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46.ジュディ

 サン・メールの祈祷所は、ダン、ダンと荒々しく扉が叩かれ、その振動が皮膚まで響く。

 祈祷所の中には、カラス族たちから逃げてきた神族ジュディ・紫音・鈴木と、今にも壊れそうな扉を心配そうに見つめる幼い娘、同じく神族のマリアがいる。


 ジュディがマリアを抱き締め、思わず祈る。

 「ああ、神よ! 娘だけでもお助けください。」


 葦の原の国、東昇帝国のサン・メールにある教会の祈祷所で、ジュディたちはカラス族たちに囲まれている。


 ダン。ダン。ダン。バリ!


 大きな金槌で扉が軋み、とうとう扉が壊れる。

 ジュディたちをここまで守ってきたグレートデン犬族のマーリンがジュディたちの前に進み剣を抜く。

 マリーンは、闇ミトラ教の魔女狩りには、疑問を持っていた騎士であり、ジュディから助けを求められて応じた∣光ミトラ教≪プロテスタント≫の戦士である。


 「私の後ろに下がってください。私が命にかえても二人を守ります。」


 大きな体格のマリーンがジュディたちの前に立つと、カラス族たちからの視線は遮られる。しかし、マリーンは一人でしかない。

 ジュディたちの横にいるこの教会の尼僧、猫人族のパムが思わず手をあわせて祈る。

 「神よ。どうか我らをお救いくださいニャ。」


 「おかあさま、怖い。」

 マリアがジュディにしがみつく。 

 「大丈夫よ、きっと助けが来るわ。」


 ジュディの言葉もむなしくカラス族が侵入しようと姿を現す。

 先頭のカラス族が祈祷所へ入り込む瞬間、そのカラス族の胸から槍の先がでる。

 ギョっとするマーリンに、カラス族の背後からサラが現れる。

 

 サラが言う。「待たせたニャン。」


 サラが短槍を振るい、次々とカラス族たちを撃退する。

 ジュディたちが逃げ遅れて祈祷所にいたのは、この場所をシズへの手紙で指定していたからだった。

 やっとジュディが待っていた助けが現れた。

 

 「はやく飛行船へ行くニャン!」

 続いてマサヒロがサラの前に立ち、カラス族たちを撃退する。マサヒロが促す。

 「さあ、二人ともサラと逃げて下さい。」


 サラがジュディと娘のマリアを抱えて飛行船へ飛びたつ。




 この祈祷所での出来事の数時間前、サラはシズから手紙をもらった。

 その手紙は捨てられていた赤ん坊のサラを保護した尼僧ジュディからのもので、シズに助けを求める内容だった。

 手紙を読んたシズは、直ぐにサラへ相談し、サラは早速、マサヒロ、ノン、ナナ子に事情を説明する。

 サラはノンから許可を得るとマサヒロと共に尼僧ジュディを助ける為、サラはマサヒロと共に飛行船で出発したのだった。



 祈祷所の回りは、カラス族たちで囲まれているが、サラがジュディたちを抱えて飛行船に移ると一斉に飛行船へカラス族たちが向かう。

 それを追いかけるカラス族たちをマサヒロが次々と倒す。

 やはり、空での∣霊獅子≪グリフォン≫の速さと力強さは無敵である。


 マサヒロが叫ぶ。「サラの恩人には指一本も触れさせない!」


 飛行船の中にサラとジュディ、マリアが入る。

 サラがジュディに言う。

 「まだ祈祷所にいる人たちを連れてくるニャン。」


 祈祷所の周囲では、マサヒロとマリーンがカラス族たちと戦っている。


 サラが猫人族のパムを抱えて飛行船へ飛び、マーリンは体重があるので縄梯子を下ろして、登ってもらう。

 マーリンが飛行船に入ると飛行船は祈祷所を離れる゙。


 


 ジュディがサラを見て言う。

 「あなたがあの時の赤ん坊なの・・・」

 サラが言う。「そうです。あなたに救われた赤ん坊です。」

 ここは、飛行船の中である。


 随分昔にジュディは捨てられていたサラを拾い、シズの世話をした。ジュディはその後、湖の近くにある都市マグダラに移った。

 ジュディは最近まで静かに暮らしていたのだが、闇ミトラ教会がジュディとマリアの命を狙ってきた。そこで大地主の管理人になったシズを頼って逃げてきた。


 飛行船を追って来たカラス族たちのほとんどがマサヒロに倒されカラス族たちは撤退する。



 

 ジュディたちはマーリンとパムも含め、サラの案内でサラの邸に入る。

 邸とその周囲は、サラの私兵である何人もの雑犬族たちが警備していた。

 マリアがその警備を見て言う。

 「凄いお屋敷だね。」

 「ええ、本当に安心できそうね。」


 厳重な警戒と頑丈な壁に囲まれた邸を見てジュディたちは、ほっと一息ついている。


 クレートデン犬族のマーリンも安心して言う。

 「これで、夜もちゃんと眠れますな。」

 ジュディたちの護衛であるマーリンは、夜も周囲に常に注意する必要があったので、十分な睡眠を取れていない。


 猫人族のパムが言う。

 「やっと魚付の食事を取れるニャ。」

 睡眠が十分取れないだけではなく、食事も十分なものではなかった。

 サラが笑いながらジュディたちに言う。

 「とりあえず今日の夕食は、お魚もお肉も十分な量をお出ししますニャン。」

 魚という言葉に反応して、パムが思わず舌なめずりする。


 サラがジュディに言う。

「お疲れでしょう。この邸で暫くゆっくりしてくださいニャン。」


 シズもジュディも出迎えに現れる。「よくおいでくださいました。」

 ジュディもシズの手を握り言う。「ありがとう。助かりました。」

 言葉は少ないが、ジュディとシズの目に涙がたまる゙。

 やっと娘のマリアを連れて、安心できる場所を見つけたジュディと、世話になったジュディとの再会に感情が抑えられない二人だった。


 マーリンが言う。

「まだ安心するのは早い。

 闇ミトラ教会の刺客たちは諦めない。」

 サラが言う。 

「今、調査しているニャン。」

 マサヒロは、ジュディをサラの邸で保護する報告と、闇ミトラ教会の調査依頼の為、神義庁へ行った。

 パムが言う。「あのカラス族たちぐらいなら大丈夫ですよね。」

 サラが胸を叩いて言う。「もちろんニャン。」

 サラもジュディたちもみなほっとした明るい顔をしている。





 サラの邸にある大宴会場では、サラがジュディたちと食事をしている。

 久しぶりのお魚に目を輝かせる尼僧で猫人族のパム、血がしたたるステーキを食べているグレートデン犬族のマーリン、更に積もる話をしているジュディとシズ。

 その中でサラは、マリアからの質問に答えている。

 サラの人生は波乱に満ちているので、マリアの質問はとどまる事がない。

 マリアが聞く。

 「もし、マリアとジュディを追いかける悪い人が来たら、サラお姉さんなら、どうするの?」

 サラがマリアの目を見て答える。

 「悪い人のお尻をペンペンしてあげるニャン。」

 これは、親が悪い事をした子供に対する躾けの1つだ。

 マリアがサラの手を握り言う。

 「サラお姉さん、大好き!」

 


 

 そこへマサヒロと神義官の新たな調査員となったグラハムがやって来る。

 騒がしい中、マサヒロが手を叩き言う。

 「静かにして欲しい、重要な事を今から話すから。」

 皆が静まる。


 グラハムがサラたちに言う。

 「偉大なる詐欺師(ブラックフィッシュ)、笛吹き男が大群を率いて来ます。」

 グラハムは、笛吹き男が約千人のドブネズミ族たちを率いて来ると説明する。


 その話を聞いたジュディが椅子から崩れ落ちる。

 「∣あの男≪人でなし≫がくるなんて、、」

 それを見たマリアが泣きそうになる。


 笛吹き男とは、闇ミトラ教の修道師で、異端派とそれを庇う人々を長十字架に磔刑にして生きたまま、火あぶりにする悪名しかない人でなしだ。

 その∣笛吹き男≪人でなし≫が、ここへドブネズミ族の大群を率いてやってくると聞いたジュディが絶望してしまうのも当然だ。


 マリーンは疑問をぶつける。

 「なぜ、こんなにも早く、しかも場所まで奴らが特定できるのだ?」

 グラハムは答える。

 「推測ですが、カラス族の生き残りがサラさんたちを助けた∣霊獅子≪グリフォン≫の事を手掛りにしたのだと想います。」

 ∣霊獅子≪グリフォン≫となれる存在は、今のところ、マサヒロとサラしかいない。


 ジュディが呟く。

 「ここも危ないわ、でも・・・」

 ジュディたちが逃げるにしても、闇ミトラ教会は世界の果てまで追ってくる。どこへ逃げればいいのか分からない。


 サラが崩れたジュディの手を握る。


 「戦いましょう。詐欺師に相応しい場所は、刑務所か地獄ですニャン。」


 「詐欺師に相応しい場所は、刑務所か地獄、、、。」

 ジュディからも同じ言葉がでる。

 サラは、今にも泣きそうなマリアに言う。

 「マリアとジュディをいじめる笛吹き男にお尻ペンペンするニャン。」


 マサヒロがサラを見て言う。

 「その通りだ。∣彼ら≪人でなし≫に相応しい場所は、刑務所か地獄だ。」


 サラとマサヒロが直ちにそれぞれの私兵を集める共に、二事情を話してカオル姫からの援軍を出してもらう事にする。




 神義官長官ノンの朝は、背を伸ばすストレッチから始まる。昨日はナナ子と夜にがんばってしまい、少し腰が痛いと横に寝ているナナ子を見る。


 前世でニートだった頃とは、全く違う。

 ただ生きているだけ、何か守る存在もない流されて生きる存在だった。

 例外は、世話していたコーギー犬だけが、彼をあの世界に留めていた。

 今は、守るべき存在も、仲間たちもいる。

 

 「愛しているワン。」

 ナナ子は既に目を覚ましている。ノンが手を伸ばしてお尻を触ろうとする。

 そのノンにナナ子が言う。


 「何か緊急事態コン。

  扉のむこうに人がいるコン。」


 新婚夫婦の時ぐらいゆっくりしていたかったと思うノンだったが、起き上がり服を着て扉を開ける。


 「多分、ウソつき、ゴロツキ、ロクデナシの笛吹き男ワン」


 昨日から、∣笛吹き男≪人でなし≫とその率いるドブネズミ族たちの対処で、神義庁は大騒動である。


 「でも、これで、磔刑での大量殺人にトドメがさせるコン」

 「分かっているワン。ガンバルワン!」


 守るべき人たちを守る為、いつもの伸びをしてからノンは扉を開ける。




 


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