25.水晶宮の霧
島の真ん中にある小山のような水晶の塊が水晶宮と呼ばれているものだった。
ノンたちが、水晶宮の前に並ぶと周囲に霧が立ち込める。そしてノンの前にでぶでぶな肥満したノンが現れる。
「これが、幻の霧かワン。」
これが水晶宮の幻として有名な試練である。
水晶宮は、人の心にある願望などを写しだし、その人の心を取り込み、現実から夢のなかへと誘って現実と幻の区別が見えない廃人にする。
霧がノンを包みこむと、ノンは、ノンが立派な家の中で、ケーキを食べているお坊っちゃんの姿で現れた。
ノンはその姿に吸い込まれそうになる。しかし、ノンはその中にナナ子がいない事に気がつく。
「ナナ子が居ないワン。」
ナナ子のお尻をなぜなぜした感触がよみがえり、ノンの幻が消え失せる。
霧の中でナナ子は、ナナ子が豊乳で美少女になっていた。
「やっぱり、これが私のあるべき姿コン。」
勿論、ナナ子もその姿に取り込まれそうになる。
しかし、そこには、ノンがいなかった。あの可愛い存在が消え失せていた。
「でも、この姿は約束した姿コン。」
ナナ子の姿は、タマオノマエがヤスベエに約束した姿だ。
ナナ子が目を瞑り、再度目を開けた時、幻は消え失せていた。
ナナ子が、隣にいるノンに言う。
「ノンのいない幻なんか要らないコン!」
ノンもナナ子に言う。
「お尻を触れない幻なんか要らないワン!」
ナナ子がノンの兜を外し、ナナ子の拳がノンの頬に炸裂する。
タマオノマエの影響が強くない時のナナ子は、やはりナナ子だった。
ミツルたちも無事、水晶宮の幻を乗り越え、ノンたちは水晶宮の奥にある光の間にたどり着く。
そこにある水色の台の上にノンたちがのると上から光が降りそそぎ、ノンたちの背に翼が現れる。ただし翼は折れて傷ついていた。
「飛べる翼がほしいワン!」
光が降りそそぎ、傷は治り、折れていた翼は飛べるようによみがえった。ノンが叫ぶ。
「みんな飛べるワン!」
ノンたちは水晶宮から家に戻る。
ノンたちが水晶宮から戻ってから数日後、珍しくナナ子の家でノンたちは瞑想をしていた。モエが呟く。
「アイツガキタ」
直ぐにノンたちは準備に入る。
ナナ子の家の前には、兜を着けた強欲天がいた。
強欲天の皮膚は大地につながっている限り鋼鉄のように強化できる。
だが強欲天には、鋼鉄のように強化できない部分が幾つかある。それが耳の奥とのどの奥、目だった。だから強欲天は兜を被っている。
兜を被った強欲天はほぼ無敵と言われている。更にナナ子の家の周囲には田んぼがない。つまりノンの家の近くのように逃がしはしない。強欲天は絶対の自信を持って叫ぶ。
「さっさと出てこいゾ!」
強欲天は今にも門を壊してしまいかねない。そこへノンたちが現れる。
ナナ子が炎球を放つ。
「我は不死身だ。さっさと死ねゾ!」
炎球を避けてノンたちに接近しようとする強欲天は自分が地面から浮き上がり始めている事に気づく。何が起きたのか分からない強欲天が空を見ると、気球に乗って針金の網で強欲天を吊り上げているサラがいた。
「卑怯もの!」
ノンたちは強欲天の対策ができたので、周囲に田んぼがないナナ子の家で集まり、強欲天を誘ったのである。
ノンたちは強欲天の対策としてナナ子の家の前に針金の網を敷いていた。それをナナ子の家の裏庭に隠していた気球で吊り上げたのだった。
どんどん上昇する気球にサラは乗っている。
「不死身なら、空気が無くても大丈夫ニャン。」
実はサラは水晶宮で水霊の力を得て飛虎に変身する能力を得た。猫人族にはまれに獅子族にの血が流れている者がいる。そのような者は飛虎に覚醒する事がある。だからサラは大気圏外までの途中で飛虎に変身して気球から逃げる予定だった。
強欲天がいくら頑丈でも空気が薄すければ意識を失い死ぬ。もちろんある程度の高さから落下しても致命傷になる。強欲天もそれに気がつき、かなりの高度にも関わらず、針金を斧で切りつける。
実は湖の時は、兜の中にある空気ボンベで空気を吸い、管を湖面まで伸ばしている。強欲天は橋の上で戦う時に湖へ転落する事を想定していた。しかし、大気圏外は想定外だ。
「ふざけるなゾ!」
何度か切りつけ、針金がきれて強欲天が落下する。ただの人なら大怪我をするのだが、強欲天は手をつき、落下の衝撃を手と足に分散させる。
まだ着地の衝撃で動けない強欲天にミツルが背後から肛門を突き刺す。強欲天の頭部以外の弱点は肛門だった。
「ゾ!ゾ!ゾ!ゾ!ゾ!」
強欲天が痛みに呻く。ミツルが短槍を引き抜き、強欲天が立ちあがろうと頭をあげる。そこへノンがヤスベエの必殺技、兜割りを降りおろす。
強欲天の兜が割れ、強欲天の頭が割れ、強欲天が倒れる。
岩を割って修行したヤスベエの必殺技が、強欲天に止めをさした。
ヤスベエの影響を受けスケベになったノンが、ナナ子のお尻に手を伸ばすが、避けられしまう。おもわずノンが言う。
「ケチワン。」
ノンはナナ子に恋人のように触れる事はまだできなかった。




