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35.クニカとアツモリ

 ノンたちは、上台醐の観音様(チャンディー)が奉られているお堂まで来た。


 「フーーーーー。」


 ノンは、思わず大きく大きく息を吐く。

 胴長短足のコーギー族であるノンにとって、とってもとっても疲れる山登りの道だった。


 ノンたちは途中で襲撃してきたトチノハたちを、全て倒し、後はカオル姫とマサヒロの私兵たちに任せて、お堂に来たのだった。


 モエは、何本もの腕に様々な武器等を持つ観音様の像を静かに観る。

 そして、モエはこの観音像が少なくとも天竺国のドルガーと呼ばれる女神様まではさかのぼれると考えている。

 そしてこの観音様は、地域を移動しながらチャンディーが、キャンディー、キャンノン、カンノンと変化して観音となったのではないかと秘かに思っている。


 このような考えをしながらモエはノンたちが守護札(タリズマン)をお堂からもらってくるのを待っていた。


 ノンたちが戻ってくる。


 「これでお腹は大丈夫ワン!」


 「これで肥らないわ!」


 ノンとカオル姫が喜び、しっぽを振っている。




 ノンたちが上台醐の山から帰っている頃、トチノハの叔父、平家のクニカは偵察の為に派遣していたハイエナ族から報告を聞いた。そしてその内容が想定外、つまりクニカが聞きたい報告でない為に、顔つきが歪んでいた。


 「予想外だグ。」


 クニカの前には、トチノハに任せたカラス族たちとは別に偵察の為に派遣していたハイエナ族たちがいる。


 「全く、しぶといグ。」


 マサヒロの農地を狙っていたのは、ヨシカネだけではなく、クニカも狙っていた。

 だからトチノハにカラス族の傭兵を与え、マサヒロを襲撃させたのだ。

 そしてマサヒロの暗殺とできればサラの暗殺も狙ったのだが、失敗した。


 クニカはノンたち(七人)が五倍以上のカラス族たちに、失敗する事など考えていなかった。

 もちろん、マサヒロの私兵がいても、せいぜい十名程度のはずで、それでもカラス族たちの数は二倍である。


 想定外として、マサヒロの私兵以外に豚人族(カオル姫)の私兵も同じ程度いたらしい。それでも、カラス族たちの数の方が多い。


 しかし、結果は、カラス族たちは全滅し、トチノハも死んでしまった。しかも、マサヒロたちは全員無事らしい。


 「どうすべきグ?」


 考えようとすると、頭の中がモヤモヤするクニカは、巨大な地下室へ急いで向かった。

 このモヤモヤがあるのでクニカはまともに考えることが出来ない。その為、すぐに考えることを止めて、何時ものようにまず滅帝に報告しようとする。


 クニカが降りていく巨大な地下室には、黒光りする椅子に、水晶でできた骸骨が座っている。

 その前には、まだ、絵はないが石板が四百四十四枚並べてある。


 クニカが黒光りする水晶でできた骸骨の前で、滅帝(怨霊)を呼び出す。黒い霊気が集まり、滅帝(怨霊)が現れる。

 クニカがマサヒロ暗殺の失敗を報告する。


 「いかがしますかグ?」


 滅帝(怨霊)が言う。


 「兵を集め、やつらを皆殺しゲ!」


 滅帝は人の血が流れた方がいい。


 「御意グ。」


 滅帝(怨霊)の目が光り、直ちに、クニカは自分の地所から兵を集め始める。




 ノンたちは、トチノハの襲撃について説明するためにマサヒロの私兵たちとカオル姫の私兵たちと供にキヨヒトの邸に戻る。


 マサヒロたちからトチノハの襲撃について説明が終わるとキヨヒトが沈痛な表情でマサヒロに言う。


 「クニカが戦の準備じゃ。」


  キヨヒトは、出入りの武器商人からの話としてクニカが鎧と槍を三百ずつ購入することをマサヒロたちに説明する。ナナ子が言う。


 「大きな戦になり、多くの人が死ぬコン。」


 「その通りじゃ。」


 キヨヒトは、大規模な戦いが発生することに心を痛めている。


 クニカはこの辺りで一番の大地主で、マサヒロの地所とキヨヒトの地所を合わせても、クニカの地所の半分にも及ばない。 

 まだ、地所を持つ者たち、クニカやヨシカネたちは私兵を戦わせて自分たちの地所を拡大する思考を持つ。そのようにヤクザのような感覚を持つ者が多い。

 その感覚を持つクニカは私兵の数では六百人である。

 それに対してマサヒロとキヨヒトの私兵は合わせて二百人程度でしかない。

 その上、クニカには財力があるので、私兵を集めようとするなら、カラス族などの傭兵を集めて千人までも増加させることができる。 

 だからこそ、クニカは兵力でキヨヒトとマサヒロを撃ち破り、その地所を奪うことを計画している。


 話を聞いたノンたちは、少し相談する時間を持つ。

 カオル姫が里に連絡して相談する。



 再びキヨヒト、マサヒロたちとノンたちが会議を始める。カオル姫が言う。


 「里から私兵を呼び出しますわ。」


 カオル姫は、カオル姫の里から六百位は私兵を出せると提案する。キヨヒトとマサヒロの私兵と会わせれば、八百位の私兵の数になり、クニカが傭兵を集めても十分、戦える。

 マサヒロが少し安心したように言う。


 「ありがとう。その兵力があれば戦える。」


 「でも、多くの人の命が失われるニャン。」


 「やむを得ないじゃろ。」


 クニカが大規模な動員をする以上、キヨヒトも仕方なしと発言する。

 

 ここでノンがニコッと笑い、提案する。


 「きっと地下に滅帝(怨霊)の像があるワン! そいつを壊すワン!」


 「確かに、クニカが悪霊に操られているなら、滅帝(怨霊)の像を壊せば正気になるかもコン。」


 ナナ子がヨシカネと仲がよかったクニカは同じ滅帝(怨霊)に操られている可能性があると指摘する。

 確かに同じ滅帝《怨霊》にクニカが操られているなら、マサヒロ暗殺にこだわるのも納得できる。


 マサヒロが聞く。「根拠は?」


 「同じカビのような臭いがしたワン。」


 ノンたちを襲撃したカラス族たちにわずかに滅帝(怨霊)の臭いと同じ臭いがしていた。

 だからノンはヨシカネと同じように地下に滅帝(怨霊の)像があるはずだと説明する。

 

 キヨヒトが聞く。


 「しかし、その滅帝(怨霊)の像はどこにあるのじゃ?」


 心配して、キヨヒトが質問する。


 「きっと地下に滅帝(怨霊)の像があるワン。」


 更にキヨヒトが質問する。


 「しかし、そこにどうやっていくのじゃ?」


 「水路を使うワン。」


 かつて滅帝を倒す時、白フクロウ族の福老は水路をつたわって滅帝のところまで、たどり着いた。

 怨霊たちは、穢れの流れつく先、穢れの溜まり場をを好む。

 だから滅帝(怨霊)の像ならきっと地下につながる水路の先にいるはずだった。


 ノンたちは、戦で多くの人を死なせたい訳ではない。殺し合うのは最少にしたい。キヨヒトが聞く。


 「危険じゃないかの?」


 やはり少人数で水路をいく以上、見つかったら非常に危険だ。キヨヒトが心配して聞く。


 「大丈夫ワン。ワン(僕)は英雄ワン。」


 ナナ子にウインクするノンだった。仕方なくナナ子が頷く。


 さっき、このままだと大変な戦になるとナナ子がいった時、ノンが戦にならないようにしたら、きっとナナ子がなんでも言う事を一つ聞いてくれると約束したのだった。


 ノンが考えている事は大体分かっているが、ミツルとカオル姫はやってるし、ノンだけお預けはやはりかわいそうかなとナナ子も思っているので仕方なく頷くのだった。





 数日後、クニカ邸の周囲には、いくつもの見張り台が作られ、クニカが集めた約六百もの私兵が集まっている。

 現状の私兵たちだけで、マサヒロとキヨヒトの私兵を圧倒しており、カオル姫の私兵についてクニカたちは知らないので、何時マサヒロたちを攻めるのかを話している。

  

 そのような状況の中、クニカが息子のアツモリを連れて巨大な地下室に向かう。


 アツモリという名前は、幸運と財運が厚いようにとクニカが名前をつけたのだが、アツモリは現実にはゲームに夢中で脂肪と厚かましさが集まった肉団子のような獅子族になっていた。


 クニカは、アツモリがゲームに年中、夢中になっていることに不安を持っている。


 (この様子では、将来が心配だグ。)


 そのような心配をする度に、クニカは思う。


 (何が何でも、できる限りの地所をこの子に残そうグ。)


 クニカの周囲にある地所は、マサヒロとキヨヒト、及び死んだヨシカネ親子の地所である。

 ここで、マサヒロとキヨヒトの地所、それにヨシカネの地所を手に入れることができれば、まず安心することができる。


 クニカは、ゲームに夢中の一人息子の為に、可能な限りの地所を残そうと思うのだった。

 そして、クニカが一番安全だと思っている地下へアツモリを連れていく。

 クニカにとっては、ヨシカネとその子供たちの死も、アツモリの地所を拡大するチャンスだ。


 そのような事を考えているうちに、クニカとアツモリが滅帝(怨霊)が憑依している像の前につく。


 ここに来るまでずっとゲームをしているアツモリにクニカが言う。


 「ここで、侵入者が来たら討て、いいなグ!」


 クニカはノンが侵入しようとしていることなど考えていない。

 クニカを見ずにゲームをしながらアツモリが言う。


 「一人当たり、ゲーム機一台で手をうつギ」


 ゲームに夢中なアツモリを見てクニカは仕方なく了解して、言う。


 「油断するなグ。」


 「分かったギ。」


 何時もの返事にため息をしてクニカが上に戻る。





 クニカ邸の裏にある山の麓の滝行場から続いた地下水路を、ノンたちは潜り侵入する。

 滝行場で、落とされた穢れは地下水路を流れていく。ノンたちはその水路を潜っていく。


 暫く進むと、水路に鉄格子がはまっている。

 ノンが水中バーナーを使って鉄格子を破壊する。

 ミツルは、水中バーナーが使った酸素などの泡が水路の上に漏れないように集めている。ナナ子やカオル姫は集めた泡を袋に入れる。


 水路の見張りをしているハイエナ族たちは、緊張感がなく、マサヒロたちの地所へ出撃して手柄をたてる話ている。


 見張りのハイエナ族たちが気が付かない内に、ノンたちは無事、水路の鉄格子を破壊して前進する。


 暫く進むと、その水路の終わりに到着してノンたち水路から姿を現す。

 ノンたちは、そこでゲーム依存性の男を見つける。

 



 アツモリが持ってきたゲーム機で遊んでいるところに、いきなりサラのクナイが飛んでいく。アツモリは片手で青龍刀をもち、跳ね返す。


 「ゲームの邪魔するなギ!」


 ミツルが短槍で突くが、片手で弾く。サラが薙刀で、マサヒロが剣で斬ろうとするが、青龍刀で防がれる。


 「うるさいギ!」


 流石に注意がそれてゲームが終わる(オーバー)

 アツモリが全身を怒りで強化して立ち上がる。


 「ゲームの邪魔をするやつはぶっ殺すギ!」


 ミツルか短槍を突くがアツモリの青龍刀にはじき飛ばされる。

 マサヒロも剣で切ろうとするが防がれる。

 アツモリの運動神経と反射神経はゲームで鍛えているだけの事はある。

 アツモリはまだゲーム機を持っている。

 

 「弱点は、ゲーム機ワン。」


 ノンがアツモリではなくゲーム機を十字剣で突くとアツモリが青龍刀で防ごうとするが、ノンはその指を切り落とす。

 アツモリが青龍刀をとっさに握りかえたところへナナ子の炎球がアツモリの顔を覆い、ノンとミツルとサラとマサヒロが一斉に突く。マサヒロの剣は防いだが、後は全て体に刺さる。しかし、厚い脂肪に阻まれキズが浅い。全ての攻撃を振り払いアツモリが叫ぶ。

 

 「おまえたちを、許さないギ!」 


 アツモリの厚い脂肪がアツモリを守っている。


 「もう一度ワン。」


 ナナ子がもう一度、炎球を放ち、アツモリの視界を遮る。

 ノンが脂肪で厚くならないアツモリの頭を十字剣で割る。アツモリは頭が割れて倒れる。


 「頭は脂肪が少ないワン。」


 アツモリが倒れる。

 水晶でできた骸骨に黒い霊気が集まり、ノンたちは、またも滅帝の怨霊と向き合う。

 滅帝の怨霊が言う。


 「お前たちを殺すゲ。」


 「しつこいワン。」


 滅帝の怨霊は、いくつもの手をノンたちに伸ばす。

 ノンたちは滅帝のいくつもの手を斬ろうとするが、ノンたちの武器は素通りしてしまう。

 滅帝の怨霊の腕がノンたちの首を捉え締め付ける。

 

 「今度こそ、皆殺しゲ。」


 怨霊の腕がノンたちの首を締め付けノンたちが抵抗する。


 「苦しいワン。」

 

 ナナ子の炎球も、サラのクナイも怨霊の腕を素通りしてしまう。

 それは、ミツルの短槍でも、マサヒロの剣でも同じだ。


 「息ができないブー。」


 ノンの腕が苦し紛れにノンの守護札に触れると怨霊の腕が消える。

 それを見たノンが守護札(タリズマン)を椅子の上にいる水晶の怨霊(滅帝)の眼に投げる。

 守護札が怨霊(滅帝)に接触する。


 「ゲゲーーー。」


 怨霊(滅帝)の眼が爛れ、ノンたちに伸ばしていた手が戻る。


 「投げるワン。」


 ノンがカオル姫に言う。

 もう1つの眼に、カオル姫が守護札(タリズマン)を投げる。


 「さっさと消えるワン。」


 両目が爛れた怨霊(滅帝)を宿す骸骨をノンが十字剣で割る。

 周囲に黒いけむりのようなものが飛び散り、カオル姫が肉団子になりそうだったがミツルが既にキスしていた。


 「全くミツルとカオルは羨ましいワン。」


 ノンたちは再び水路に潜り、クニカの邸の外に戻る。



 クニカの邸はノンたちが脱出後、すぐにキヨヒト、マサヒロの私兵だけでなく、カオル姫の私兵とサラの私兵、つまり、元はヨシカネの私兵も合わせて千二百もの私兵に囲まれる。

 周囲を約二倍もの私兵で囲まれたクニカは、何時もと違う頭の状態、つまりモヤモヤのない頭の状態でノンからの降伏勧告を受ける。


 クニカはすぐに地下へ降りて、そこで壊れた滅帝の像と死んでいるアツモリの姿を発見する。

 クニカがアツモリの死体を抱えて呟く。


 「最早、これまでだ。」


 滅帝の怨霊が、消えた結果、クニカの頭のモヤモヤは消えている。

 そして頭が正常に動くクニカはノンたちに降伏する。

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