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11.大蛇の試練

 「大蛇の試練ワン。」


 ノンはコーギー犬族である。だから、本来はビビリである。でも、ノンは、何とか勇気を引きづりだして言った。


 ノンたちは、ナナ子の御先祖様である坂田丸が残した秘伝書を見ながら、ある洞窟の中を進んでいる。


 坂田丸は、北に輝く星を参考にして七霊を配置し、英雄が必要になったら使うようにと、その地図と説明を秘伝書として天弧族の高家に残した。


 今回からノンたちは武装している。英雄の試練は、村社の試練とは違い、命をかける試練である。だからノンたちは、それぞれ身に着ける鎧などを高家の蔵から持ち出している。もちろん本当の戦争ではないので、この異世界での第一次世界大戦より前までの武器しか使ってはいけない制限がある。


 ノンについては、西洋鎧を身に着けているが胴長短足なので、腕と足は二重になっている。またノンの武器は英雄が必ず持つ十字剣である。これは見た目にはロングソードに似ている。このような装備なので、結構、重たい。


 「ウーン。疲れたワン。」


 ナナ子が近づき、頭を撫で撫でする。


 「ノンは、頑張れる子コン。」


 ノンは重たい装備でも、動き出す。


 ノンが撫で撫でしてもらった様子を見ていたミツルは心の中で呟く。


 (僕だって何時かは誰かさんとイチャイチャするブー。)


 ミツルも西洋鎧を身に着けているが、少しお腹に余裕がないので痩せないといけない。ミツルの選んだ武器は短槍である。


 ナナ子は、魔法使いとして三角帽子とマントを着け、下には、鎖かたびらを着けている。そして母のクズハから高家秘伝の宝炎剣を預かっていた。

 ナナ子も、かなり緊張している。


 「でも、ナナ子は頑張れる子。」


 ナナ子は自分自身に言い聞かせるように言う。



 サラもセーラー服の下に、鎖かたびらを着け、鉄玉だけでなく、短刀とクナイを持って参加している。


 英雄の試練は、ある面では英雄本人の試練だが、もう一つの面では、社会変革を起こす集団の試練でもあった。


 「私だって、誰かさんとイチャイチャできる社会を取り戻すニャン。」



 

 ノンたちがそれぞれの思いを持ちながら進むと御堂があり、その後ろには洞窟がある。ただその洞窟の門が閉まっていた。

 御堂は尾斜門堂であり、その扉にはお札が貼ってある。ナナ子がお札を剥がして扉を開け、中に入る。

 

 尾斜門堂の中に尻斜門天の像があり、手にカギを持っていた。これは、秘伝書に書かれていた通りだ。


 ナナ子はカギを手に取り、外に出て洞窟の門を開けた後、再びカギを尾斜門天に返してお札を貼る。


 ナナ子が手を合わせて尻斜門天に祈る。


 (どうか、無事に戻ってこれますよいにコン。)



 ノンたちが洞窟の中へ入る。そして更に進むと、何かが接近してくる。


 「唐辛子のエキスワン!」


 ノンが叫び、唐辛子のエキスを前に撒き始める。ミツルたちもノンに合わせて自分たち、つまりノンたちの周囲に五角形を作るように唐辛子のエキスを撒く。ノンたちは何かの害虫、害獣が接近した場合を想定して唐辛子のエキスを準備していた。


 ガサガサという音が大きくなり、何かが接近してくる。嵐のような音が接近し、ノンたちをムカデの大群が避けて通りすぎた。大半の害虫、害獣に唐辛子のエキスは有効性がある。


 ふー、ノンたちは息を吐く。


 ノンやミツルは顔まで全身鎧で覆われたいるが、ナナ子とサラは顔など肌が露出しているので、危険だったから本当にほっとした。

 ただ、ノンは鎧が重たいので、弱音をはく。


 「少し休もうワン。」


 しかし、ナナ子が細目を光らせて言う。


 「まだ、気を抜くのは早いコン。」

 

 更にノンたちが進む。しばらくするとかなり広い空間にたどり着く。真ん中には、大人より大きい三面六臂の像が台の上にあった。


 大きく息を吸い、全身の勇気を振り絞り、ノンはそっと一足ずつ近寄る。

 一歩一歩ノンが慎重に近寄る。

 ノンは本当に本当にビビっている。

 今まではナナ子というお嬢様とカステラの御菓子につられて我慢していた。しかし、さすがに隠しきれず、しっぽの毛が逆立っている。


 「ナナ子、ケーキ、ナナ子、ケーキ・・」

 心の中で言うつもりが、声に出てしまう。


 ノンは像の足元に描かれた十字の印に、向かって一歩、一歩近寄る。しかし、あと一歩というところで、突然太い大蛇が天井から現れ、ノンに巻き付く。


 鎌首を上げる大蛇に、ナナ子は宝炎剣を取り出し大蛇に投げつける。

 ミツルは全力でノンに近寄り、巻き付いた大蛇に短槍で突き刺す。

 ミツルに短槍で刺され、頭に宝炎剣が刺さった大蛇が、ノンの胴体の締め付けを緩めたスキに、ノンは十字剣を大蛇の口の奥に刺す。ノンは手ごと大蛇に飲み込れるが、ノンの腕は二重の鎧で大蛇にも噛みきれない。


 「腕は、二重の鎧ワン。」


 サラが動きが鈍くなった大蛇の両目をクナイで突き刺す。

 ミツルは短槍を引き抜き、ノンの腕を飲み込だ大蛇の口元へ斬りつける。


 「裂けろブー。裂けろブー。」

 それでも、大蛇はしばらくノンを腕ごと飲み込もうとする。

 しかし、十字剣が胴体を突き抜け、外まで刃が出ていたので、飲み込もうしてもかえって胴体を斬り割いていく。ミツルとは反対側の口元をサラが裂けよとばかりに短刀で斬り裂く。


 「飲み込むのを止めろニャン。」


 更にナナ子が宝炎剣にとりつき、力を込めて大蛇の頭に突き刺す。


 「ノンを飲み込むなコン!」


 何度も何度もサラとミツルが攻撃して大蛇の口が裂ける。大蛇からノンの腕をミツルとサラが引き抜き、ノンが十字剣を内側から大蛇の頭に突き通す。外側からと内側から頭を突き刺されて大蛇の動きが止まる。

 ノンは胴長短足であった為、二重に鎧を着けていて助かった。


 「助かったワン。」


 胴長短足で本当に良かったとノンは生まれて始めて思った。


 

 暫く休憩してから、ノンは像の足元に描かれた十字の記に近寄る。 十字にはヘビが三回半巻き付いていた。ノンが十字剣をビビりながら突き刺す。


 「ワン(僕)は英雄になるワン!」


 十字剣を刺した時、ノンが飛び上がる。

 第一チャクラ(蛇霊)のエネルギーを刺激する効果がその記にはある。そして、蛇霊のエネルギーには、人を飛び上がらせる事がある。

 

 でも、ノンの鎧で重たかったので、見た目には少しだけ飛び上がった。そしてナナ子をキラキラした目で見て一言。


 「ケーキワン!」


 やっと緊張が取れて微笑むナナ子だった。

 


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