67.カトリーヌと審判
これは、風音が|腐乱≪フラン≫国の国軍参戦の情報を伝える前日の出来事である。
愚帝がマスメディアするマスメディアの世論、闇ミトラ教会、そしてルイ苦世もが、国軍の参戦を望む中、ゴリラ族のギーズ公は、まだ判断を迷っていた。
それは、前任者たちからの不文律である宗教戦争への非介入の方針だ。
これだけがギーズ公に最後の決断を迷わせていた。
「神の啓示でもあればな。」
ギーズ公は考える事に疲れ眠る事にする。
いつも考える゙事に疲れ眠ると不思議と回答が聞こえる゙ので、今回も寝る事をする。
腐乱国の参謀総長、ゴリラ族のギーズ公の寝ているベットの横の闇からコウモリ族のカトリーヌが出る。手を喉にあて声を変える。
カトリーヌがギーズ公の耳元で男の声で言う。
「我は神なり。汝に異端討伐を命ず。」
カトリーヌはギーズ公が寝ている間に耳元で話をしてギーズ公を洗脳している。これがギーズ公の答えのネタだ。
カトリーヌが呟く。
「これも愛。」
愚帝たちが信じ込ませている闇ミトラ教会では、本当の救世神であるミトラを隠し、人であるイエシユアを拝ませている。
これは信じる者は救われるという方便で、騙す者たちの天国を維持することが目的だ。
カトリーヌは自らが属している愚帝が作り出している地上の帝国を維持する為に嘘をギーズ公に吹き込む。
ギーズ公は熱心な闇ミトラ教会の信者であるルイ苦王の忠実な臣下である。
だからルイ苦王が憎む異端派には常々怒りを持っていた。
しかし、国軍を参戦させる事には迷っていた。
本来は、現代国家は宗教戦争に中立であるべきだ。
しかし、ルイ苦王もギーズ公もフラン国が闇ミトラ教会によって支配されることを望ましいと信じている。
ルイ苦王もギーズ公も腐乱国を愛している。
カトリーヌが呟く。「あれも愛。」
もうすぐ夜が明ける。ギーズ公が目を覚ます前にカトリーヌは愚帝のいる地下要塞へ戻る為に窓を明ける。そして夜の空へと飛び立つ。
もちろんカトリーヌは、愚帝を愛している。だからこそ、ギーズ公を洗脳している。これは愚帝に対してのカトリーヌの気持ちだ。
カトリーヌは何もない空間に言う。
「きっと愛。」
地下要塞の石像の間に着くと、そこには愚帝が待っている。
ギーズ公についての報告を済ませたカトリーヌを愚帝が呼ぶ。
近くに移動するカトリーヌを更に引き寄せ、愚帝が首に牙をたて血を吸う。
カトリーヌは愚帝に言う。
「愛しています。」
愚帝も言う。
「たぶん愛している。」
翌朝、ギーズ公は国軍の聖長十字軍への参戦を表明する。
ギーズ公は、その理由として神からの啓示があった為と説明する。
ギーズ公曰く
「神が、それを望まれる゙。」
腐乱国の国軍の一部が動員され、|大型飛行要塞≪ラストグレート≫とステルス戦闘機、重戦車が動員され、旧来の武器で武装している|聖長十字軍≪セント・アルビジュア≫に合流する。
ペリソンがルイにおべっかを言う。
「せっかく、歴史上でただ一人の聖王が参加するのです。この要塞の名前を、セント・ハルマゲドンに変えましょう。」
ルイが頷き、今回は、聖王が指揮するので、大型飛行要塞の名前がラストグレートからセント・ハルマゲドンに名前が変わる。
そして、|大型飛行要塞≪セント・ハルマゲドン≫が空にその巨大な姿を現す。
|大型飛行要塞≪セント・ハルマゲドン≫は七つのレーザー砲と十門のミサイル発射台を持つ|腐乱≪フラン≫国最大の兵器である。
主戦闘指揮室にいるペリソンから、副戦闘指揮室にいるルイたちのパネルにペリソンが写る。
ペリソンが言う。
「これぞ異端派への神による|最後の審判≪ファイナルアンサー≫です。」
最高司令官であるルイ苦王と参謀総長のギーズ公そしてカトリーヌはパネルに映された地図を見ていた。
ギーズ公が自慢気に説明する。
「予備役を総動員しています。異端派は紙クズのように吹き飛びます。」
ルイ苦王が満足して言う。
「天にいます父は、地を支配する父でもある。」
要するに、闇ミトラ教会こそ地上におけるただひとつの権威でなければならないとルイ苦王は言う。
|聖長十字軍≪セント・アルビジュア≫が進軍する。
当然、従軍するズシオウたちも進軍し、異端派にされた死者の子孫から財産を没収する。
異端派とされた死者は、財産家である。財産家からの財産没収こそが、|聖長十字軍≪セント・アルビジュア≫の当面に資金になるので、ムラオカは必死だ。
ムラオカが必死に財産没収を行うという事は、ズシオウたちが資産家から財産を強奪するという事になる。
多くの資産家を殴り倒し、泣き叫ぶ老婆や、子供たちから全てを奪う強盗団が、|聖長十字軍≪セント・アルビジュア≫の聖戦だった。
ムラオカを老婆から杖を奪い、子供から玩具を奪う。
「返して欲しければ、金を持って競売に参加しろ!」
ムラオカが奪われた老婆や、子供たちに怒鳴る。
奪った物を運ぶズシオウの顔は、あまりにも理不尽なので顔が歪む。そして思う。
(最期の審判があるなら、|聖長十字軍≪セント・アルビジュア≫こそが罪を償うべきだ。)
ルイ苦王たちの聖長十字軍が進軍している頃、ノンたちは、イシスの舟を動かそうとしていた。
制御室にいるのは、アクスレピオスと牛人族のユキ、動力機関にいるのはノンとナナ子、右粒子砲にいるのはサラとマサヒロ、左粒子砲はいるのはミツルとカオル姫である。
ミツルとカオル姫は急遽、ジェット機で東昇帝国から参加している。
本当のミトラ教会におけるイシスの秘儀を行う為には愛し合う男女が必須である。男女が台の上でひとつになることで、イシスの舟は稼働する。
ノンがナナ子に口づけする。ミツルとカオル姫、サラとマサヒロが口づけする。
その時、イシスの舟が地面を割って姿を現す。全長約五百メートル、幅五十メートルの特殊合金の超遺跡が空へ上る。
その光景を見ていたルイ苦王が叫ぶ。
「そんなバカな!」
カトリーヌとギーズ公が叫ぶ。
「早く攻撃を開始せよ!」
ペリソンが|大型飛行要塞≪ハルマゲドン≫のミサイル発射ボタンの全てとレーザー砲の全てのスイッチを押す。
|大型飛行要塞≪ハルマゲドン≫のミサイルが発射され、レーザー砲が光を発射する。
しかし、ミサイルは途中で方向がバラバラになり自爆し、レーザー砲は光が減衰して届かない。
ルイが叫ぶ。
「神の審判はどうしたのか?」
次の瞬間、大型飛行要塞をイシスの舟から粒子砲の光線が貫く。
そして、その後、空中にいるステルス戦闘機が墜落し、地上の重戦車が破壊される。
その光景を少し離れていた所で見ていたズシオウは思う。
(審判はくだされた。)




