69.摩多鬼畜ダダ
イシスの舟は、かつて大昔まだ神々が人類と共に地上で存在していた頃の乗り物であり、舟そのものが宇宙を行き交う宇宙都市であった機能を持っている。
そのイシスの舟が機能の一部を取り戻し空を飛んでいる。
その操縦はイシスの舟にある中央制御室にいるアクスレピオスとユキによって高次元意識を使って行われている。
彼らは意識を深層意識まで統合してイシスの舟を高次元意識で動かしている。
その為に今も二人は合体している。
ユキがアクスペリオスの顔を見る。
ユキが言う。「少し、休まない?」
既に|聖長十字軍≪セント・アルビジュア≫は壊滅している。
アクスペリオスが言う。「どうすれば休める?」
ユキが言う。「このまま、ずっと動かずにいて。」
アクスペリオスが頷き言う。
「後は、若い二人に任せよう。」
その若い二人、ノンとナナ子はイシスの舟の動力機関についてモモ子と将頼に代行してもらい、イシスの舟に残されていた深層機械武装の中に搭乗している。
イシスの舟に残っていた深層機械武装は、二台である。1つは犬型機械武装であり、もう1つは円盤機械武装だ。
この二台はそれぞれに特徴があり、普通では使えない為に残っていたと考えられる。
その二台に搭乗して二人は愚帝の地下要塞に向かう予定である。
愚帝のいる地下要塞は、地下深くの洞窟内にありイシスの舟では、その近くの上空までしか接近できない。
そこでノンが犬型機械武装に搭乗し、ナナ子が円盤機械武装に搭乗して地下要塞へ向かうのである。
既に夜の空を|深層機械武装≪シンメカアーマー≫と共に地下要塞の上空までイシスの舟は移動している。
|聖長十字軍≪セント・アルビジュア≫は殲滅して地上に敵対勢力はいない。
ノンとナナ子がそれぞれ深層機械武装に搭乗して、まずナナ子が浮かぶ。
ノンの深層機械武装がそれに接続する。ただその様子は、コーギーがフレスピーに噛みついている光景とよく似ている。
ナナ子が無線で言う。
「ナナ子、行きますコン!」
ナナ子は、イメージで尻尾を九本に増やして、操作を行う。つまり、この円盤型機械武装は、天狐族専用の機械武装である。
ノンが言う。
「ノンも行くワン!」
二人が二台で出撃して、既に壊れた洞窟の入り口に入って行く。後からマティス犬族たちの搭乗した機械武装兵が続く。
ノンとナナ子が|機械武装兵≪メカアーマー≫たちと地下要塞へ向っている頃、コウモリ族の|摩多鬼畜≪マタキチク≫ダダは、地下要塞を防衛するために|深層機械武装≪シンメカアーマー≫に搭乗して地下要塞の入口付近で待機している。
周囲には怒身ニコ会のドーベルマン族たちが|機械武装兵≪メカアーマー≫に搭乗して待機している。
コウモリ族の魔多鬼畜ダダは、愚帝と同じオーラバンパイアだ。
ダダは、いつも相手から生命力と才能を吸い尽くす。生命力と才能を吸い尽くされた相手は、廃人になる。
ダダにとっては、他人は自分にとってエサである。人がニワトリや、豚を食べるように、ダダは他人の生命力と才能を食べて自らの力と才能にしている。
そこに罪悪感はない。ダダにとって廃人を作るのは、自らが生きる為に必要な食事をすることであり、自分の存在自体が寄生虫であることは考えない。
なぜ寄生虫なのか、そんな事を考えることはない。ただ自分が生きたいように生きる為に、他人はエサとして存在する。
ただ、最近白昼夢に祖母が悲しそうな表情で現れる事がある。それだけが気がかりだった。
そのダダが、唯一敵わないのが、愚帝だ。魔多鬼畜ダダが生命力と才能を腹いっぱいに吸い尽くして地下要塞に返ると、愚帝がダダからほとんどの生命力を吸いとってしまう。
そして、ダダは再び外で生命力と才能を吸い尽くす為に地下要塞から出るのだが、今回は人型機械武装に搭乗して地下要塞を守るようにと言われた。
イシスの舟にあった|深層機械武装≪シンメカアーマー≫のほとんどは、各国が持ち出している。
残っていたのは、胴長短足でしか搭乗できない犬型機械武装と使い方が分からなかった円盤型機械武装だった。
そして持ち出した深層機械武装のうちの1台が地下要塞にも防衛の為に配備してある。これを愚帝はダダに与えて言う。
「駄犬たちを潰せグ。」
いつもと違い、生命力と才能を吸われない。
ダダが答える。「仰せのままに。」
とりあえず生命力も才能も吸われないのは、戦う為だとダダは理解する。ダダが石像の間から出る。
しかし、戦って勝てば戻ってまた生命力と才能を吸われるのだろうとダダは思う。
そして、ただ一言ダダが言う。
「やってられないな。」
ダダが周囲を見て、誰もいないことを確かめて離れる。
ノンたちが搭乗する深層機械武装と各国が劣化コピーして作った機械武装は、深層意識の能力を使えるかどうかが違う。普通の機械武装は、物理攻撃しかできないが、深層機械武装は、非物理攻撃も可能だ。
だから非物理攻撃である生命力と才能を吸い尽くす能力を持つダダがこの人型の|深層機械武装≪シンメカアーマー≫を任されたのだ。
ダダが洞窟の入口付近(この先に地下要塞がある)にいると、円盤に噛みついた深層機械武装が来た。
ダダが怒鳴る。
「お前の生命力をよこせ!」
ノンが言う。
「嫌だワン。」
ダダの深層機械武装から黒い触手のような影がノンへ向かう。ナナ子が宝炎剣をイメージして炎で切りつけるが、切れてもすぐ伸びる。
たちまちノンとナナ子の|深層機械武装≪シンメカアーマー≫が黒ただ触手に巻き付かれてしまう。
ノンの意識が暗転し、黒い霧の世界に取り込まれる゙。
ノンの意識が暗転する中、鼻がひくひくして老婆の臭いを嗅ぐ。
(助けてやってくだされ。)
ノンの意識に老婆の言霊が聞こえる゙。
嗅覚を頼りにクンクンしてノンが老婆を見つける。
老婆は黒い渦を悲しげが見ている。
そして、黒い渦にノンが意識を向けるとダダの過去が展開する。
まだ若いダダは芸能界と呼ばれる世界に憧れていた。
しかし、実際は芸能界という外見は華やかな世界が、外見だけ華やかに見せているハリボテの修羅の世界である事にいやでも気づく。
才能がある者ほど才能を妬み潰そうと鬼の心を持つ者が言葉を刃にして攻撃する世界。
普通なら十分な運の強さを持つ者も、その運の強さより強い運を持つ者に蹴落とされる世界。
その世界の中で、妬まれるほど才能がなかったダダは、何とか生き延びていた。
「このままじゃダメだ。」
強烈な嫉妬を持ちながらダダは日々、生き延びていた。
そんな中、ある才能と運を持つ若者にダダがであう。
強烈にダダはその才能と運に嫉妬し、自分に取り込みたいと願う。
その時、ダダはオーラバンパイアに変わり、その若者から才能と運と生命力を奪う。
後で、ダダはその若者がダダに全てを奪われて、暫くして自殺した事を知る。
それを聞いたダダは、当然だろうと思う。
運も才能もない者は、強烈な嫉妬を持って生きるしかない世界が芸能界だ。
その後は、ダダは他人から才能と運と生命力を奪い続けて、黒い渦が大きくなる。
老婆が黒い渦の中心を指し示す。
「これ以上、悪事を重ねてさせてはいけません。」
ノンがダダの心臓にかけて、光の刃を深層機械武装から放つ。
光の刃が、ダダの中核にある暗黒の塊を破壊する。その瞬間、ダダに集まっていた生命力と才能の光がバラバラになる。
急速に力がなくなるダダが叫ぶ。
「何をした?」
「魔の核を壊したワン。」
「なぜそんな事をする?」
「泥棒は犯罪ワン!」
ダダが言う。
「余計なことをするな!」
「余計はお前ワン。」
他人から生命力と才能をむしりとって生きるしかない寄生虫のダダは、余計な存在と言われ激怒する。
「殺す!殺す!殺す!」
搭乗している深層機械武装の全ミサイルを発射しようとする。
しかし、ナナ子が深層機械武装を宝炎剣の炎で包む。発射しようとしたミサイルが誘爆して洞窟内が煙で見えなくなる。
ダダは死ぬ直前にやっと思い出す。
なぜ他人から生命力と才能を盗むようになったかを。
(最初は、他人に対しての嫉妬だった。)
狂いそうなほど他人の才能に対して嫉妬して、その才能が欲しいと思った。
(どうしても欲しくてたまらない。)
ダダは心の中で他人の才能を食べていた。その結果、才能を食べられた他人は無能になり、自分には才能が現れる。
一度でも他人から才能を盗むと、後は止まらない。いつの間にかオーラバンパイアとなっていた。
ダダから意識が消失していく。
その時、ダダの祖母が現れ、ダダに寄り添う。
「婆ちゃん。」
「ダダよ。苦労したな。」
「婆ちゃん。俺、、。」
「人は誰でも間違える。」
「お前も間違っただけだ。」
「だったら、俺は。」
「婆ちゃんとやり直そう。」
ダダが頷き、ダダの意識が消える゙。
周囲では、怒身ニコ会のドーベルマン族が搭乗した機械武装とマティス犬族の搭乗した機械武装が戦っていたが、ノンとナナ子が勝ち、ダダが搭乗していた|深層機械武装≪シンメカアーマー≫か動かなくなり、倒れるとドーベルマン族たちは撤退を始める。
深層機械武装には機械武装では敵わない。




