102.凶皇の闇人形
凶皇は、暫し考える。そして呟く。
「ぺぺぺ。ぺのぺのぺ。また殺られてしまったぺ。」
泥人形も機械人形も依代を破壊されてしまった。闇のエネルギーを使い動かすので、依代が破壊されるとおしまいである。
空気スライムでも、依代が空気の中に漂うPM2.5であろうともやはり物質である以上、破壊は可能だ。ならば物質でないものならば破壊できないのではないか。
「やっといい事、思いついたぺ」
凶皇は、何かを依代に闇の力を実態化することにする。
「デミウルゴスよ。我は求め、訴えたり。最凶の皇帝を実態化させよ。」
ナザレのイエシユアから言葉と人生を奪い、人類の原罪をなすりつけた闇ミトラ教会の大神官、コンスタンチン・マキシマム。
世界史の中で多くの人々を不幸にした大嘘つきを三人あげるなら必ず入るべき男である。
その悪霊の闇が集まり実態化する。
かつて実際に皇帝であったその姿だ。
「我は闇ミトラ教会の大神官、コンスタンチンである。」
その目は紅く燃えて、凶皇を睨んでいる。
凶皇が言う。「我も闇ミトラ教会の神に仕える凶皇ぺ。」
凶皇もコンスタンチンを睨んでいる。
コンスタンチンが言う。「何か用か?」
凶皇が命令する。
「煉獄の広場へ向かうぺ。そこを通すなぺ」
煉獄の広場とは、凶皇のいる地の底の闇へとつながる道の途中にある巨大な地下空間だ。
コンスタンチンは聞く。「それで何が手にはいる?」
凶皇が言う。「自由にしてやる。」
コンスタンチンが英雄を殺せば、コンスタンチンを自由にしてやると凶皇が約束する。
凶皇の闇人形であるコンスタンチンは姿を消す。
ほぼ同時に煉獄の広場に闇人形、コンスタンチンの姿が現れる。
ノンたちは、地の底の闇に向かって飛行している。先頭はノンとナナ子の円盤型機械武装と犬型機械武装、次は虎型機械武装に乗っている軍女神のミツルとカオル姫とパンテラたちで、最後は死天女のアキラとシンニだ。
凶皇の攻撃が激しいので攻撃力と防御力が優れた|深層機械武装≪シン・メカアーマー≫のメンバーだけである。
そしてアキラは、人類を滅ぼす凶皇について考える。
凶皇の配下の六帝の共通項は破壊衝動だ。その破壊衝動の手段の一つが大嘘だ。だからどのような罠を仕掛けてくるかアキラは考える。しかし、アキラにはどんな罠を仕掛けてくるか分からない。
アキラが聞く。「ノンさん。何を考えている?」
ノンが言う。「ケーキワン。」
帰った後、ノンはナナコからケーキを期待している。
ナナ子が言う。「アキラさんは、きっと敵の罠について聞いたのコン。」
ノンが言う。「分からないワン。」
ノンは即答する。
いくら大嘘つきの罠を考えても分からないので考えない。
ノンは割りきっている。
それを聞いたアキラも確かにいくら考えてもムダだと気づくと黙る。
ノンたちが地下の巨大な空間、煉獄に着いた時、そこには巨大な三つの頭を持って六本の腕を持つ石で出来た巨人がいた。
巨人の頭の一つは、目が一つだ。その一つ目の頭が言う。
「闇ミトラ教会の忠実なる信者、テオドシウスである。」
その横にある目が二つある頭が言う。
「闇ミトラ教会の知事、キユネギウスである。」
二つ目と逆サイドにある三つ目の頭が言う。
「闇ミトラ教会の大司教、テオフイロスである。」
ノンが言う。「邪魔ワン。」
進行方向を遮られたノンが言う。
テオドシウスが言う。「死を与える。」
テオドシウスが、巨大な手に持つ斧で攻撃する。
ノンとナナ子は円盤型機械武装と犬型機械武装を急速回避させ、炎球をぶつける。
「手伝うブー。」
「これでも喰らえ!」
既にノンたちが戦闘を始めているところへ、虎型機械武装に乗っている軍女神から飛光輪が巨人へ向かう。
別の頭であるキユネギウスが鉄球がある棒で飛光輪を弾く。
アキラが叫ぶ。「邪魔だ。消えろ!」
後から現れた死天女が三叉戟で攻撃するとテオフイロスが巨大剣で防ぐ。
ノンが背後に回るとテオドシウスが頭の位置を移動させて、巨人の死角を無くす。
周囲を三つの頭が見る中でそれぞれの頭に二本の腕が配置され、三つの巨大盾が現れる。
ノンがナナ子に言う。「脳天割りワン。」
円盤型機械武装と」犬型機械武装が天井へ飛ぶ。
三つの頭の死角は、真上だと考えたノンとナナ子が真上から急降下する。
巨大盾を頭上にかざしす巨人。
そこに火炎放射をしながら急降下する円盤型機械武装と犬型機械武装。
ゴーーン。
巨大盾と何かが激突した音が空間全体の空気を振動させる。
ノンは犬型機械武装の大剣で巨大盾を斬りつけ、円盤型機械武装の衝撃を柔げて着地し、巨人の首に斬りつけている。
巨人が動きを止める。そして砂となって崩れる。
ノンが言う。「やったワン。」
ナナ子が言う。「もう少し様子を見るコン。」
周囲の砂の煙りが収まり、へりに牢屋が現れる。中には長い髭をはやした老人が一人いる。
ノンが聞く。「名前はワワン。?」
その老人が言う。「名前はキユリロス。イエシユアの言葉の研究家じゃ。それで捕まってしまったじゃ。」
ナナ子が聞く。「イエシユアの言葉を研究しているのなら、今の闇ミトラ教会は何か説明してコン。」
キユリロスが言う。「闇ミトラ教会は、イエシユアの言葉と人生をイエシユアたちから奪い、それを利用して闇ミトラ教会の現実世界を支配する為に使う者たちじゃ。」
パンテラが聞く。「だからイエシユアを殺し、弟子たちを殺し、その書いたものを燃やしたのか?」
キユリロスが言う。「その通りじゃ。本当のイエシユアとその弟子たちがいると、偽の弟子たちである闇ミトラ教会は困るのでな。」
カオル姫が言う。「もう牢屋から出してあげればブヒ?」
もうカオル姫はキユリロスを信じている。
しかし、ナナ子が言う。「なぜ、牢屋に入り私たちを騙そうとするのコン?」
キユリロスが言う。「なぜそんなことをいうのじゃ?」
ノンが言う。「全然カビくさくないワン。」
ノンの言葉を聞くとキユリロスが嗤う。
「騙せると思ったのだがな。」
キユリロスの姿が消え、再び砂が集まり巨人が現れる。
新たに現れた巨人の頭は一つで目は左右に二つずつ、額に一つの合計五つある。そして腕は六本で斧などを前の三つ頭の巨人と同じように持っている。
「インケンテイウスである。汝らは炎によって滅びよ。」
巨人が炎を吐き出す前に、すぐに軍女神と死天女が三叉戟を突き刺す。もちろん巨人が巨大盾で防ぐが、軍女神も死天女も炎槍と剣で攻撃し、巨人の六本の腕の動きを止める。そして飛光輪を飛ばす。
巨人の首が二つの飛光輪で斬れ、落ちる。
巨人が再び砂となり、崩れ落ちる。それを死天女のドクロが全て吸収する。死天女のドクロは小ブラックホールとでも言える全てを吸収する力を持っている。だから砂となり、復活しないように死天女が全てを吸収した。
ミツルが言う。「今度こそやったブー。」
アキラが言う。「いや、まだだ。」
これで巨人が再び、復活しないはずだ。ノンたちがそう思ったのは当然だ。しかし、闇の渦が現れる。
そして闇の渦から大量の砂が流れ出して、巨大な猿族が現れる。
「我はアクイナスである。異端は滅びよ。」
虎型機械武装が口からレーザー光線で攻撃する。また、砂となり、巨大な猿族が砂となって崩れる。
シンニが叫ぶ。「全ての名前は嘘よ。」
いくつもの名前が全て嘘なら本当の名前は何か?
パンテラが言う。「コンスタンチンだ。全ての大嘘の元凶だ。」
イエシユアの言葉と人生を奪い、人々を支配する道具とした元凶、コンスタンチン皇帝。彼こそがイエシユアの死を利用して、人々の霊的覚醒を弾圧する闇ミトラ教会の元凶だ。
再び砂が巨人の姿を現す。ただ白い鎧に巨大剣と巨大盾を持って現れる。
「我こそは、不死身のコンスタンチン。」
軍女神と死天女が同時に三叉戟で突き刺す。巨人が再び砂となって崩れる。
カオル姫が言う。「何か感じるブヒ。でも物じゃないブヒ。」
霊媒体質であり一番感じやすいカオル姫の言葉が鍵だ。
ミツルが必死に考える。物ではない闇のエネルギーの媒体、それが巨人たちの媒体である。それを消滅させなければ何度でも巨人は復活する。
そしてその手がかりは、今までの戦闘にあるはず。
最初は、三つの頭が三つの名前を持っていた。次は一人が一つの名前、次も一人が一つの名前だ。そしてその名前の共通した名前が元凶コンスタンチンだ。
ミツルは再びコンスタンチンの姿を取り始める巨人を見る。どうやら姿は変えない。
つまりコンスタンチンが本当の名前なのだろう。
コンスタンチンの媒体と為るもの、物ではないもの。
ミツルが叫ぶ。「言霊ブー。」
現実世界への媒体は言霊だ。
ノンが叫ぶ。「光りあれ《アーンク》」
この時、ノンの言霊が凶皇の言葉を払う。
コンスタンチンが叫ぶ。「なぜ、駄犬の言葉が...」
ノンが言う。「嘘つきは使えないワン。」
嘘つきは、潜在意識までしか繋がることはない。
巨人が闇の渦と共に消滅する。
ノンが疲れたので言う。「疲れたから少しやすもうワン。」
カオル姫とシンニが言う。「もうイキそうだからだから急いで。」
カオル姫とシンニは既に合体しているのだ。
ノンたちは急いぐことにする。