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12.二人の父

 ノンたちが戻る時、ナナ子は入り口にある門に尾斜門堂から再びカギを取り出し閉める。その後、尾斜門堂にカギを戻し、お札を貼り直す。

 英雄の試練でノンが蛇霊の力を得たことを、現体制の保守党に知られないようにと願い、ナナ子はしっかりと札を貼る。


 「これで、多分大丈夫コン。」


 現政権の保守党は、東大陸の均一主義(コミュニズム)大国と手を組み、利権を得ている従属犬派(ハイエナ)頭領主義(キャピタリズム)大国と手を組む従属鷹派(ハゲタカ)が、二大派閥を構成している。

 この三十年近く、この二大派閥は東昇帝国の知的財産権などを他の国に渡して、自分達の私益を図り、国民は未来を盗まれてきた。

 シゲルが属している民族派は、第三派閥でしかなく、特に従属犬派(ハゲタカ)は売国奴とさえ言われるほどの私益維持集団だ。

 従属犬派(ハゲタカ)は、私益の為には手段を選ばない。


 ナナ子たちが未来を取り戻そうとすることは、)従属犬派ハイエナの私益を、国民の利益として取り戻そうとすることだ。従属犬派(ハイエナ)にはなるべく知られない方がいい。


 「英雄になるワン。」

 「未来を取り戻すニャン。」

 (誰かさんとイチャイチャするブー。)


 それぞれがそれぞれの思いを持ちながら、まずは一つ目の試練をノンたちは達成した。



 

 ノンたちが、英雄の試練を一つクリアした日の夜、高家の婿養子であるタヌキ族のシゲルは、ある人物から呼び出されていた。

 シゲルは、長い地下道を長々と歩き、その人物がいる深殿の奥、滅帝の間に着く。

 そこには、何段もの高い台座に黒フクロウ族の長老、滅帝がいた。滅帝は、この国を操る従属犬派(ハイエナ)の影のボスだ。



 シゲルは、緊張しつつ挨拶する。

 「御前におかれてましては、恙無くご健勝で何よりと思っております。」


 シゲルの言葉に赤目を光らせ滅帝が言う。

 「そうでもないから、汝を呼んでいるゲ」

 「それはまた、何でしょうか?御前を悩ます者なら私が排除(殺す)いたします。」

 「汝の娘でも排除(殺す)できるゲ?」


 シゲルは、保守党にとって影のボスである滅帝が既にノンたちの動きを知っている事に驚く。


 (さて、どのように説明するか。)


 シゲルは、自分と自分の娘の安全の為にどのように説明するかを選ぶ。


 「何の事かと思えば、その事でしたか。」


 シゲルは、英雄になろうとしている者が、赤尾の七剣士の末裔である事、その為、英雄の試練で四番目までしか、高家の娘とは上手くいくはずがない事を説明する。四番目の試練は、感情の試練であり、仇同士の先祖を持つナナ子とノンでは、上手くいく筈がない。


 「だから、御前におかれては心配などすることはないと考えます。」


 (父としては、まあまあの説明かな。)


 シゲルは顔には出さずに説明を終える。



 滅帝は、シゲルを下がらせる。

 シゲルが深殿の間から姿を消してから、影からムカシトカゲ族の三ツ目が姿を現す。


 「御前、いかがいたしますか?」

 「やつが心配するなと言っているのだ。」

 「分かりました。排除(殺す)します。」


 保守党においては、他人を信じる者は殺されても仕方ない者である。シゲルが大丈夫だと説明する以上、対処するべきだった。




 次の日、ノンは家の前で刀を突きつけられている父のタダ夫を見ている。顔を隠しているネズミ族の男は四人、そのうちタダ夫に刀を突きつけている男が怒鳴る。


 「背中の剣をこっちへ投げチュ!」


 ノンが背中から十字剣を外して、投げる。

 ネズミ族の男が十字剣を取ろうと近寄った時、ノンが唐辛子の粉をまく。ノンもむせる中、足に隠していた短剣をタダ夫に刀を突きつけていう男に投げる。

 男が短剣をよけ怒鳴るなか、タダ夫が逃げる。ノンはもう一本の短刀でネズミ族たちに斬りつける。

 ネズミ族たちが、ノンを取り囲もうとするが、サラが現れクナイが飛ぶ。ミツルも現れ、短槍でネズミ族を倒す。

 あっという間に、ネズミ族は全員倒される。


 「ノンの家族が危ないとナナ子が言ったブー。」

 「こっちにも、緊急連絡があったニャン。」


 ナナ子の霊感が、何かの危険がノンに迫っている事を告げていた。そこでミツルたちにナナ子連絡して、ミツルたちが急いでやってきたのだった。

 サラが警察官を呼び、強盗がノンの家族を襲ったと説明した。

 ネズミ族たちは、強盗のような姿をしていたので、そのままノンたちの正当防衛が認められた。



 

 ミツルたちと警察官たちが帰った後、母のマサ子が帰ってきた。マサ子は、ひとしきり話を聞いたが、なにも言わずに迎え火(先祖の霊が戻る時に迷わない為に焚く火)の準備を始める。


 小さな木に火を点けてまずマサ子が三回、小さな木の上を往復する。次にノンが往復する。最後にタダ夫の番になり、タダ夫は手抜きでまたいだまま片足を三回上げて済ませようとする。しかし、和服の裾は長く小さな木から火が移ってしまう。


 「アチ、アチ、アチチ、・・・・」

 タダ夫は急いで服を脱ぎ、火を消す。


 マサ子は何も言わず小さな木の火を消して家に入る。

 

 タダ夫がノンに呟く。

 「おとんは、タダ夫じゃなくて、ダメ夫だな。」

 ノンがタダ夫に言う。

 「ダメダメでも、おとんは、おとんワン。」


 タダ夫が夜空を見て言う。

 「ダメダメでも、おとんは、おとんか。」

 再度、ノンが言う。

 「ダメダメだけど、おとんは、おとんワン!」


 暫くノンを見ていたタダ夫が、ノンから視線を外して言う。

 「英雄のおとんがダメ夫じゃ、ダメだな。」


 次の日、タダ夫は、仕事を求めてチャミを背負ってでかけた。




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