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13.炎霊の守護者

 蛇霊の力を得たノンは、瞑想中にしばしば飛び上がる。ナナ子は、それを見てため息をつく。


 「また、カステラでも浮かんだのコン?」 


 ノンたちは、ナナ子の部屋で瞑想をしている。

 他のみんなは静かに瞑想しているのに、ノンは、瞑想中に煩悩が爆発して飛び上がる。


 「難しいワン。」


 第一チャクラに貯まる煩悩を如何に昇華させるかで、ノンは試行錯誤している。

 ただ、ノンはそれが上手くいかず爆発して飛び上がる。これは、ストレスがたくさんある場合は、飛び上がりやすいということだ。

 ノンは、確かにカステラを食べたいと思っていたので、仕方く笑って可愛いく誤魔化す。


 「その通りワン。」


 ノンにそう言われてしまうと、どうしたらいいか考えてしまうナナ子だった。何しろ次の英雄の試練ではノンが欲望をもっと強めるはずだった。


 (何か考えなければ不味いコン。)


 ナナ子が色々考えているうちに週末になる。

 ノンたちは、東昇維新で重要な役割を果たす御戸藩の元藩邸があった場所にきていた。ここは、英雄の試練、炎霊の場所への中間地点だった。

 既に元藩邸は、公園になっており、ナナ子は、公園にあるフジタ西湖の像を見て言う。


 「よく攘夷運動(外人排斥)が盛んな時代に、開港の条件を知っているコン。」


 ノンの内心にいるタダロウがいた日本では、水戸藩は長い海岸を持っていたので、開港を外国に迫られるという杞憂が、過激派を暴走させた一因だった。

 もし、彼らが開港には、赤道まで腐らない水が必須であり、水戸藩には当時そのような水のある港はないという事実を、銅像になったフジタ西湖のように知っていたら歴史は変わったかもしれない。


 「大した物知りワン。」


 ノンの率直な感想だ。



 ノンたちは、御戸藩から炎霊のある温泉地へと移動する。辺りには硫黄の臭いが立ち込めている。

 そのノンたちを二十名近いネズミ族たちが囲んでいた。姿は強盗のように顔を隠した殺し屋たちが刀を抜く。


 「フシャー!」


 サラが唸り声をあげ牽制し、ナナ子が矢を何本も放つ。

 ネズミ族たちにとって猫人族の唸り声は、本能的にビビる声である。ネズミ族たちが躊躇っているうちに、ネズミ族たちの周囲からも猫人族の声がいくつもあがってくる。


 「フシャー!」「フシャー!」「フシャー!」


 幾つもの声にネズミ族の一人がたまらずに刀を放り出して逃げ出す。一人が逃げ出すと、残りのネズミ族たちも、みんな一斉に刀を投げて逃げ出す。


 「とりあえず成功コン。」


 彼らが逃げ出した後、ナナ子が矢と矢に付けた小型発音機を回収する。ナナ子が放った矢には、小型発音機が付いていて、ある時間が経過すると、小型発音機からサラの唸り声がでるように、タイマーでセットしてあった。

 ノンが家の前でネズミ族に襲われた話を聞いたナナ子が、サラに協力してもらい準備していたのだ。


 「頑張ったかいがあったニャン。」

 「御苦労様コン。」


 ネズミ族の残した刀のうち、サラが何本かを背負い、ナナ子も何本かを背負う。ミツルも何本かを持つが、ノンだけは元々、鎧が重い上に大きな袋を持っているので刀を持たない。

 ナナ子が残った刀に硫黄をすりつけた後、ノンたちは、更に進む。


 

 ノンたちは、しばらく進み、滝の前に着く。秘伝書の地図ではここに炎霊への洞窟があるはずなのに、目の前にあるのは滝である。


 ナナ子が首を傾け考える。

 「おかしいコン。」


 しばし、ナナ子は滝を見て足元の石を拾う。ナナ子はその石を滝へ投げる。また、石を拾って滝へと投げる。

 そして、ナナ子は滝へ入り、また出てくる。


 「滝の裏に、洞窟があるコン。」


 さっきナナ子が石を投げていたのは、滝の裏に洞窟があるかどうかを確かめようとしていたのだった。

 ノンたちは、滝の裏にある洞窟の中を進む。

 暫く進むとノンたちは洞窟内にある広い空間に出る。

 そこでノンたちが見たものは二面四臂の像であった。

 その像は片方は怒った鬼のような表情であり、もう一方は骸骨であった。ノンが十字剣を構えながら、近寄る。

 ミツルもノンの後に続く。前回のようにいきなり何かが現れたときに対処する為である。


 彼らが像にあと一歩までと近寄った時、像の影から突然ワニが現れる。

 炎霊の守護者と言われるワニだ。

 ノンが大きな袋から肉の塊をワニに投げる。ワニが肉の塊を飲み込む。秘伝書に炎霊の守護者としてワニが書かれていたのでノンたちは肉の塊を用意していた。


 「火を点けるワン!」


 ノンが叫び、ワニの口から出た導火線を指す。しかし、宝炎剣を持ったナナ子は、焦って上手く宝炎剣の特殊能力である炎を使えない。


 「誰か火を点けてコン!」


 サラがナナ子の様子を見て、ライターに火を点けまま導火線へ投げる。導火線に火が点いたが、ワニの口元で火が消える。


 「何で消えるニャン?」

 

 肉の塊を飲み込んだワニが、近くにいる十字剣を構えたノンを飲み込む。


 「兎に角、ワニを倒すブー!」


 ミツルがワニの心臓めがけて、短槍で突く。サラもクナイを握ってワニの頭を突く。

 

 ワニがノンの上半身を剣ごと飲み込んだまま暴れ、ノンごと振り回す。

 上半身が飲み込まれたノンが、短足をバタバタさせる。

 ワニはノンをそれ以上は飲み込めにいる間にミツルとサラに攻撃され、動かなくなる。


 ミツルとサラによってワニの口が割かれてノンが助けて出される。ノンがワニの口から出て、ワニの口の中で突き刺してつっかえ棒になっていた十字剣を抜く。


 「フー、また飲み込まれたワン。」

 

 一息ついたノンが立ち上がり、像の下にある赤い六花片の絵を見た。この絵が第二チャクラ、炎霊のヒントだ。ナナ子が頷くとノンがその中心に十字剣を突き刺す。ノンの体の中を何かがかけ上がり、ノンの体がほぼまっすぐになる。ノンはそれで像と向き合う姿勢になった。


 ノンは暫くそのままだった。そして兜を脱ぎペタッとなる。

 心配してナナ子が聞く。


 「どこか痛いところがあるコン?」

 「あそこが立って痛いワン。」


 ノンが炎霊を得れば、ノンのムスコが膨張する事は、秘伝書に書いてあった。

 ノンの欲望が強化されることは予想していたことだが、どうするか考えをまとめる前に、ノンの状態がはち切れそうだ。しかし、あからさまに言われて、ナナ子は顔を赤くし、細目を開けてしまう。

 今のところ、ノンはムスコが鎧に当たって、擦りきれて、とても痛い。


 「とっても、とっても痛いワン。」

 「それは、大変ブー。」


 少し、同情するミツルだった。


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