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64.グレた少女

 マスメディアを支配している愚帝のいる石像の間に愚帝とその側近二人がいる。

 一人は|外人仲介技能実習制度≪マルチピンハネ・プアワーク≫で多額の利益を得ているサンショウウオ族の太夫ヘイゾウである。

 もう一人は、そのヘイゾウから資金援助を受ける政治屋のサギ族のキシタ・フンオである。

 そしてマスメディアを支配する愚帝がいる。

 サギ族のキシタがにこやかにサンショウウオ族のヘイゾウに言う。

 「|技能実習生≪プアワークカー≫は、我々のために金を稼ぐ木ですな。」

 ヘイゾウが答える。

 「その通り。まさに我々の宝ですよ。」 

 愚帝が言う。

 「それもこれも、我がマスメディアを支配しているからであり、人々に知らしめない、考えさせない体制があるからグ。」

 ヘイゾウとフンオが揃って言う。

 「その通り!」

 

 愚帝が言っている意味は、ある事実を報道する際、偏向報道する事によって人々に誤解を与え、世論をミスリードしている事である。

 具体的には、核原子炉からの処理水についての報道である。確かに東昇帝国はトリチウムを含む処理水を海に流している。

 この事実だけを朝昇新聞は報道するが、このトリチウムの何倍ものトリチウムを東大陸の|均一主義≪コミュニズム≫大国は海に放出している。

 |均一主義≪コミュニズム≫大国のこの事実を、報道しない朝昇新聞などは愚帝の指示に忠実に従うトウセキの犬である。(トウセキの犬とは、泥棒の飼犬が聖人に吠えるように均一主義(コミュニズム)に洗脳された朝昇新聞などはコミュニズムの犬と言える。)

 

 そして、二酸化炭素についての偏向報道を世界規模で行った結果、騙される人々が大量に発生する。


 フンオが言う。

 「そう言えば、|少年少女十字軍≪プア・ウイズダム≫の彼女が来るのでしたね。」

 愚帝が頷き言う。

 「現代版、少年少女十字軍の|ジャンヌ≪捨て駒≫がもうじき来るグ。」

 三人が暗く嗤う。





 グレた少女がいる。

 彼女は、少しだけ他人よりも寂しがり屋で、少しだけ純粋な少女だった。

 ただ彼女自体は普通の外見で、取り立てて目立つ才能も無かった。そして、彼女自身は美男子の王子樣への憧れを普通に持つ少女だった。

 でも、学校にいても彼女の王子樣は何時まで待っても現れない。

 その上、彼女は他の生徒たちと馴染めず、高校生なのに今日も学校に行かず公園でブラブラしている。

 最近は何時かきっと美男子の王子樣のような彼が自分というシンデレラを見つけてくれると思っている。

 


 そんな彼女の前に、|美男子≪イケメン≫の外見をした白髪仮面が優しい言葉で言い寄る。

 「大人はみんな不純で自分の事しか考えていないのさ。

 だから、世界の未来は真っ赤な星なのさ。」

 白髪仮面は、仮面の効果により偽装外見をしているので|美男子≪イケメン≫の神族に見える。

 グレテルはまさに彼女が待っている|美男子≪イケメン≫の王子樣のような外見であり、彼女は一目で白髪仮面に心を開く。

 彼女が聞く。

 「私達はどうすればいいの?」

 「純粋な少女である貴女が立ち上がり人々に訴えるのです。」

 彼女の貧しい人生経験で、白髪仮面の偽善を見抜く事は無理だった。

 ここに一人の洗脳された少女グレテルが出来る。




 少女グレテル、横にはその少女を洗脳した愚帝の配下、白髪仮面がいる。

 彼女は神族でこの星が二酸化炭素によって温暖化して将来は、温度が上がり人が住めない真っ赤な星となると信じて|少年少女聖戦運動≪プア・ウイズダム≫を始めた。

 

 泣いて顔を歪めながらグレテルが愚帝に言う。

 愚帝は、この時白髪仮面と同じ偽装外見の仮面を付けている。

 「大人たちが真剣にこの星の未来を考えなければ、私達の未来はなくなってしまうのです。どうか私達に力を貸して下さい。」

 愚帝が答える。「もちろんですよ。純粋な聖戦士よ。私はあなた方の味方です。」

 グレテルが感激する。そこへ愚帝がイシスの船奪還作戦を持ちかける。

 「ところで、私たちのお金が極悪非道な強盗たちに奪われているので力を貸して欲しいグ。」

 グレテルが言う。

 「同じ神族として力を貸します。」

 白髪仮面は、白髪仮面も愚帝も神族で、この星の未来を心の底から心配しているとグレテルに説明している。

 白髪仮面が言う

 「先にみんなのところへ戻っていて。」

 グレテルが石像の間から礼をして出た。後に残った白髪仮面が愚帝に言う。

 「原子力財団の五亜代表からの推薦ですが、どういたしますか?」

 「原田常治の本などを読ませないように気をつけるグ。本当の事を知ったら捨てろグ。」

 愚帝の指示した著者、原田常治は、『気温の周期と人間の歴史』という本で、地球の四百年前後の気温が温暖化したり、寒冷化した結果の研究者である。

 この本はなぜその様な変化が起きるのかについての理論と実証である。

(諏訪湖の氷がはる現象の約五百年に及ぶ記録が実証となっている。)

 この本を読ませたら、グレテルはグレる。

 「それから、お前の正体がコウモリ族である事もバレてはいけないグ。」

 世界は人類として純粋な神族が純粋な心で導くべきという妄想がグレテルの行動における前提である。


 それから思いだしたように愚帝が付け足す。

 「それから宮脇強子の本も気をつけるようにグ。」

 宮脇強子は、白髪仮面の属している東大陸の均一大国(コミュニズム)について分析した本を出している。

 原田常治の本はあくまで気候分析が中心である。東大陸の民族についての分析は仮説である。

 「気をつけます。人々の愚かさこそが支配と金儲けの源ですから。」

 もともと二酸化炭素温暖化仮説は、原子力商売用の宣伝である。その仮説は温暖化利権にたかる売人が騙されやすい少女、グレテルを使って少年少女聖戦運動による布教である。

 これは金儲けを目的とした宗教団体(ビジネス)と変わらない。

 ノンの|あの人生≪前世≫で過去に起きた少年少女十字軍の悲劇が再び繰り返されようとしていた。




 石像の間の物置部屋で、ウサギ族のズシオウは、チリトリなどを持って準備している。

 ズシオウは石像の間に落ちている細かい毛などを見ているので、グレテルが何故、白髪仮面や愚帝を神族だと信じているのか不思議だった。

 首を傾げるズシオウにコウモリ族のムラオカが小声かなり言う。

 「愚か者は、言葉と外見で判断する。知恵ある者は、行動で判断する。」

 ズシオウの心に刺さる言葉だ。

 ズシオウの顔が歪む。

 ズシオウは甘い見通しと言葉によって東昇帝国に渡り、結局奴隷年地下要塞の掃除係になってしまった。

 ズシオウの顔が歪むのを見るのがムラオカの楽しみである。

 会見が終わり、愚帝たちが石像の間を出る。

 「さあ、掃除だ。掃除。髪の毛一本たりとも残すな。」

 全くの無茶な要求にまたしても顔が歪むズシオウ。

 それを見てストレス発散になるムラオカだった。





 イシスの船の金銀財宝は大量でまだ一部しか運び出していない。この状態でノンたちは、グレテルたちの少年少女聖戦運動に取り囲まれた。武装集団ではあるが、その集団は少年少女たちである。

 何万もの少年少女たちが、剣を持って取り囲む。彼らは盾をイシスの船に向け立て掛ける。


 一人で前に出てグレテルが泪を流して叫ぶ。

 「私達の未来を返して欲しい。」

 

 ノンたちが、迷う中ノンがナナ子たちに言う。

 「一人でいくワン。」

 ナナ子が言う。「大丈夫かしら?」

 ノンが言う。「可愛いから大丈夫ワン。」


 ノンが一人前に出る。

 ノンがグレテルに向かって言う。

 「あなた方は騙されてるワン。」

 グレテルが再び叫ぶ。

 「純粋な私達を信じないのですか?」

 ノンが再び言う。

 「信じる者は騙されるワン。」

 グレテルが怒り叫ぶ。 

 「私達の純粋な心を疑うのですか?」

 ノンが更に言う。

 「過去にも純粋な少年少女たちの十字軍が、奴隷として売られた事実があるワン。」

 グレテルが再び叫ぶ。

 「私達の神を信じる気持ちにウソがあると言うのですか!」

 ノンが白髪仮面を見て言う。

 「ウソつきを信じる者もウソつきワン!」

 グレテルが横にきた白髪仮面を見る。

 白髪仮面がグレテルを無視して叫ぶ。

 「神を信じる者たちよ。あの不信者を倒すのだ。」


 グレテルの横にいる白髪仮面にノンが斬りつける。

 白髪仮面の仮面が割れ、偽装外見が消えコウモリ族の顔が現れる。


 「神族ではないの?」

 周囲の少年少女から疑問が上がる。彼らはイエシユアと同じ神族が彼らを助けてくれると信じている。

 誰もノンと白髪仮面の戦いを見るだけで参加しない。彼らは純粋な少年少女が向かえば神が奇跡を起こして助けてくれると信じている。

 実際に戦う事を誰も考えていない。

 

 ノンの十字剣を何度か避け、白髪仮面を空へと逃げる。

 しかし、空にはマサヒロとサラがおり、白髪仮面を倒す。


 マサヒロが叫ぶ。

 「ウソつきが倒れた。」

 自分たちが敗北するなど考えてもいない少年少女たちはある者は座り込み、ある者は逃げだす。

 所詮は子供たちの集団である。

 幸いな事にノンたちはグレテルたちを奴隷として売りはせず、親元へと返す事になる。


 

 ノンがイシスの舟に戻る。

 そして、ナナ子におねだりする。

 「今日は、頭と心が二倍疲れたワン。だから、おやつのケーキは二倍ワン 。」

 ナナ子が怒る。

 「ダメコン。最近太りぎみコン。」

 ノンがうるうるした瞳でナナ子を見つめる。

 ナナ子が仕方なく言う。

 「二切れならいいコン。」

 ノンが喜ぶ言う。

 「やったワン。」


 出て来たケーキは、厚さが半分だった。

 ノンがナナ子を恨めしそうにみる。

 「ケチワン。」


 

 

 

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