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18.サラの記憶

 ノンたちは、洞窟の出口にいる。

 洞窟の外にはカラス族たちが、大きな音とはげしい光を防ぐ為にヘルメットを被って木の上でノンたちを狙っていた。

 準備ができた事を確認したナナ子が手話でみんなに指示する。


 (始めるわコン。)


 ナナ子は宝炎剣を握って念を込め、洞窟の外へ数個の炎球を放つ。サラもいくつものブーメランを放つ。

 カラス族たちは、炎球もブーメランも避け、再度口撃を開始しようとした時、ノンが洞窟から出る。


 「スタートワン。」


 ノンへカラス族たちが一斉に飛びかかる。しかし、カラス族たちがノンに攻撃できる範囲に入る前に、ノンは洞窟内へと戻る。


 カラス族たちの何人かがノンのいた場所に降り立ち、ナナ子の矢とサラのクナイに倒される。

 慌てて再度、カラス族たちは木の上に逃げる。しかし、木の上に止まろうとしたカラス族たちの何人かが足を滑らせ、ナナ子の矢とサラのクナイで倒される。


 「やったワン。」


 ノンが作戦が上手くいって喜こぶ。

 実は、ノンが洞窟から出た時に、ノンは周囲に油を撒いていた。その為、いつものように木に立ち止まろうとしたカラス族たちが滑ったのである。


 再度、ノンが洞窟から出てくる。見逃すわけにもいかず、カラス族たちは、空中殺法をノンに、仕掛けようと接近する。


 「逃げるワン。」


 再度、ノンが洞窟内へ戻る。

 しかし、少し洞窟側にずれた位置にミツルが現れる。


 「勝負だブー。」


 ミツルを見たカラス族たちは、殺す対象をノンからミツルへ変更してそのままミツルに接近する。


 「ブタ、覚悟しろカー!」


 カラス族たちが近づくと、それを見てミツルも洞窟内へ戻る。


 「卑怯者カー!」


 カラス族たちは、数を頼み洞窟内へ入る。

 しかし、カラス族たちは、洞窟内に張られたピアノ線にひっかかってしまう。


 「引っ掛かったブー。」


 ノンたちは洞窟内にピアノ線を張り巡らしてわざとカラス族たちを誘ったのだ。最初にナナ子が炎球を放った事は、ダミーであり、同時にサラが投げたブーメランこそ本命で、ブーメランにはピアノ線が結びつけてあった。そして、そのピアノ線で洞窟内に飛びながら入る動きを邪魔していた。

 カラス族たちは、防音ヘルメットをしているので、お互いに連絡できなかったところをついた策だ。

 そして、ノンとミツルにピアノ線が張れた洞窟内へ誘い込まれ、カラス族たちは空中殺法を封じられて倒される。 


 ノンがガッツポーズで叫ぶ。


 「ビクトリーワン(勝った)!」


 最近、庶民学校で習った外国語(英語)をやたら使いたがるノンだった。

 

 サラが警察官に連絡して、カラス族たちは、強盗として処理される。ノンたちは特別案件扱いだったのですぐ解放される。


 特別案件とは英雄の試練の事である。

 英雄の試練に対して警察は中立だった。英雄は全ての力を得たら、社会変革を行う。当然今のままの方がいい者たちは阻止する為にどんな手段でも使う。その時、どちらかに警察がつけば、どちらかから恨まれる。警察が担当するのは、犯罪であり、このような政治がらみには、中立だった。



 サラは帰り道で霧の中での事を思い出していた。

 最初に浮かんだ記憶は自分が箱の中に棄てられる光景だ。


 洞窟に入る前までサラ自身が思い出せたのは、孤児院から子供のない猫人族の夫婦に引き取られからだ。

 サラは何とか人並みに生活しているが、今でも棄てた母親の事をずっと考えて生きていた。

 その母親の記憶が現れたのだ。

 その記憶は母親がサラを棄てる光景だった。


 記憶では、サラの母親はサラに言い訳をしていた。


 その言い訳は、女の子を生んでいるのだから、子供を連れて家を出るか、子供を棄てるか選べと言われたのだというものだ。

 東昇帝国では男子が優先して家をついでいた。サラの母親は女一人で食べる自信がないので、サラを棄てるのだと泣きながら言い訳をしていた。


 「どうか、こんな弱い母を許して。」


 「ニャー!」「ニャー!」「ニャー!」


 全力で全身の力を使いサラは泣く。


 「ごめんね。」


 サラを残して母親が去る。


 男尊女卑は、はるか昔の教え、従教の教えである。 男でも女でも能力がある者こそ、未来を手にする資格がある。

 サラはナナ子に協力して欲しいと言われた時、ナナ子が男女同権の社会を造ると言ったので、力を貸す事にした。


 「当たり前ニャン。」


 あの時は、母が弱いから、サラが弱いから、共に泣くしかなかった。だから、サラは強さを求めていたのだと分かる。


 サラの母親のような事は繰り返してはならない

 そして、繰り返さない社会を求め、ナナ子と共に戦う。そう心に決めた時、霧はすぐに消え失せた。


 もちろんノンの可愛いさもナナ子たちに協力する理由の一つではあるのが、これは女の子としては当然の理由だった。


 (可愛いので仕方ないニャン。)


 サラは心の中で呟く。



 

 

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