・・」
ナナ子が言う。「さあ、勝どきよ。」
ノンと仲間たちが勝どきをあげる。




