表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/104

65.多感な少女とノン

 イシスの舟にある会議室でノンたちの前に神族のグレテルがいる。

 イシスの舟自体は古代を彷彿させる外見だが、内部はオールで漕ぎ出すイメージではなく宇宙船の構造だ。


 グレテルは椅子にも座らず白髪仮面に騙されたショックでただ立っている。

 ノンが言う。

 「朝より昼が温かいワン。」

 グレテルが頷く。

 「当たり前です。」

 ノンが更に言う。

 「昼より夕方は冷えるワン。」

 グレテルがイラついて言う。

 「当然です。」

 ノンがまた言う。 

 「この星には、四百年周期の昼と夜があるワン。」

 グレテルが叫ぶ。

 「何が言いたいの?」

 ナナ子が説明する。

 この星は地軸のずれで約四百年周期の温暖化と寒冷化が繰り返されていることを。

 グレテルが怒鳴る。

 「聞いたことない。」


 取り付く事が出来ずにいるナナ子に代わりサラが言う。

 「人には、善人と悪人がいることは知っているニャン?」

 グレテルが言う。

 「当たり前でしょ。」

 サラが更に言う。

 「悪人に騙された人がウソを信じると、その人は悪人に協力しているニャン?」

 グレテルが怒鳴る。

 「私がウソを吹き込まれていると言うの。」

 マサヒロが補足の説明をする。

 「温暖化に都合のいいデータだけ見せられて信じこまされた子羊だと言っている。」

 グレテルが怒鳴る。

 「いい加減にして。誰も私を分かってくれないのね。」

 人より少し寂しい少女のグレテルが言う。

 「人より少し純粋なだけよ」


 ノンが聞く。

 「どうしても行くワン?」

 グレテルが頷く。

 実は保護者と称するコウモリ族のムラオカが現れているのだが、その自称保護者がいかにも怪しいのでノンたちはグレテルを説得しようとしていた。

 しかし、説得できずにグレテルがムラオカにつれられ出ていく。



 ムラオカは|美男子≪イケメン≫の偽装外見を仮面でつっている。

 (まあ、若者はだいたい外見で判断するバカ者だからな。)

 このような内心は口から出さず優しい言葉でムラオカはウソをつく。

 「さぞ、寂しかっただろう。」


 グレテルもムラオカが|美男子≪イケメン≫であり、彼女に優しい言葉をかけたのですっかり信頼してしまう。

 「誰も分かってくれないの。」

 多感な少女は、多感であるが故に外見に騙される。



 グレテルがまだ残っている行くあてのない少年少女たちの前に立つ。

 戻る家庭がある少年と少女はノンたちの連絡で迎えの親族と共に帰っている。

 しかし、戻る家庭がない少年と少女たちがまだ残っている。

 その説得をリーダーであるグレテルにしてもらおうとムラオカはグレテルを立たせている。



 グレテルの背後にはムラオカが乗ってきた大きな船がある。少年少女たちの不安そうな顔がグレテルを見る。

 グレテルが言う。

 「私たちは間違ってしまったが、これで終わりじゃない。これからが本当の少年少女聖戦運動の始まりよ。さあ船に乗リましょう。」

 グレテルの言葉でやっと納得した少年と少女たちが動く。



 ムラオカは全員が乗るとムラオカが部下として連れてきたズシオウとドブネズミ族たちに命令する。

 「この子(グレテル)を殺せ!」

 グレテルが叫ぶ。

 「なぜなの?」

 ムラオカが言う。

 「悲劇のヒロインには死んでもらう。」

 ズシオウは余りの命令に、剣がふらつく。 

 ズシオウは、人を殺した事も殺されそうになった事も無かった。

 ムラオカがズシオウを蹴飛ばし、自らが剣を抜き、グレテルを刺す。

 「後は、全員奴隷として売り飛ばすから安心して天国へ逝け!」


 グレテルが死んでしまえば、本人の気持ちに関わらず利用できる。そして、ムラオカは他の少年少女たちは、奴隷として売る予定だ。それにはグレテルがもう邪魔だ。

 そこへ空からモモ子と将頼たちがグレテルたちを助ける為に現れる。

 たちまち剣と剣で火花が散る。

 ムラオカが怒鳴る。

 「邪魔だ。天国へ逝け。」

 将頼が叫ぶ。

 「冗談は地獄で言え。」


 ドブネズミ族たちが倒れてムラオカとズシオウがモモ子と将頼たちの前に残る。

 ムラオカが叫ぶ。

 「ダミー兵士を発射しろ!」

 ズシオウが今度は素早くダミー兵士の発射ボタンを押す。

 ダミー兵士は、実際は風船のような物だが外見はよくできているので無数に突如現れると、ムラオカたちがまぎれる事ができる。

 船の上に無数のダミー兵士が散乱して、モモ子と将頼たちがムラオカとズシオウを見失う。

 ムラオカとズシオウは姿を消した。


 ムラオカに刺され、モモ子が支えているグレテルが言う。

 「何がいけなかったの?」

 グレテルが涙を流す。


 時代は信じる世界(詐欺師が儲ける世界)から知る世界(情報の信頼度の世界)へと移行している。

 

 グレテルが目を覚ました時、彼女は傷に包帯を巻いてベットの上にいた。幸いにも、防刃ベストを着けていたので軽症だ。

 ノンが近くに来て言う。

 「あいつ(ムラオカ)は原子力財団の刺客ワン。」

 ムラオカは愚帝の側近であり、原子力財団の刺客でもある。

 グレテルが聞く。

 「なぜ、殺そうとしたの?」

 「死んだヒロインの方が使いやすいワン。」

 イエシユアと同じように、死人なら自由に利用できると原子力財団の五亜が判断したのだ。

 原子力財団がグレテルを利用するのは、原子力を売る為には、二酸化炭素を排出する石油、石炭などが邪魔なためだった。

 グレテルが呟く。

 「大人は汚いわ。」

 ノンが言う。

 「利用されてはいけないワン。」

 思わずノンに抱きつくグレテル、しかし、ノンは動けない。ノンの背後で、ナナ子がしっぽを強くつねっていた。


 ノンは背後にいるナナ子からメッセージを強くしっぽに感じている。

 (ナナ子以外の女と仲良くなんて許さないコン!!!)

 



 その日の夜、ナナ子が寝室に入るとそこには照明をつけず、闇の中に佇むノンがいた。


 ナナ子が聞く。

 「どうしたのコン?」

 ノンが答える。

 「グレテルと同じコン。」

 記憶の中にある人生、つまりフツウ・タダロウの時は、今日のグレテルと同じで操られた人生だった事をノンは思い出していた。


 「どういう意味でコン?」

 「|あの人生≪前世≫では何も考えていなかったワン。」

 フツウ・タダロウはマスメディア、世間(多くの他人)、両親によって自分自身の考えと行動を決めていた。

 いや、決めていたという意識ではない。

 ただそれらを単に時々により利用していた。

 

 自分でマスメディアや、両親、世間の言っている事を確認してはいなかった。

 フツウ・タダロウは、まさにフツウの人だった。


 だから、考えもせずにテレビや新聞の垂れ流す偏向報道により、迷える子羊となり、仮想ゲームに生き甲斐を見つけるしかない人生を送り、死ぬ。


 マスメディアは、自分たちの利害で偏向報道するものである。世間や両親はその影響を受けている。

 東昇帝国に明法先生がいるように、日本にも東大陸の|均一主義≪コミュニズム≫大国の危険性を指摘している人はいた。

 前世の明法先生のような存在は、あくまで日本の人々を前提とした法律では、日本の治安は維持できないと警告していた。

 平気で行政指導を無視する不法業者を矯正する法律がない。これらは実際に行われているが、マスメディアが報道しないのだ。明法先生が嘆いていた。

 「ステルス犯罪にマスメディアが加担している。」


 特に8月8日のアメリカでの中共スパイ摘発についての日本に対する警告はタダロウの記憶に残り、こうしてノンの人生でも思い出すほどだ。


 しかし、これらの事に関心を向けずタダロウはただ仮想ゲームに人生を消費して死んだ。


 「彼女と同じだと知ってショックだったワン。」

 そして、これらを意識した時、ノンのあそこが立たなくなった。心因性の不立症(インポテンツ)だ。

 いつもはナナ子とベッドに入る事を意識するだけで立つのに!

 ノンはとってもとってもショックを受ける。

 やはり、基本的には敏感な胴長短足犬族のノンだった。

 

 「まるで生ける屍ワン。」

 ノンの嘆きにナナ子がそっと寄り添い、ノンのあそこに手を添える。

 「あそこがフニャフニャだワン。」


 ノンが落ち込み耳が折れる。

 ナナ子がノンのあそこを優しく刺激する。

 「哀しかったのコン?」

 ノンがナナ子の胸に鼻を埋める。

 「苦しかったし、哀しかったワン」

 ナナ子がノンの目を見つめ、キスをする。

 「違う人生にしましょうコン!」

 ノンが頷く。

 ノンのあそこが立ちあがる。

 「あそこ復活コン。」


 ナナ子が照明をつけ、部屋が明るくなる。

 「過去は過去、全てはこれからの行動で決まるコン。」


 ノンがナナ子に抱きつく。




 

 次の日の朝、イシスの舟の会議室で打ち合わせをノンたちがしている。

 そこへ、風音が昨日のコウモリ族たちとの戦闘で彼らが残していた体毛検査の結果を報告している。

 「体毛は、ほとんどがドブネズミ族たちの体毛でした。それ以外は、コウモリ族の体毛とウサギ族の体毛がありましたカン。」

 ナナ子が思い出して聞く。

 「アンの行方不明の兄の可能性はコン?」 

 風音が少し自慢げに言う。

 「当然、調べましたカン。その結果、血縁者である可能性が極めて高いですカン。」

 ノンが自慢げに言う。

 「やっぱり白ウサギ族の体毛ワン。」   

 風音がノンの発言を補足する。

 ノンは、薄汚れた野ウサギ族にしか見えない体毛を、きっとアンの血縁者だから、アンからも血液を採取して検査したほうが良いと風音に言っていたのだ。


 ナナ子が感心するとノンが言う。

 「鼻は良いワン!」




 ノンたちがズシオウについて話をしている頃、ズシオウは両手を鎖に縛られ、ムチで背中を打たれていた。

 ムラオカは、今回の失敗はズシオウがグレテルを刺し殺せなかった事で失敗した事になっていた。

 「お前がノロマで愚図だから失敗しただろ!」

 ズシオウが初めて人を殺してしまうかもしれない状況で、相手は知らない人なのだから戸惑うのは当たり前だ。

 だから、ズシオウの顔は歪む。

 ムラオカはこれが見たいからズシオウをムチで打っている。

 「すみません。とか、ごめんなさい。の一言もないのか!」

 もとより今回の作戦は、リーダーであるグレテルを殺す事で少年少女たちがショックを受け、呆然自失の状態にして、奴隷商人に売るという作戦だ。これ自体成功するかどうかはやってみなければ分からない。

 この作戦は、まずノンたちが少年少女たちを助けない事が大前提だ。しかし、敵対していたからと言っても少年少女たちである。ノンたちが介入する可能性は大きくあった。

 それでも強行したのは、ムラオカの個人的趣味、つまりズシオウの歪む顔が見たい為だった。

 ズシオウをムチ打ちしているムラオカが怒鳴る。

 「全く馬鹿野郎だよ!」

 ズシオウの顔が更に歪む。

 

 ズシオウがぐったりすると、ムラオカはムチ打ちを止める。

 そして最早、余りの痛みで既に気を失っているズシオウに言う。

 「次の仕事は、偉大なる王の荷物運搬だからな。」


 これで、ムラオカは言った事にして、またズシオウをイジメる口実にする予定だ。

 ムラオカがズシオウをイジメるのは、ムラオカがイジメっだからである。

 では、何故ムラオカはズシオウをイジメるのか?

 真っ当な理由などない。そもそもイジメに真っ当な理由などない。

 ただ、ムラオカの破壊衝動がムラオカ自身ではなく、他人のズシオウに向かっているだけだ。

 

 (荷物運搬?、偉大なる王??)


 実はズシオウは気を失ったフリをしていただけで、ムラオカの言葉をしっかり聞いていた。

 しかし、基本的な基礎情報を知らないので分からない事だらけだ。


 そしてズシオウは知らない事が多すぎた。

 ズシオウを探しに東昇帝国にアンが来ている事も、アンが既にズシオウの手掛りを知った事も。

 まだまだ夜が明けるには、時間がかかる。




 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ