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26.ムカシトカゲ

 逆ピラミッドの深殿で、黒フクロウ族の滅帝が側近のムカシトカゲ族の三つ目に話しかけていた。


 「強欲天が敗れたゲ。」


 「久しぶりに私の出番ですト。」


 淡々と三つ目が答える。ムカシトカゲ族の三つ目は滅帝の側近として、何人もの命を奪ってきた男だ。


 「ただ、天井には霞網をしてからゲ。」


 霞網は、害鳥を捕る為に設置する網で、見えにくい網でできている。


 「御意ト!」


 三つ目は、頭を下げ深殿から退出する。



 

 既にノンたちは、夏休みに入っている。そんな中、山々に囲まれた湖をノンたちは歩いていた。湖と言っても深さは数センチないのでまるで水面を歩いているように見える。ノンたちは水面の下にある砂地を歩いて湖の中心へ向かう。

 空はどこまでも青く、塩分が濃く生き物がいない湖面は、鑑のように空を写す。ナナ子やサラ、モエが足下に写る空を珍しげに見る。


 「とっても、とっても綺麗ワン。」


 「また来たいコン。」


 ナナ子がノンに言う。ノンは微笑み頷く。


 「みんなでもう一度、来るワン。」


 これは、皆が生き残ってもう一度、ここに来るというノンの宣言だ。モエが小声で言う。


 「ヤツガキタ。」


 辺りには急に雲が立ち込め、ノンたちはお互いを見失う。


 暫くすると、まだ雲は立ち込めているが、かなり薄くなりお互いが見えるようになる。

 そして、ナナ子がノンに言う。


 「少し休憩して、カステラを食ようコン!」


 ナナ子が背負っていたリュックをおろし、カステラを出そうとして、中に手を入れる。ノンが、兜を脱ぎ思わず口をあける。

 

 カーン。


 次の瞬間、リュックからのナイフをノンが弾く音が響き、周囲にいたミツルも、サラも、モエもノンに攻撃する。ノンはその全てを防ぎ、倒す。


 「似せものワン。」


 「なぜ、ばれたト?」


 「本物のナナ子なら、ケーキをここで出さないワン。」


 ナナ子の姿が、ムカシトカゲ族の姿に変わる。

 ミツルの姿も、サラの姿も、モエの姿も、全て三つ目の能力によって偽装されたムカシトカゲ族たちだった。


 雲が晴れた時、ノンと少し離れたところにナナ子たちがいた。


 ナナ子たちは雲の中で、方向が分からずとりあえず偽ノンと共に動かなかった。やはり、ノンを一人だけ引き離して倒そうとしたようだ。偽ノンは雲が晴れた時には消えている。

 

 「変身させる能力を敵が持っているコン。」


 「なぜ、偽物だと分かったブー?」


 ノンが鼻を高くして答える。


 「臭いが無かったワン。」


 ノンの臭覚はノンたちの中では一番だ。


 ノンたちは、更に進む。

 そして、ノンたちは、湖のほぼ中心にある台の上に着く。台には六芒星が描かれていた。ナナ子が頷く。

 

 「ワン(僕)は英雄ワン!」


 ノンが叫び、十字剣を六芒星の真ん中に突き刺す。

 

 その時、ノンの意識がなにもない空間に飛翔し、遠くで光っていた光の玉がノンに統合された。


 ノンが暫くして意識が戻った後、ノンの目は青く光っていた。

 

 「光る玉を受け取ったワン。」


 「それは天命コン!」


 天命を持つ者は二つに分けられる。生まれる時に渡される者と努力した結果として渡される者である。ノンは努力した結果として光の玉を渡された者だった。


 ノンたちが、岸辺まで戻った時、再度雲がノンたちを覆い、ノンの前に、大鎌を持った三つ目が現れる。

 

 「ただのスケベ犬が英雄など認めないト!」


 大鎌を降りおろす三つ目は、ノンの心を刈るべく、口激を始める。


 「ナナ子のお尻は最高ワン!」


 三つ目の口激にひるまず反論するノン。


 「駄目犬の英雄など冗談だ!」


 「嘘の死神こそ便所のちり紙ワン!」


 当初はノンをイライラさせて油断させるつもりだったが、余りに失礼な悪口にむしろ三つ目がイライラしてしまう。


 「お前の母ちゃん出べそ!」


 「お前の父ちゃん出べそワン!」


 悪口の言い合いを繰り返しながら、大鎌と十字剣が激突して火花を散らす。


 ノンと三つ目がどうしようもない悪口を繰り返している時、ナナ子の前には、偽ノンがいた。姿はそっくりなのだが、悪口を言っている本物のノンとは違い、目が賢い。


 「本物は、もっとスケベコン。」


 ナナ子は、炎球を放つ。


 ノンが三つ目と火花を散して戦っている時、ミツルの前にも偽ノンがいた。姿はそっくりだが、しっぽがたれていた。


 「仲間といる時は、しっぽは立っているブー!」


 ミツルがいきなり短槍で殴る。


 サラの前にもやはり偽ノンがいた。


 「ノンは胴長短足ニャン!」


 サラの前に現れた偽ノンの影が本物のノンより足が長かったので、サラが薙刀で斬りつけた。


 モエの前にいる偽ノンは、兜を脱ぎニコッと笑う。


 「キモチワルイ!」


 悪意のある嗤いで、モエは思わずレイピアで突き刺す。


 ノン以外は偽ノンが全て倒され、火花が散るのは、三つ目とノンだけになっていた。


 「駄目駄目犬!」


 「ムダ飯食いワン!」

 

 悪口をよく言われて耐性のあるノンと違い、かなりこたえる三つ目が、口激を止め、大鎌を大きくあげる。

 ノンも黙って三つ目を見る。

 三つ目が大鎌を降りおろし、ノンに攻撃する。次の瞬間、ノンの後ろで三つ目の額の目に十字剣が刺さる。

 三つ目は幻影の三つ目にノンを攻激させ、後ろから本物の三つ目が本当の大鎌を降りおろした。しかし、影で動きを見ていたノンがそのタイミングで三つ目に止めを刺したのだ。


 ノンの回りにナナ子たちがよってくる。


 「本物より賢そうな偽ノンだったコン!」


 「本物はいつもケーキでしっぽが立ってるブー!」


 「あんなスリムな影はしてないニャン!」


 「カワイクナイ。」


 ノンたちは、とうとう青霊の力を得た。



 

 その日の夜、逆ピラミッドの深殿に、四百四十四枚の石板が並べられた。それぞれの石板には、入滅帝札(イルメイテイカード)の絵柄が描かれている。


 「胴長短足犬を殺してやるゲ。」


 滅帝の前にあるそれぞれの石板から今にも怨念が姿を現れそうな様子を見て、滅帝が大きく嗤う。

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