36.マサヒロが泉に向かう。
「アッコーーーーーーン。」
神義官長官室で思わずナナ子は、桃色の吐息を一つする。
他には誰もいないからいいのだが、誤解を招く行為だ。
これは、昨日、ノンとの約束でナナ子が一つだけノンの希望を叶えた結果である。
ナナ子はマッサージをノンにしてもらった。そしてそのことを思いだして悩ましい吐息をしてしまった。
ナナ子は、昨日お尻のマッサージをしてもらったが、それがナナ子を気持ちよく、思わずあそこまで感じてしまい、ついノンとの交尾まで想像する。
もちろんノンはマッサージしかしなかったが、ノンはナナ子のお尻を充分触ったから満足している。
しかし、ナナ子はノンの外見の可愛いの魅力とは別にノンの新たな魅力を理解した。
この魅力は、両刃の剣である。ナナ子以外にさせると誤解を招いてしまう。
ただ、ノンのマッサージを思い出すと、ナナ子は、どうしても、桃色の吐息をしてしまう。
そこへ、ノンたちが先日のマサヒロの講義(農業企業と支援政策)についての質疑応答の為、入ってくる。
皆が席について、ナナ子が気持ちを切り替えてマサヒロに早速、質問する。
「宗主国では、少子高齢化が進んでいるけど、その一つの理由に、高学歴高齢出産説があるコン。」
(高学歴化は、女性の出産年齢を引き上げ、産む子供の数が減るので、少子高齢化が進むという説)
マサヒロが笑いながら、説明を始める。
「まだ、高学歴さえできていないのに、宗主国を調べるとは、さすがは高家のお嬢様ですね。」
マサヒロは、高学歴高齢出産仮説がある程度、影響はするが、むしろ保従教の影響で、子育ての負担を女性に押しつける事が大きな理由の1つだと説明する。
だから女性は、子供が一人で充分になってしまう。職場あるいはその近くに託児所兼保育施設があれば状況はかなり違う。
「僕は、むしろ重要な条件は、十分な安定した収入だと考えている。」
ある年収を境に子供の平均の数は二人を越える。
だからマサヒロは小作人を会社員にして収入を増やす必要があると考える。
マサヒロの説明を聞いてサラが質問する。
「農業企業と学校を作るだけでも、大変なのに、託児所兼保育施設までなんていくらお金がかかるニャン?」
これに、マサヒロは少し真剣に説明する。
「農業企業と学校と託児所兼保育施設を別々に考えるから、大変な金額になる。」
ここで、マサヒロは駅街開発を説明する。
駅街開発とは、鉄道の駅を中心に農業企業、学校、託児所兼保育施設を専用だけではなく、病院、銀行、市場などの施設、更には映画館、図書館等々を集め、共通利用できる開発を行うことである。
この開発のポイントは、必要に応じて同じ空間を運動施設にも老人介護施設にも転用する事を考えて様々な費用を削減することである。
ノンが理解できずに唸るように一言。
「難しいワン。」
サラは理解しているので言う。
「よく駅街開発なんて考えてたニャン。」
マサヒロがサラの目を見て言う。
「過去には、腕力だけで、みんなを幸せにするつもりで、みんなを不幸にした英雄がいたように思う。
そんなことを繰り返さない為に、僕は勉強している。」
サラがノンを見てに言う。
「マサヒロをヘルの泉に連れていきたいニャン。」
ナナ子もミツルに聞く。
「カオル姫は、ヘルの泉はどうコン?」
あくまでヘルの泉には、リスクがあるので、強制はできない。カオル姫は、ミツルを見て言う。
「わたくしは遠慮します。」
マサヒロがノンをみる。
「行こう。」
ノンたちがマサヒロの説明を聞いていた頃、ある空間に禍々しい闇を伴うぼさぼさの長髪で、顔が饅頭のような男が大きなソファーにいた。
その男が、堕帝である。
側には、頭だけが異様に大きい幼鬼いる。
堕帝が、嗄れた声を出し命令する。
「あの駄犬を潰せダ。」
「御意ヨ。」
堕帝は人類に終末をもたらす七帝の一人だ。
堕帝の前には、滅帝の遺体が防腐処理されてガラスケースに入っていた。
堕帝は、滅帝が倒れた後、その死体を盗み、ここで保管していた。そしてこの死体を使って水晶の骸骨などに滅帝を移し利用している。
ノンたちはノン、ナナ子、サラ、マサヒロ、モエと、マサヒロの私兵たち十名で泉に向かっている。
前回と同じように、ナナ子が眠り薬を付けた矢を道の先に放ち、しばらくたってから進む。
ノンは、先頭を行くナナ子のお尻を見ながらも、周囲を警戒してながら、かなり重い荷物を持って歩いている。
サラは警戒しつつ、マサヒロに昨日、紹介されたマサヒロの兄弟姉妹について聞いていた。
マサヒロに兄弟姉妹は、平家のヨシカネたちに殺される危険があったので、祖父のキヨヒトの里、真火戸で隠れて住んでいた。
クニカも逮捕させたので、晴れてマサヒロとサラが会えたのである。
マサヒロの兄弟は、将頼、マサヒラ、マサフミ、マサタケ、マサタメだった。
マサヒロの姉妹はマツとムギである。
早速、サラが既に大人の将頼に頼みがあるとマサヒロに言う。
「サラの地所について手伝ってほしいニャン。」
今回の平家討伐でヨシカネとクニカの地所がサラのものになってしまった。
理由はヨシカネとクニカそれにその子供たちは全員反逆罪となり、ヨシカネの娘であるサラはだけが無実であった為である。
結果として、ヨシカネとクニカの地所と財産は全てサラが継承する。つまり、サラは約千人規模の地所を持つ大地所持ちになっている。
しかし、サラはあっという間に、大地所になってしまったが、このような大きな地所を管理できる訳がない。とりあえずヨシカネの地所は母親のシズに頼みこんだが、クニカの地所について誰か信用できる人を捜していた。
そんな話をサラとマサヒロがしていると、モエが呟く。
「タクサンクル」
ざっと百人提供のネズミ族たちがノンたちに迫っている。
このネズミ族たちは幼鬼がノンたちを数で倒す為に集めた兵士たちだ。
先頭のネズミ族叫ぶ。
「数で押しきるチュー!」
ノンがしっぽを振りながらナナ子に聞く。
「一つお願いワン。」
ノンの要望を理解してナナ子が頷く。
「分かったコン。」
ノンがリュックをおろし、中から、度数の高い焼酎のびんを出す。
「火を点けるワン!」
大きな森の道を密集して進むネズミ族たちの頭の上で、ノンの投げる焼酎のびんがナナ子の炎球で破壊され、炎がばら蒔かれる。
先頭のネズミ族は炎に巻かれ火だるまになる。
もちろん、マサヒロの私兵たちも矢を放つ。
サラもリュックから焼酎のびんを取りだし、火を点けたまま投げる。そして、投げたびんをクナイで破壊して更にネズミ族たちを混乱させる。
しかし、ネズミ族の数が多いので、まちまちノンたちが囲まれる。
ネズミ族たちが剣を振りかざして叫ぶ。
「殺せば、金と食物だチュー!」
金と食物に目が眩んだネズミ族たちが、次々に斬りかかる。
もはや、乱戦でノンも、十字剣と薙刀で切り結ぶ。
ネズミ族たちにノンたちが囲まれる。
ネズミ族の一人が叫ぶ。
「もう、やつらは限界チュー!」
ノンの表情が真剣になる。
「まだ、負けないワン!」
そこへ、背後からミツルとカオル姫が私兵と共に現れ、矢を放つ。
「待たせたブー!」
ミツルとカオル姫が私兵たちとともに攻撃する。
きっと敵の攻撃があると予想して、ミツルたちは、少し離れて後からきていた。
ネズミ族たちは矢を浴び、後から攻撃されて次々と倒される。
樹海の奥深くに聳える世界樹の前にノンたちが着くとヘルが現れ、泉を示す。
マサヒロが泉の水を飲み、意識を失う。




