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34.上台醐

 ノンが眠たそうな目をしながら、マサヒロの講義を聞いていた。


 (うーー、むずかしいワン。)

 ノンの心の声である。


 なぜノンがこんなに難しい話をなぜ聞く事になっているのか、それは先週マサヒロがサラと供にノンに申し入れした結果である。

 それは、マサヒロが、農業の未来について説明したいという要望だった。

 ナナ子が是非聞くべきというので、了解した結果がこの状態である。

 そして、マサヒロの考えをノンたちが聞いている現状がある。

 もちろん、マサヒロの恋人であるサラが熱心に聞いているのは、ノンにもわかる。

 でも、なぜナナ子も、ミツルも、モエも、カオル姫までもが熱心に聞いているのだろう。

 ノンにはとてもとても難しかった。


 マサヒロの話のなかで、大地主たちが農業企業の経営を行い、小作人が社員となることはノンにもわかる。

 ただ情報技術(コアテクノロジー)を取り入れる為に義務教育の高度化が必要であり、家庭が、貧しく高等教育を受けられなかった人にも、働きながら受けられる遠隔教育が必要とマサヒロは言う。

 マサヒロは大地主の家族経営では、情報技術(コアテクノロジー)を生かせるどころか、大量情報奔流(ビックバンウェーブ)に押し流されると説明する。

 だから社員も含めて、情報技術の知識を勉強(装備)をしなければ世界競争(ワールドトレード)の敗者となる。

 敗者の道は、社畜、つまり、低賃金による長時間労働の道である。


 (これは不味いワン。)


 流石にノンでも、社畜が良くないことは分かる。

 ただ、敗者にならない為に義務教育の高度化、つまり情報技術の教育が必須になるという説明は難しい。


 ノンは欠伸(あくび)を押さえるので必死である。

 

 (ここで欠伸をすると、すぐにナナ子の物差しがとぶワン。)


 ノンには欠伸を押さえることが、とてもとても難しいので、思わずナナ子を見る。

 そしてノンは後で、カステラを食べるかお尻を触りたいと目でうるうるしてみる。


 しかし、ナナ子の細目が光り、ノンのしっぽが下がる。


 (うーん、ナナ子のあの目の光は何かを考えてるワン。)


 マサヒロの講義が終わって、やっとティータイムになり、カステラが出る。

 しかし、ノンの分は、いつもの半分しかない。ノンがナナ子を見る。

 カステラの用意は、秘書の仕事であり、長官であるノンに、こんな事ができるのも、ナナ子だけである。


 「なぜ、半分なのワワン?」


 「あとの半分は、情報機器(パソコン)の練習後です。」


 (後の半分は、あの目がショボショボする練習をした後ワン。)


 ナナ子の細目が光り、ショックで何も言い返せないノンだった。


 練習が終わって、やっとノンがカステラの残り半分を食べてから、ノンたちは、上台醐(カミダイゴ)の山へと向かった。



 この山には、疫病に霊験があると言われる観音様(チャンディー)が奉られており、パワースポットの一つだった。

 

 ノンはヤスベエの時(剣豪)は、大丈夫だが、ふだんは悪い気(ダークオーラ)で、お腹が壊れる。

 カオル姫は霊媒体質なので肉団子になってしまう。 このままでは不味いので、ここで守護札(タリズマン)を手に入れようという事だった。




 その様子を望遠鏡で見ている集団がいる。カラス族たちを率いる獅子族のトチノハである。


 「あたいのマサヒロを奪った雌猫(サラ)を絶対に地獄へ落とすガオ!」


 彼女は、従兄弟であるマサヒロの入浴中に全裸突入して拒否され、プライドがぼろぼろで、口調まで変わっている。

 彼女は、彼女の実家がマサヒロの祖父と母親を殺そうとして失敗し、彼女は全てを失っていた。

 (兄のマモルは死亡、父のヨシカネとトチノハは暗殺を指示した罪で犯罪者となり、ヨシカネの農地は異母妹のサラが相続する。)


 その為、トチノハはヨシカネと仲が良かった叔父で獅子族のクニカを頼り、クニカの私兵であるカラス族たちを連れて、ここにいる。


 「小さい時でも、約束は約束だからガオ。」


 トチノハは小さな時にマサヒロとした約束をマサヒロが破った事は許さないとマサヒロを憎む。


 マサヒロとトチノハがまだ小さな頃、マサヒロの父が変死(実はトチノハの父ヨシカネによる暗殺)前に、トチノハはマサヒロと結婚すると約束していた。


 しかし、マサヒロの父の変死後、マサヒロは冷たくなった。

 マサヒロに、祖父のキヨヒトが平家に注意するように言うのだから当然だった。


 でも、それを知らないトチノハには、マサヒロが約束を破ったことが理解できない。

 トチノハが怒りをぶつけるべきは、マサヒロの父を暗殺したヨシカネである。


 トチノハは四十人以上のカラス族たちを率いている。ノンたちは、七人しかいない。

 その上、叔父のクニカから借りているドクロ剣がある。ドクロ剣は人を殺せる怨霊を呼び出すことができる。しかも怨霊には物理的な攻撃は効かない。


 「殺して首だけにして、ワタシだけのものにするガオ。」


 トチノハは今度こそ、マサヒロを殺して自分のものにすると誓う。その上、トチノハはサラを殺し再び農地を取り戻すつもりだ。



 

 ノンたちが、パワースポットのある観音堂へ着く前に、モエが呟く。


 「ヤミガクル」

 

 ミツルとカオル姫とモエとマサヒロがリュックをおろし、中から霞網を出す。霞網の端にブーメランを結び、サラが四方にブーメランを放つ。霞網が周囲に張られる。

 

 直後にトチノハとカラス族たちが、周囲を取り囲む。トチノハがマサヒロに叫ぶ。


 「死体になって、わたくしの物になりなガオ!」


 マサヒロが言う。「死体になどならない。」


 サラが叫ぶ。「死体になどさせないニャ!」


 ノンも言う。「趣味がわるいワン。」


 ナナ子が炎球を四方に放ち、サラがクナイを放ち、ノンたちもクナイを投げる。

 最近、サラからマサヒロがクナイを教えてもらうついでに、ノンたちもクナイを教えてもらっていた。

 

 霞網が四方に張られ、カラス族の空中殺法が使えないが、カラス族は数が多い。

 トチノハのドクロ剣が禍々しい邪気を発しながらマサヒロに斬りかかる。


 「さっさと地獄へ逝きなガオ!」


 マサヒロの前にはトチノハだけでなく、カラス族たちが加勢する。兎に角カラス族たちの数が多い。

 カラス族たちが煩く叫ぶ。


 「さっさと消えろカー!」


 カラス族たちの攻撃で、マサヒロの髭が切れる。


 「さぁ、首を切り落とすガオ!」


 トチノハがドクロ剣でマサヒロに斬りかろうとした時、カラス族の背後から何本もの矢が飛び、カラス族が倒れる。カオル姫とマサヒロの私兵が後ろから矢で攻撃したのだ。


 カオル姫が叫ぶ。「こちらも見張っているのよ。」


 トチノハがゆくえ不明となり、トチノハの叔父クニカの私兵がかなり減った事が、分かったので、カオル姫とマサヒロが私兵を準備しており、さっきモエが呟いた時にナナ子が携帯機器(スマホ)で連絡していたのだった。


 このままでは、マサヒロを殺して取り戻せないと思ったトチノハは、ドクロ剣を握りしめ、呪文を唱える。


 「怨霊よ。呼びかけにこたえよガオ。」


 するとマモルの怨霊が現れる。マモルの怨霊はマサヒロに掴みかかろうとする。マサヒロが剣で斬るが剣は素通りして、怨霊の手がマサヒロの首を閉める。サラも薙刀で怨霊を斬るが素通りする。

 マサヒロが苦しみ、怨霊を掴もうとして掴めない。


 「さぁ、地獄へ逝けガオ!」


 それを見ていたモエがノンに言う。


 「アノケンヲ!」


 ノンがトチノハのドクロ剣を斬る。ヤスベエモードの兜割りで、トチノハはドクロ剣を落とす。

 その結果、怨霊が消える。


 怨霊が消え失せ、カラス族たちが倒されたのを見たトチノハは地面に落ちたドクロ剣を再び掴み、自ら首を斬る。


 「先に逝って地獄で待つガオ。」


 サラが唖然としているマサヒロに言う。

 「マサヒロは私が守るニャン!」


 カオル姫が、死んだトチノハからドクロ剣を放そうとして、ドクロ剣に触ってしまう。


 ボンという音はしなかったが、カオル姫が肉団子になってしまう。

 しかし、ただお相撲さんようの和服をゴムひもで巻いていたので、服は布切れにはならない。ただ、ゴムひもが切れてしまい、やはり手で前を隠して恥ずかしそうに言う。


 「恥ずかしいブヒ。」


 ミツルが駆けより、キスをしてカオル姫をもとに戻す。ナナ子は思わず思う。


 (カオル姫はわざとドクロ剣に触れミツルに助けてもらいたかったのではないのコン?)

 

 でも、二人の恋路を邪魔する気はないのでナナ子は言わない。その代わりにノンに言う。


 「さあ、早くその剣を壊してコン。」


 ノンは地面に落ちているドクロ剣を斬る。今度こそ、ドクロ剣は折れる。

 


 


 


_______________________

 (面倒くさい話:教育が情報社会に合っていない説)

 日本において、江戸時代では寺子屋などで読み書きが教えられ、明治時代に義務教育が始まる。

 戦後、教育制度が大幅に改変されるが、改変された時代は、まだ産業社会である。

 今は情報社会に至る過程で、明らかに教育方法も教育内容も情報社会に対応しているとは思えない。

 教育方法については、具体的には認知作業トレーニングなどの認知トレーニングを取り入れる必要があると考える。

 (詳細は『ケーキの切れない非行少年たち』 宮口幸治著 新潮新書など参照)


 また、教育内容についても、実社会で生活する上で、必要不可欠と思えない内容がある。

 例えば、音楽、美術、漢文、古文である。

 意味がないということではない。実社会において必要不可欠かを問いかけている。

 前提として、今の小学生と中学生の勉強時間を増やさずに情報技術を追加することがある。

 つまり、今の義務教育の時間を増やさずに、情報技術の時間を取り入れるなら、必要不可欠でない内容を課外活動へとする必要があると考える。


 

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