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41.AIの殺し屋

 

 「するべきか、するべきではないか、

  それが問題コン。」


 ナナ子はまだ迷っている。結婚するべきか、結婚を待つべきか。既に天狐族でも、コーギー犬族でもナナ子とノンは結婚できる年齢になっている。

 獣人は、一般的に寿命が短いので、ナナ子やノンの年齢で結婚している者がいる。

 しかし、高家のお嬢様としては、カオル姫のように婚姻届けを出さず、結婚式もなしに結婚生活を開始してしまう事には、迷いがある。

 ナナ子の小さな頃からの夢では、ノンからプロポーズされて結婚式を挙げてから、結婚生活を始めたい。

 そして、ナナ子としては、自分は純情可憐な乙女を演じて物語の姫様ごっこをしてみたい気持ちも残っている。


 だから、待つわ、私は何時までも待つわ、ノンからプロポーズまで待つわ。やっぱり待つ事にするナナ子だった。




 幼鬼は全身を大きなフードで隠し、風俗街の雑居ビルの地下二階の地下室にいる。

 雑然とした部屋には、いくつもの積立情報機器(タワーマシン)がある。


 そこで、AIの殺し屋と言われるアンドロイドのシゲフサに、幼鬼はノンの処理(殺し)依頼に来ている。

 シゲフサは脳と心臓以外は全て機械であり、シゲフサの脳はAIのデータを使うことができる。


 AIとは、膨大な蓄積情報(ビックデータ)を使って最適な方法を提示する辞典である。

 従来の辞典と異なるのは、つねに膨大な蓄積情報(ビックデータ)が最新化している事である。

 人は普通は、一回習得した仕事の仕方を日々変える訳ではない。しかし、AIは、日々の情報により効率的な方法に変化させ事ができる。


 幼鬼は、自称能力者たちのあまりの妄想(でたらめ)に、ウンザリして、最先端の科学に期待する事にした。


 「いくらで受けるのか?」


 「四億円!」


 無毛の頭に何本もの電極は僅かに光る。

 頭に刺さっている電極はシゲフサの感情を現している。電極が少しだけ光ったシゲフサから機械でつくる自動音声が返る。

 電極の様子から幼鬼は全く交渉の余地のないことを理解する。幼鬼が小切手をシゲフサの義手に渡す。

 AIの殺し屋、シゲフサがノン殺しのプログラムを開始する。




 神義官会議室で、ノン長官たちは極東大陸にある均一主義(コミュニズム)大国の歴史について、銀狼族のミヤワキ強子博士から大国の歴史と体制(キャラクター)についての講義を受けていた。

 強子博士には、『皇帝たちの極東大陸』、『事実の文殊国』などの著書がある。

 強子博士からの話を聞いてマサヒロは感想を言う。


 「あの大国は、大家族(争族とも言う)単位でしか考えない。つまり、大家族以外は全て敵。だから、ほとんどのデータが歪められているのよ。」


 昔から自分たちの大家族単位でしか思考と行動を取らない。つまり、本当のデータは大家族にしか伝えない。その結果、公開させたデータはほぼ偽情報だらけになる。強子博士が言う。


 「わたしは、事実を事実として言いたいのよ!」


 牙を剥いての発言は、さすが大草原を走る銀狼族だけに鬼気迫るものがある。マサヒロが聞く。


 「彼らの行動基準が大家族であり、大家族以外には似情報しか渡さないのであれば、高度情報社会に移行するととうなりますか?」


 「高度監視社会になるけど、社会が似情報で壊死するわ。」


 強子博士が説明する。

 似情報に基づいた判断は社会を不信と疑惑を蔓延させ、似情報から情報を検出する為に、余分な労力(ワイロ)を必要とする。


 その結果は、均一主義(コミュニズム)大国から、紅党の大家族が逃げだす。


 ナナ子が言う。「国は信なくば成らずコン。」


 東大陸の孔丘の言葉である。

 まだ外では雷がなっている。

 ナナ子が講義が終ったので帰ろうとする強子博士に言う。


 「まだ雷がなっているので危険コン。」


 強子博士が言う。


 「事実を事実として言う事は、もっと危険なのよ。」


 外は、まだ雷がなっているが、気にせず強子博士は、研究所へ帰る。



 その講義の間、実はノンは雷が怖くてナナ子の手を握っていた。

 更に言えば挨拶も自己紹介もなく、震えてナナ子の手を握ったままだ。

 実はノンと統合したタダロウも、雷は苦手だった。だから雷が鳴ると震えてしまう。


 ノンがその様な有り様なので仕方なく、マサヒロとナナ子が強子博士の相手をしていた。


 「怖かったワン。」


 ノンの感想はこの一言だったが、雷についてか、銀狼族の強子博士についてなのかは、誰も聞かなかった。


 


 数日後、ノンたちは水晶宮にいた。

 理由はサラに霊的な光を充てる為だ。


 「翼で、飛べるニャン!」


 サラが叫ぶ。

 マサヒロはサラも霊獅子(グリフィン)になったと理解した。

 サラには獅子族の血が流れており、獅子族の霊的に進化した存在、霊獅子(グリフィン)になったので、翼が生えたとマサヒロは理解する。

 既にマサヒロも霊獅子(グリフィン)になっている。


 「良かった。」


 「嬉しいニャン。」


 マサヒロの言葉に、サラが嬉しそうに答える。

 ノンが二人に光を与え伝え、二人が霊獅子(グリフィン)となり、翼が生えた後、皆がほっとしていたところへ、ノンが狙撃される。


 バーン。


 ノンが倒れるなか、サラとマサヒロが狙撃者(シゲフサ)を探す。

 ナナ子がノンに駆け寄る。

 モエが空の一点を指す。


 「アソコガアヤシイ。」


 サラがクナイをモエの指す空に投げつける。

 空の一点が歪み、そのまま歪みが逃げようとする。

 狙撃者は、光学迷彩で空に隠れていたのだが、サラにクナイを投げつけられて逃げだす。



 シゲフサが直ぐに個人飛行装置(人用グローン)で逃げようとする。


 ノンの周囲を警戒していたカオル姫とマサヒロの私兵たちから個人飛行装置でAIの想定では逃げられるはずだった。シゲフサは小さく言う。


 「捕まりはしない。」


 しかし、霊獅子(グリフィン)となったサラとマサヒロが、空中へシゲフサを追いかける。

 シゲフサは光学迷彩で姿を隠す為、光学迷彩の重量と空気抵抗が増している。


 たちまちマサヒロとサラに追い付かれる。

 シゲフサが叫ぶ。


 「クソガ!」


 AIの想定では逃げられるはずなのに、彼らに追いつかれ、シゲフサは光学迷彩を棄てる。

 何本もの電極が刺さる頭を持ち体が機械ででかたシゲフサの姿が現れる。頭に刺さっている電極が光る。

 マサヒロが叫ぶ。


 「攻撃だ!」


 シゲフサが電撃を飛ばすが、サラがクナイを投げつけ電撃を曲げる。

 更にシゲフサが電撃を連続して飛ばすが、サラがクナイを投げて、サラに当たらない。


 「なぜ、電撃が分かる?」


 「電極が光るニャン。」


 シゲフサの頭の電極が光った後、シゲフサの手から電撃が飛ぶので、サラは電極の光る後にクナイを投げていた。

 シゲフサが何度か電撃を飛ばし、サラの手にクナイが無くなる。


 「さあ、もう電撃は避けることはできない!」


 シゲフサが電撃を複数、飛ばすが、サラは鉄球を飛ばす。


 シゲフサは、苛くが、マサヒロを見失っていることに気がつき、その場から逃げようとする。


 しかし、そこに光学迷彩で隠れて接近していたマサヒロが斬りつけてシゲフサの個人飛行装置が破壊され、落下してしまう。


 マサヒロは、サラがシゲフサの相手をしている間に、シゲフサが放棄した光学迷彩を拾い、シゲフサに接近していたのだ。


 マサヒロとサラがシゲフサを追う。


 普通なら骨折して行動できない高さからの落下だが、シゲフサは体が機械なので、まだ逃げようとする。

 シゲフサの人である部分は、もう脳と心臓だけだった。

 追いついたマサヒロがシゲフサを倒す。

 シゲフサは最期に言う。


 「英雄殺しが俺の生きた証だ。」


 サラがノンの生存の連絡を受けて言う。


 「英雄は生きている。」


 理解できないという表情のままシゲフサが死ぬ。


 AIは、本質的に膨大なデータ(ビックデータ)について一般的な傾向、特殊な傾向までは予測できるが、個別なものは予測できない。

 あくまで個別であり、それぞれ違うものはAIでは予測できない。


 サラとマサヒロが霊獅子になることは、そもそも想定されていないので、AIでは想定できなかった。

 また、ノンはビビりで鎧を二重にして、更にその下に守護札を二枚も胸につけていたことは、AIが予測できないノンの個別事情だった。


 ただノンはまた守護札を買わなければと思って言う。


 「今度は三枚ワン。」

 

 鎧の修理だけでなく、ライフル銃対策もするけど、守護札も追加するノンだった。

 


 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

(面倒くさい話)


作中の強子博士のイメージは以下の著書のある宮脇 淳子さんを参考にしています。

ただ、あくまでイメージですので、実際は著書等にて確認願います。


 『真実の中国史[1840―1949]

  宮脇淳子 著 岡田英弘 監修』 PHP文庫


 『皇帝たちの中国史 宮脇淳子 著』 徳間書店


 『真実の満州史[1894―1956] 宮脇淳子 著 岡田英弘 監修』

 ビジネス社

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