103.凶皇との最終決戦
|地の底の闇≪シャンバラ≫では、風が吹かず空気が淀んでいる。
ノンたちは凶皇の闇人形を倒した後、その奥へと進む。先頭はノンとナナ子の円盤型機械武装と犬型機械武装である。
ノンがナナ子に個人回線を開く。普通はグループ回線を開くが個人的に話す場合は個人回線だ。
ノンが言う。「次はきっとラスボスワン。」
もうそろそろ最終の敵だと言うノンにナナ子が不安を感じて言う。「油断しないようにコン。」
ナナ子が不安を感じているにも関わらずノンは言う。
「凶皇を倒したら、ナナ子と子作りワン。」
確かにノンとナナ子は夫婦だが、今は避妊剤で子作りは中止しているで、ナナ子が少し顔を赤くしている。
「何も今言わなくてもいいコン。」
ノンが構わず言う。「コーギー犬族の男の子と天狐族の女の子がいいワン。」
獣人であるから、双子もよくあることだ。そしてその組合せは、まるでノンとナナ子の組合せのようだ。
ナナ子が言う。「まるで私たちみたいコン。」
ノンが言う。「もし、ワンが死んでも子供二人が力を合わせてほしいワン。」
ナナ子が言う。「あなたが死んだら子作りできないコン。」
ノンが暫く黙る。そして言う。
「精子バンクに預けてあるワン。だからお願いワン。」
ナナ子は驚き、言葉がでない。
ノンが言う。「男の子はタロウ、女の子は八重子。」
二人の子供の名前だ。
ナナ子が言う。「生きて二人で子作りコン。約束コン。」
ノンが言う。「もちろんワン。子供たちの未来を約束ワン。」
ノンが個人回線かグループ回線に変更して言う。
「凶皇を倒して、未来を開くワン。」
「「「「「「オー。」」」」」」」
皆の言葉が呼応する。
凶皇は、地の底の闇で二体の巨大な存在を見ている。
凶皇が言う。「駄犬さえ倒せば後は雑魚ぺ。」
凶皇の前には、七つの首と十本の角をもつ七竜王がいる。七竜王自体は真っ黒で色が見えないのだが首の上にある目と角が赤く光るので七つの首があると判断できる。
凶皇は隣のやはり七つの首と十本の角を持つ複合獣の前に動き言う。
「兎に角、儂が駄犬を倒すまで時間を稼ぐぺ。」
複合獣の七つの首の内、豹と熊と獅子の顔以外は分からない。ただ七つの首の上には全て冠が載っている。
凶皇は、次の情報衡平社会において人類を滅亡させる為に一神教として大嘘をついた闇ミトラ教を広めた。
もちろん、利用されたイエシユアとその弟子たちを弾圧し、闇ミトラ教会が今まではイエシユアの後継者になりすましていた。
最近は均一主義という大嘘が人の不幸を増加させ、人類の未来を消滅させるはずだった。
しかし、それらの大嘘がばれて今、凶皇は追い詰められている。
そもそも世の中の大半の不幸は、大嘘をつくエゴイストとその大嘘を信じるお人好しに因って造られる。
分かりやすい例では、均一主義である。
均一主義の社会になれば、皆が平等になり、皆が豊かで幸せになると宣伝している。
しかし、実際には一分の特権階級だけが豊かで、他の大半は貧しく不幸な社会でしかない。
このような大嘘をマスコミによって人々に宣伝することで、次の情報社会を破綻させる。
これが凶皇の目論む人類破滅計画だ。
これからの情報社会において、大嘘が混じれば混じるほどその社会が機能不全に為る。そして情報自体について真偽を確かめる時間がかかり、その為の能力が必須になる。
そして大嘘だらけの社会は、社会が壊死する。結果、不幸な人々のストレスを外国に向けるしかなくなり、外国を悪者とする全面戦争で人類は再び、ほとんどが死滅して原始時代へ戻る。
これが凶皇の人類破滅計画である。
この|人類破滅計画≪最終目標≫を阻止できるとすれば、それは勇者の存在だ。
だからこそ凶皇が言う。
「どんな手段だろうと、勇者を倒して人類を破滅させるぺぺぺのぺ。」
凶皇自体が巨大化してまるで骸骨に青白い皮膚を張り付けた死神のようになる。
最初に地の底の闇に入るノンとナナ子のが巨大化した青白い死神のような存在、凶皇と対決する。
ノンが言う。「大嘘つきは許さないワン。」
凶皇が言う。「人類を宇宙に出すことは、宇宙にウイルスをばら蒔くことペ。許されないぺ。」
犬型機械武装の大剣が凶皇の巨大鎌と激突する。
ノンが言う。「お前が大嘘の元凶ワン!」
犬型機械武装が飛ばされるが、円盤型機械武装に噛みついている犬型機械武装は回転して再び凶皇に攻撃する。
次にやって来た虎型機械武装に乗った軍女神は、七竜王と対決する。
ミツルが叫ぶ。「そこをどけブー。」
七竜王は答える代わりに赤い目からレーザー光線で攻撃する。しかし、軍女神の盾から出るバリアーがレーザー光線を防御する。
軍女神が三叉戟と炎槍で七竜王を攻撃し、飛光輪を飛ばす。
しかし、七竜王の胴体部分で渦に巻き込まれてダメージが分からない。
ミツルは早くノンを応援したいのに、七竜王が邪魔している。
カオル姫が叫ぶ。「焼け焦げろブヒ!」
雷鈴から七竜王に雷撃を放つが、七竜王はやはり渦をつくりダメージを分散させる。
パンテラが叫ぶ。「大嘘つきは消えろ!」
虎型機械武装も口からレーザー砲を発射するが、光の束が七竜王の胴体部分でやはり渦に巻き込まれてダメージが分散させる。
死天女の前には、七つの頭を持つ複合獣が立ちはだかる。
冠を被った七つの複合獣のそれぞれからそれぞれの七色の毒ガスが死天女に向け発射される。
アキラが言う。「そんなものは効かない。」
死天女のドクロが全ての毒ガスを吸い込み、三叉戟を死天女が複合獣に突き刺す。
しかし、複合獣の胴体部分に渦ができ、ダメージが分散される。
シンニが叫ぶ。「民族が自分の未来を取り戻す。邪魔よ!」
死天女も雷鈴で攻撃するが、複合獣は、まだ七色の毒ガスを吐き続ける。
ミツルたちやアキラたちがそれぞれ戦っている頃、ノンとナナ子も凶皇が巨大化した青白い死神と戦っている。
巨大鎌の攻撃を避けながらノンたちは、青白い死神と戦っているのだが、ノンの大剣による攻撃も、ナナ子による火炎放射による攻撃も、青白い死神には全く効いていない。
凶皇が嗤いながら言う。「無駄ぺ。お前たちの攻撃は無駄ぺぺぺ。」
ノンが言う。「死神の実体は違うワン。」
青白い巨大な死神は何度攻撃しても修復して攻撃して来る。
軍女神のミツルからも連絡が入る。
「こっちも全ての攻撃を効かないブー。」
死天女のアキラからも連絡が入る。
「何をしてもダメだ。」
ノンがユダから預っていた正十字架を握る。
ナナ子がノンが命をかけて何かしようとしていることを直観で感じる。
ナナ子が叫ぶ。「私はあなたに会えて幸せコン。だからここで最凶奥義を使うコン。」
円盤型機械武装から炎が吹き上がり巨大な九尾の狐が現れる。
青白い死神の巨大鎌をかわし、その背後から青白い死神を巨大な炎で覆う。
これは、天狐族における最凶にして最強の奥義、九尾火炎輪である。如何なるものも焼きつくす奥義である。そして術を使った者の命を危険にさらす最凶の奥義である。
青白い死神は燃え上がり姿が消える。
円盤型機械武装からナナ子が現れる。
犬型機械武装からノンがかけよる。
ノンが言う。「駄目ワン。死んじゃ駄目だワン。」
ナナ子がやっと言う。「ごめんコン。あなたが死ぬのはイヤだから、、、」
ナナ子にノンが手を充てる。ナナ子が目を閉じる。
ノンが叫ぶ。「隠れていても無駄ワン。」
青白い死神が再び姿を現す。
凶皇「きさまは気づいていたのかぺぺ?」
ノンが言う。「今、気づいたワン。」
ナナ子の命がけの奥義でも、その存在感は消えなかった。
この地の底の闇自体が凶皇の存在そのものなのだ。
凶皇が言う。「さあ、どうするぺぺぺ?」
ノンが叫ぶ。「ワンの命をかけて光の神を呼ぶワン。」
ノンが正十字架を握り叫ぶ。
「エロイム、エッサイム。ワンは命をかけて求め、訴えたり。我らのもとに来たりて闇を滅し、暗黒神を消滅ワン。」
本来はイエシユアが人々の前で実行しようとしていたことだ。
ノンの体自体が光に覆われ地の底を光に満たす。
青白い死神も、七竜王も複合獣も消える。
消えながら凶皇が言う。「これが目的ぺ。勇者さえ死ねば再び大嘘の世界に戻るぺぺぺ。勝ったぺぺぺ。」
ノンが意識を失いつつ言う。「勇者は一人じゃないワン。天命は、人々の深層意識に繋がれば誰でも勇者ワン。」
凶皇が負けじと言う。「人々は大嘘の世界で破滅するぺぺぺ。」
ノンも負けじと言う。「全てはこれからの行動ワン。」
凶皇の意識が消え、ノンが倒れる。