4.魔物の森の白フクロウ族
あまりにも長くノンとナナ子がお互いに抱き付き、ノンの下半身が元気なまま刺激したので、ノンの下半身が発射してしまう。
慌てて体を離すノンにナナ子がびっくりする。
「どうしたのコン?」
まだノンはビビったままだ。仕方なく内心のタダロウが答える。
「ナナ子に興奮して漏れちゃった。」
(本当は、あそこがナナ子に密着して擦れて漏れたのだが、少し言葉を削るのほうがいい。)
タダロウが、少しだけノンの意識を操作する。
暫く時間があき、ナナ子がノンの言葉を理解すると、顔を赤くしてハンカチを水に濡らしてノンの下半身から汚れを拭き始める。
やっとノンが照れて言う。
「本当にごめんなさいワン。」
ナナ子は、ノンがペッタンコの胸でも、興奮したのだと思っている。ナナ子は内心では、ペッタンコの胸に不安で不安で仕方がなかった。でも、ノンがちゃんと反応したのでナナ子はむしろ安心したのだ。
(やっぱり女の魅力は胸の大きさじゃないコン。)
「いいコン。もう二人は婚約しているコン。」
「助かるワン。」
ノンが安心すると、ナナ子がノンの目を見て言う。
「両親に紹介したいコン。でも、その為には一つ、しなければならないコン。」
思わずノンが聞く。
「何ワワン?」
ナナ子がノンに言う。
「魔物の森で、白フクロウ族の福老に会う事コン。」
数日後の庶民学校の休日、ノンは、天狐族のナナ子、豚人族のミツルと共に魔物の森をリヤカー(人が引いたり、押したりする運搬用の箱)に麻袋を積んで進んでいた。
先頭ではナナ子がアーチェリーで眠り薬の入った袋を付けた矢を放っている。この袋は周囲に眠り薬を漂わせる。
ナナ子が矢を射る度に、ビューという音がして、ビビりのノンとミツルはビクッとする。
ナナ子が口は笑いながら、ノンを見ている目は鋭い。
「将来の旦那様は、もう少し度胸をつけてコン。」
ノンは精一杯に可愛い顔で言う。
「分かっているワン。」
でも、近くにいるミツルは口には出さずに思う。
(ノンはきっとお嬢様の尻にひかれるタイプブー。)
ノンたちはナナ子が眠り薬をつけた矢を放ち、充分な時間がたって魔物たちが眠ってから進んでいる。
この眠り薬はナナ子が高家の刀自である母のマサ子から貰った物で、もちろんノンたちは眠り薬が効かないように、別の薬を飲んでいる。
これは、ナナ子がノンをナナ子の両親に紹介して、正式に交際することを了解して貰う為に、白フクロウ族の福老に会う為である。
ノンとナナ子が魔物の森の奥にいる白フクロウ族の福老に会う事ができたら、ナナ子の両親から正式にノンをナナ子の婚約者と認めて貰える。
上流階級である高家のお嬢様と庶民のノンが交際するのは大変だという事が内心にいるタダロウの気持ちだった。
ただノンはナナ子に惚れているので、タダロウも一生懸命努力している。
その努力は色々である。例えば勇者の試練の翌日、ノンはナナ子がいるので、1時間も早く図書室にいって本を読もうとした。
もちろん内心のタダロウも、この異世界を知りたいので、ノンに歴史の本を読ませようとする。
しかし、ノンは本を読もうとするとすぐ眠たくなる。でもノンが眠たくなり、目がふさがりそうになるとナナ子がノンの前で、細目を光らせる。その度にノンは、大きく息を吸って目を覚ます。
ノンの横には、ノンに付き合って学校に早く来ているミツルがいる。
更に、放課後、ナナ子はノンとミツルを校庭の裏に呼び寄せ言う。
「武道の稽古をしてくださいコン。」
ノンとミツルに、ナナ子が木刀を渡す。
ノンは木刀の素振りを始めるが、ミツルが聞く。
「何故、武道の練習をするのかブー?」
ナナ子が言う。
「今度の休みに、魔物の森へ向かうコン。」
この日から、ノンとミツルはナナ子と共に、朝は図書室で読書、放課後は武道の練習をすることになる。
そして今日、ノンたちは魔物の森を進んでいる。
ノンたちが、かなり奥まで進んだところで猫又が現れる。
「なぜ、眠り薬が効いていないコン?」
「きっと、猫又には効かないワン。」
猫又は眠り薬に耐性があり、薬が効かなかった。
猫又の体長は三メートルを超え、尾は二股に分かれている。猫又にナナ子が矢を射つが、動きが速く当たらない。ミツルも木刀を振るが木刀を跳ねとばされる。
猫又がナナ子に飛び掛かろうとする。
ノンがナナ子の前に立ち叫ぶ。
「ワン(僕)は勇者ワン!」
ノンが懐から唐辛子の粉を出し、自分の頭に振りかける。ギョとする猫又に木刀を持ったノンが体当たりの突進をする。魔物である猫又は臭覚が敏感で、唐辛子にたまらずにその場から逃げだす。
「洗い流したいワン!」
ノンが近くの池で唐辛子の粉を洗い、鼻に入れていた唐辛子を捨てる。勇者の試練では、ナナ子が考えた作戦で鼻に唐辛子をいれた。しかし今回はノンがそれを思い出して、ナナ子やミツルが時間を稼いでいる間に準備した(鼻に唐辛子を入れた)。
ノンは学習する男の子である。
唐辛子の粉が取れてから、ナナ子が近づく。
「ありがとう。助かったコン。」
ナナ子はノンに長い長いキスをする。
それを見てミツルは思う。
(また始まったブー。羨ましくなんかないブー。)
ノンが近くにあった池で全身を洗った後、ノンたちは再び森の奥へ向かい広場に着く。中央には注連縄が結ばれた大きな御神木があり、その前に石の台がある。ノンたちがリヤカーに積んである麻袋を石の台に置く。
麻袋の中には、前日に眠り薬を入れたエサを撒いてノンたちが捕まえたネズミたちが入っている。
ナナ子が御神木の前で呼び掛ける。
「大いなる智恵を持つ福老よ、我らの供物を受けとられよ。」
しばらくすると、白フクロウ族の福老が、音もたてずに舞い降りる。そして麻袋をあけ、ネズミたちを食べ始める。
ナナ子が質問する。
「英雄が目指す新しい希望とは?」
福老はちらっとナナ子を見て言う。
「供物が不足ホー。」
そしてノンを見る。
「聖なる愛を持つ者よ、闇札を持ってくるホー。」
福老は麻袋のネズミを食べ終わると、飛び立つ。
ナナ子は、福老の闇札という言葉をしばらく考えていた。
そしてナナ子が、ノンを見る。その時、たまたま風が吹く。
また、ナナ子はノンのムスコを見てしまう。
ノンがここでナナ子にニコッと微笑み言う。
「カステラが貰えるワン。」
ナナ子は、ノンたちに福老に会えたら、カステラをおやつに出すと約束していたことを思い出す。