71.エリートとニート
地下要塞の地獄門を突発して更に下の階層へノンたちが向かう。
ノンたちが向かう先には、自由大国の幅土台大学の二十六人衆である神族のチャールズ・デイーンがいる。
もともと自由大国の幅土台大学は、自由大国の幅と土台《平等》を構築するための大学として設立された。
自由大国の政党は伝統的に自由党と平等党である。この内の平等党は均一主義の独裁大国とは、過去において協力していた。
その時期にチャールズは、愚帝の配下である陽貴妃と出会い、肉体関係を持つ。
神族であるチャールズにとっては、同じ外観を持ち美女である陽貴妃に口説かれたら肉体関係を持つのは当然だ。
しかし、チャールズは陽貴妃に理屈ではなく、実は破壊衝動に寄ってひかれていた。
チャールズが陽貴妃に会った最初の時、陽貴妃はチャールズに聞いた。「人類なんて滅びてしまえばいい、と思いませんか?」
チャールズはこの一言で陽貴妃に惹かれてしまう。
チャールズは陽貴妃と会う前から酒、タバコなどの自分を破壊することにひかれていた。つまり、音楽であればロック、破壊衝動を感じさせる存在なら、何でもチャールズはひかれる。
そして、陽貴妃は、それまでの全てを超える破壊衝動によってチャールズを虜にした。
後から陽貴妃が独裁国家の工作員であることを本人から聞いた時、チャールズは言う。
「例え、お前が悪魔でも、俺の愛する相手であることは変わらない。一緒に地獄へ行くだけだ。」
陽貴妃も言う。「本当に良かったわ。」
陽貴妃は、もしチャールズが陽貴妃との関係を終わらせると言うなら、チャールズを殺す予定だ。
そして今や愚帝を守る為に地下要塞の第二層にチャールズと陽貴妃はいる。
陽貴妃が薄手の肉体が見える姿でチャールズに問いかける。
「大丈夫でしょうか?」
チャールズが笑って答える。
「心配は要らない。」
陽貴妃が言う。「やはり、二人の楽園は無理では?」
チャールズが言う。「神の楽園から追放されたのだ。地の下に楽園擬きを作って何が悪い。」
チャールズは、どんな手段を使っても陽貴妃との二人の世界を守る決意を口にする。
チャールズが言う。「空にいれば、鳥の左右の羽根のように、地上では、繋がる枝のように二人はいつまでも一つだ。」
陽貴妃が思い出したように言う。
「そう言えばこれから来る駄犬は、高家の娘に見出されるまでは、どうやら愛嬌だけが取り柄のコーギー犬族だそうですよ。」
チャールズが嗤いながら言う。
「ひょっとして落ちこぼれのニートかもしれないな。」
陽貴妃が言う。
「なら、劣等感を突いて動揺させる手が有りますね。」
世界のエリートの中のエリートであるチャールズと陽貴妃は既に勝ったつもりになる。
第二層の門、肥沃の楼台は微細技術で作り上げた楽園だ。
チャールズが搭乗する人型機械武装は武器にも、楼台にも変形する。
チャールズが言う。
「必ず戻ってくる。」
チャールズは、深層機械武装の人型機械武装が格納されている倉庫へ向かう。
チャールズの姿が完全に見えなくなると、陽貴妃は、完全変身ゴムを脱ぎ、本来のコウモリ族の姿を現わす。これを着用すると体全体が変身する。
「フー、ウザイじいさんだ。」
陽貴妃は完全変身ゴムを見てチャールズが戻ってくる事を考えて、完全変身ゴムを拾い姿を消す。
陽貴妃が楼台から飛び立つのを見たチャールズが微細技術で作り上げた楼台を大剣と盾に変形させる。
陽貴妃が本当はコウモリ族であることは、既にチャールズは知っている。
チャールズが言う。「お前さえ無事なら俺はいいのさ。」
楼台は仙人計核と呼ばれる武器を変形させていた。仙人計核は無数の計算機の核を使って変幻自由自在の形状を持つ深層機械武装だ。
そして、この仙人計核をヒントにして、|均一主義≪コミュニズム≫大国は世界に対して|仙人計画≪スーパーフェイク≫を実施する。
仙人計画は、仙人計核のような優れた技術・知識を世界中から奪取する為に金と女を使った均一主義大国の作戦だ。
この作戦でまんまと絡め取られたエリートがチャールズだ。
チャールズが独り言を言う。
「それでもいいのさ。」
チャールズは、仙人計画を知った上で、今もここにいる。
それは、チャールズの深い心にある破壊衝動が満足するからだ。
そこへ円盤型機械武装に搭乗したナナ子と犬型機械武装に搭乗したノンが、マティス犬族の搭乗した一般の機械武装より一足早く現れる。
ノンが円盤型機械武装から離れ、チャールズと対峙する。
チャールズが拡声器で言う。
「私と陽貴妃を楽園から追い出そうとする者は誰であろうと許さない。」
ノンが言う。
「自分たちだけはダメワン。」
独裁大国は、一部の甲羅族だけが大金持ちとなり、他は貧困のままだ。
平等の果ての独裁国家のほとんどは、均一党員だけが優遇される国家だ。
チャールズが怒鳴る。
「世界は俺と陽貴妃だけの為にある。」
仙人計核の大剣がノンの十字剣と火花を散らす。犬型機械武装でもやはりノンは特大の十字剣だ。
後ろから円盤型機械武装のナナ子から火炎がチャールズに向かうが全て盾で防がれる。
チャールズがノンを挑発する。
「愛嬌だけが取り柄のニートには負けない!」
かつて前世ではタダロウは反論できなかった。しかし、ノンは勇気を持って反論する。
「|ブレーキ欠陥高級車≪ポンコツフェラーリ≫より良いワン!」
「何だとニート!」
「やっぱり自分の感情を管理できないポンコツワン!」
今まで他人をバカにした事はあっても、他人からバカにされた事がほとんどないチャールズが思わず激昂する。
その為、チャールズは繰り返し、同じ攻撃を繰り返す。
何回、何十回と激しく剣が火花を散らす。
火炎も何十回と盾にぶつかり盾が熱で赤くなり始める。
仙人計核は、所詮微細技術の集合体である。過剰な熱で結合が難しくなっている。
チャールズが叫ぶ。
「俺の楽園を奪うな!」
ナナ子が叫ぶ。
「盾よ!」
ノンが溶け始めた盾を貫いて|深層機械武装≪シンメカアーマー≫ごとチャールズを倒す。
「やっぱりポンコツだワン。」
自分の感情を管理できない者はポンコツだと思うノンだった。
チャールズが言う。
「俺の楽園が消えていく。」
チャールズが意識を失い、チャールズの深層機械武装が倒れる。
マティス犬族の機械武装たちとズシオウたちが歩いてくる。
ノンが勝利の遠吠えをあげる。
「ワオーーン!」
ズシオウたちが来てびっくりする。
ズシオウが率直に言う。
「ニートがよくエリートの中のエリートに勝てたな。」
「重要な事は、ポンコツかどうかワン。」
自分の感情を管理できない者はポンコツだと言うノンに苦笑いするズシオウだった。
ノンたちが更に前進する。




