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32.マサヒロの相手

 

 「本当に僕でいいのかな?」


 獅子族の平マサヒロはサラに聞く。場所は、図書館に併設されているレストランの外にあるテラスだ。


 数日前、サラの実母シズを神義官の事務員に採用する話をナナ子がシズにしたのだが、シズが固辞して止まっていた。

 ただシズは、替わりに平マモルではなく、平マサヒロをサラに推薦したのだった。


 「私より、適任な方です。」


 このようにシズは言い出して、マサヒロの説明を始める。

 マサヒロは、家出したシズを心配して探し、修道院にいたシズをやっと見つけていた。

 シズはサラについては何も語らないが、そのシズをマサヒロはいつも心配していた。

 しかもマサヒロは図書館に通ってこの国の農業について調べており、未来の計画を考えている。

 ゲームばかりしているマモルとは大違いで、シズの居場所については、いとこのマサヒロに聞いて知ったのである。

 このような理由でシズは、自分を雇うより、マサヒロを雇って欲しいとサラに頼んだ。



 そして二日前、神義官農業担当として力を貸して欲しいとサラから頼まれ、マサヒロは、祖父の獅子族である犬養キヨヒトに相談する。


 キヨヒトはマサヒロの母親トクの父、つまりマサヒロの母方の祖父になる。

 何故、相談したかと言えば、キヨヒトはマサヒロの亡き父の地所も併せて経営している大地主であり、ゆくゆくはマサヒロに自分の地所の経営も任せたいと言っていたからだった。

 キヨヒトの屋敷にある応接間でキヨヒトはマサヒロの話を暫く考える。そしてキヨヒトは、マサヒロから相談を快諾する。


 「勝手を言って申し訳ありません。」


 キヨヒトも、かなりの年なので、マサヒロに任せて引退したいと、最近は言い出していた。

 そのことを、マサヒロは申し訳なく思う。

 しかし、キヨヒトは笑顔で言う。


 「お前の勉強してきたことを、どう活かすか見ていよう。」 


 めっきり白い毛が増えた表情で、キヨヒトが言う。


 「まだ、勉強中ですがよろしくお願いします。」


 ふとキヨヒトが遠くを見る目でマサヒロを見る。


 「ところで、誰か好きな女の子でもできたのか?」


 「はい。今度会う時に、プロポーズするつもりです。」


 キヨヒトがマサヒロがやけに明るい理由に納得する。

 マサヒロは、サラと出会い、サラと話すことで、彼女が明るい性格であることが分かった。

 そして、マサヒロは気が付けはサラに惚れていた。

 マサヒロは、サラのことをキヨヒトに説明する。


 「良かったな。」


 キヨヒトの言葉にマサヒロが質問する。


 「そうでしょうか?」


 「お前の父が生きていれば、同じ事を言うはずだ。」


 キヨヒトはそのように笑いながらマサヒロに言う。


 このように発言したキヨヒトと違い、サラの父親である平ヨシカネの件について、マサヒロから説明を聞いたサラは失望しか感じなかった。

 聞けばヨシカネも地所を持つ大地主である。女の子とその母親を養うだけの十分な財力があるのに、サラとシズを棄てた平ヨシカネにはサラだけでなくマサヒロもうんざりしていた。

 ヨシカネがテラスでサラに言う。


 「僕でよければ、採用してほしい。」


 神義官の話についてマサヒロは了解した。マサヒロはこの国の農業の未来を変えるにはノンたちの力が必要だと考え、それをキヨヒトに話をして了解をとっている。マサヒロはサラに早速農業について話し始める。


 「農業のリスクは大きなリスクが二つある。」


 マサヒロはサラに説明する。

 農業の大きなリスクとして天候のリスクと市場のリスクがあり、これらは、情報技術(コアテクノロジー)を取り入れて対処しなければならない。その為には、大地主と小作人のやり方ではなく、会社組織に変えなければならない。マサヒロのこのような話には、サラも興味があった。


 この国の大きな問題は、極貧の小作人たちをどう変えていくかであり、小作人たちが会社員になり、収入がふえれば、この国の未来は明るくなる。


 話が弾み、夕方になった頃、彼らの前に多くの殺気が漂い始める。サラがバックから部品を取りだし薙刀を組み立てる。


 「どうやら未来を潰したい連中ニャン。」


 「僕を気にせず、サラは逃げてくれないかな?」


 てっきりサラは神義官である自分が狙いだと思っていた。しかし、マサヒロは自分こそが狙いだと説明して剣を抜く。

 マサヒロは父の不審な死についてサラに説明する。 

 だから、マサヒロは常に剣は持を持ち歩いている。


 「僕はこんなに危ない男なのに、逃げないのかい?」


 「逃げるなら二人ニャン。」


 「仕方ないな。狙いは多分、僕なのに。」


 サラもマサヒロの父の不審な死、鉄道の線路上に頭を割られて置き去りにされていた死が、偶然ではない事を理解する。


 「それでも一緒に戦うニャン。」


 「ここで生き残れたら、プロポーズしていいか?」


「分かったニャン。必ず生き残るニャン!」 

 

 テラスのテーブルを立てた後、サラのクナイが飛ぶと同時に拳ぐらいの石がいくつも飛んでくる。

 やはり、マサヒロの父の不審死は暗殺であった事が明らかになった。これだけの人数で投石されれば一人では防げない。きっとマサヒロの父はこのようにして暗殺されたのである。そして今、マサヒロもまた暗殺されようとしている。

  



 暗殺者たちが現れた理由は、前日の夜にある。

 前日の夜、マサヒロは母親のトクたちがおじの平ヨシカネに呼ばれて留守にしている中、風呂に入っていた。

 さっき、出掛ける前にトクには、サラの話をして了解してもらい、ほっと一息していた。

 だから油断していたのかもしれない。そこへ従姉妹のトチノハが全裸で入ってくる。

 トチノハは、何回かマサヒロにアタックして断られている。マサヒロがトチノハを断るのは、マサヒロの父の不審な死に方に、どうしてもトチノハの父、ヨシカネの疑いがあったからだった。

 父はヨシカネの病気見舞いの帰りで不審な死をとげている。

 それにマサヒロはトチノハの目的が、マサヒロではなく、マサヒロの地所でしかないように思っていたからである。

 もちろん、大地主では、お互いの地所を目的とした政略結婚があってもいいのだが、トチノハの父、ヨシカネは手段を選らばない危険がある。

 その上、トチノハと結婚しても、幸せを予想できない事も、トチノハを断る理由だった。


 トチノハにしてみれば、美容整形と豊乳手術(ちちもり)まで受けたのに、マサヒロに拒否されている。まだマサヒロの父がいた頃、トチノハはマサヒロとよく遊んだことがある。トチノハ自身はマサヒロを好きだった。

 だからヨシカネにマサヒロを誘惑しろと言われた時は嬉しかった。

 しかし、マサヒロから拒否されてしまう。今日はマサヒロの祖父と母親のトクはいない。トチノハは最早、体当たりで、マサヒロを落とそうと風呂に入った。


 「背中を流してあげるギ。」


 しかし、マサヒロがトチノハの目を睨んで言う。

 「好きな人がいる。僕は彼女に明日プロポーズする。」 

 マサヒロがトチノハに風呂から出て行くよう指さす。

 「出ていけ!」


 トチノハは、強い口調で言われてショックで何も言えずに出てしまう。

 そして、その日の内にトチノハから話を聞いたヨシカネはマサヒロの暗殺を決めた。

 ヨシカネは叫ぶ。


 「娘に恥をかかせたやつは赦さん!」



 二十人近い数のハイエナ族たちが、拳ぐらいの石を投げてくる。テーブルをたて、サラの薙刀とマサヒロの剣で防いでいるが、もうすぐテーブルが壊れる。


 マサヒロが言う。「壊れたら突入する。」

 テーブルが壊れたらハイエナ族たちへ突入することをサラに告げる。サラが頷く。


 その時、ハイエナ族たちに焔が上がり、叫び声が響く。


 「英雄(ヒーロー)登場ワン!」


 ノンの叫びと共にナナ子とモエがハイエナ族たちを背後から攻撃する。


 サラもマサヒロもハイエナ族たちが、動揺している隙に突入する。ハイエナ族たちが、全て倒された後、マサヒロがサラの前に立ち抱きついて言う。


 「好きだ。結婚してくれ。」


 マサヒロがサラにキスしている。サラが体を離して言う。


 「私もニャン。だから落ち着いてニャン。」


 サラが少し離れて壊れていないテーブルを置き、自販機からコーヒーを買う。サラが微笑み言う。


 「二人で飲みましょうニャン。」


 マサヒロがサラを見て笑う。


 二人のあつあつを見てノンがナナ子のお尻を触ろうとするが、しっぽで払われる。


 「うーーん、ケチワン。」

 

 ノンのもの欲しげな表情が、ナナ子に向かうが、ナナ子の細目がキラリと光り、ノンのしっぽが下がる。





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